第6話 初めての朝

アリスの願いを聞き、二人は同じ布団に入っていた。


やばい、目が冴えまくって寝れねー!

アリスは、すでに腕枕で寝ている。

かわいいな。


いや、そうじゃなくてっ!

寝れねーんだよ!

目も意識もバチバチに冴えており、眠り方を忘れたように寝れない。

どうするか・・・・。

もう自分で自分を落とすか?


それいいな。もう、そうするしか寝れそうにない。

その前にもうちょっとだけ寝顔を・・・・・。




ーー翌朝。


やべえ、結局眠れなかった・・・・・。

あのあと、寝顔を堪能していたら、気づけば朝になっていた。

おかげさまで、絶賛覚醒中。


「んんぅ・・・・」

腕の中でアリスがモゾモゾし始めた。

やばいっ、何がやばいか分からんがとりあえず寝たふりをしないといけない気がする。

起きてる時に出る特有の気配を消し、前世では不可能な完璧な寝たふりを実行した。


「ふああ・・・・」

アリスが寝たまま背伸びをした。

目が覚めたようだ。


「アル君、寝てるの?」

ああ、寝てるよ。だから、先に・・・・・


んん!?


え、今何されてる?

アリスの唇が俺の唇に!?

「ん・・・・。ふふ、よかった寝てて」

寝てないんだなこれが。

よく分からないまま、この世界に来ての初めてがこんな形になるとは。


アリスは、そのまま居間の方に行ったみたいだ。

これは、しばらく起きられないな。

今まで、こんなゆっくりしたことがなかったから、調子狂うな。

はあ、どんな顔してアリスに会えばいいんだ。




それからしばらくして、アイナが調理を始める音がしたので、居間の方に行った。

今日は、サクラも手伝っているみたいだ。

なんでも、日の国の食事を作るみたいだ。


これは、まさか和食か!?

運ばれてきた食事は、米に味噌?のスープ、焼き魚だ。


「魚とかいつ買ったんだ?」

「たまに、海のある国の商人がくるのよ。ちょうど、復興の時にね」

「へえ、そんなことが・・・・・」

いつか行ってみたいな。刺身とかあるのかな。


そんなことよりも久しぶりの和食だ。

「はい、じゃあ食べましょうか」

「「「「いただきます!!」」」」


まずは、味噌汁と思われるものから。

ズルッと一口。

「あ、うまい」

自然にその言葉が出た。

これは、間違いなく味噌汁だ。

前世では、毎日のように飲んでたが、こっちにきてから10年以上、感動が止まらない。


「そんなに美味しかった?スープだけなのに」

「故郷では、色々な具材が入るのだが、今回は時間がなくてな」

「・・・・・十分美味しいよ」

本当に美味しい。


それから、焼き魚と米を同時に口に放り込む。

魚の旨味が米にまとわりついて、口の中を幸せが包み込む。

よかった、この世界に和食があって。

いつか、日の国に行こう。


「ぎゃっ!」

ラキナが急に呻った。

「どうした!?」

「ほ・・・・・・」

ほ?


「骨が喉に刺さった・・・・・」

「そんなこと・・・・・」

確かにあれは痛いが、頭からかぶりついてたら刺さるだろうよ。


「ラキナ様、魚ほぐしますから」

「た、頼む・・・・」

どんだけやられてんだよ。

アイナがラキナの隣に行き、魚をほぐして骨を避けていた。


セナやアリスは、苦戦しながらも骨を避けながら食べており、サクラは見事なまでに骨と肉の部分が分かれていた。

すげえ、あんな綺麗に食べられるのか。

元日本人として、これはできないと。


しかし、なかなかうまくいかなかった。

骨が刺さるようなことはなかったが、サクラのようにはいかなかった。




食事も終わり、外に出る準備をしていた。


「昨日の魔石で何か作りたいんだけど、何か欲しいものある?」

みんながいるところで聞いてみた。


「んー。ないかなー」

「私も、今はないわ」

「私もだ」

「妾もないな」

みんなの視線がサクラに向く。


「え、えー、鞘とか?」

鞘か。

そういえばサクラの刀を見たことないな。


「サクラ、よかったら刀見せてくれない?」

「いいですよ」

サクラが隣に立て掛けていた刀を渡してきた。


ピシッ!!


