第2話 新たな仲間
復興開始から、2回目の終の日。
あの、瓦礫の山はどこに行ったのだろうか。
崩落前よりは、数段劣るが都市と言っても恥ずかしくない王都が完成していた。
「早すぎだろ・・・・・」
崩落してから丸二週間、すでに人が不自由なく暮らしていけるだけの基盤が完成した。
人が多く、一人当たりの作業量が多いとはいえ、一つの国を作り上げるには早すぎる時間だった。
「すごいね。この国の人たち」
「アリス。そうだね、すごすぎるよ」
何度も思うが本当にすごい。
戦争後の復興というのは長い時間をかけて行うものだと思っていたが、ところどころに魔法を使っていたからか、前世の知識からはありえない凄さだ。
「今日は、なにするの?」
「うーん・・・・・」
そうだなー。なにしようか。
食材等の買い物はアイナたちに頼んでるし、ラキナは寝てるし、セリカさんはラキナの世話をすると残ってるし、久しぶりに冒険者として依頼を受けるか?
それでいくか。
「依頼でも受けに行こうよ」
「あっ、いいねそれ」
なんの依頼を受けるかなー。
確か、パーティランクはCだったよな。だったら今日でBまで上げるか。
ランクを上げるためには、現在のランク以上の依頼を10個以上達成する必要がある。
爆速でクリアすれば一日でいけるな。
「アリス、今日でランク上げてしまおうよ」
「いけるかな?」
「いけるって、それとも自信がないの?」
少し煽ってみる。アリスはこういう煽りに敏感だ。
「言ったなー!!Aランクまで上げてあげるよ!!」
早く行くよ、と冒険者ギルドの方へ走っていった。
「お、英雄さん達じゃない」
ギルドに入ると、受付嬢からそう声をかけられた。
他の冒険者は