「え?」

手に取った瞬間、鞘にヒビが入った。

「「・・・・・・・」」

なんともいえない雰囲気が流れる。


「すいませんでした!!」

サクラの様子を伺うと、怒ったり悲しんだ様子はなく、なんかを考えていた。


「あ、あの、サクラさん?」

「・・・・・抜刀してもらえますか?」

「は、はい」

言われるがまま、抜刀する。

ボロッと、鉄の塊が落ちてきた。

ひえっ。


刀が鞘の中でボロボロになっていた。

「やはり、限界でしたか」

「えっと、どういうこと?」

内心かなり焦っていた。


「日の国から王都に来るまで、それからこの山で、かなり無茶してきましたから」

「なるほど、そういうことか」

俺のせいじゃないなら、ちょっと安心した。


「安心してるところ悪いが、アル坊。お主がとどめを刺したのじゃぞ?」

「え?」

ラキナの言葉に、サクラの表情を伺うと、苦笑いだった。


「なんで?」

触っただけなのに。

「アル坊の魔力と神力に耐えきれなかったのじゃ」

ま、まじか。

なら、結局俺のせいじゃんか。


「つ、作ろう!今手元にある魔石全部使って作ろう!」

もうこうなりゃ、ヤケだ!

壊してしまった刀よりもすごいのを作ってやる!


「せっかくだ、みんなの武器に神力を流しとこう」

「それをするのなら妾にも何か作ってくれんか?」

珍しい。ラキナが武器を欲しがるなんて。

「いいけど、何がいいの?」

「任せる」

えー。そこをお任せかよ。


そうだなー。黒髪幼女で妙に色気のある女の人が持ってそうな武器・・・・・。

あれでいいか!


ラキナの武器が決まったところで、全員の武器に神力を流し込んだ。

これで、一段階強くなったはずだ。


「まずは、サクラの刀から」

バラバラになった元の刀の破片と、手元にある太古の魔物以上の魔石に、魔力と神力を加え、サクラの魔力とイメージを元に作っていく。

破片と魔石が混ざり合い、次第に刀へと形作られていく。


「「おお〜」」

サクラと声が重なる。

それほどまでに、刀が綺麗な桃色の光を放っていた。



=神刀・紅桜=

妖刀・紅桜を受け継いだ、神刀。破壊不可。

所有者:サクラ



「いいのができた。それに綺麗だ」

次は、これに合う鞘だな。

刀身が薄い桃色なら・・・・白だな。

鞘には、魔力伝達のいい素材を使い、魔力と神力を混ぜ作っていく。


「よし、これでいい」

はい、これ使って、とサクラに渡した。

サクラは、おもちゃを買ってもらった子供のように目を輝かせ、刀を抱いていた。

喜んでもらえたようで何より。


「最後はラキナだな」

ラキナに作るのは、扇子型の武器だ。

これは、戦闘スタイルをガン無視した、ただの趣味。

妖艶な女性はだいたい持ってそうだからな。


だが、素材には出し惜しみしない、天界で回収した素材を使う。

「お主、それは・・・・」

「お、気がついた?そ、虚無で飛ばした暴食の核だよ」


あの世界ではなんでもありだった。

すでに消滅させた核でさえ、こうして手元にあるのがその証拠。

この核一つで、サクラの武器に使用した魔石と同等の力が宿る。

ラキナの魔力も流しながら、扇子を形作っていった。


「ほれ、ラキナ専用武器だ」

「ん・・・・」

妙に嬉しそうだな。

喜んでくれたならそれでいい。



=黒舞=

扇子型の武器。広げることで広範囲攻撃を可能に。

閉じた状態では浸透に匹敵するほどの切れ味を持つ。

破壊不可。所有者:ラキナ



「うしっ。敵なしだな」

久々に魔道具作成をしたアルベルトは、ご機嫌だった。





武器を強化、作成した後、すぐに外に出た。


「うわっ、あっつ!」

外に出た瞬間そこは、灼熱地獄だった。

後に出てきたみんなもこの暑さには、参っていた。


「とりあえず、魔力で体を包もうか」

全員魔力で熱を遮断し、ある程度マシになったが、それでもまだ暑かった。


「ねえ、これって明らかに・・・・」

アイナが言う。

「だろうね。『不死鳥』の魔力が高まってる」

この山に、登り始めた時とは比べ物にならないほど、『不死鳥』の魔力が、炎の色が変わっていた。


赤から青へ、より神秘さが増すと同時にその温度、火力も上がっていた。






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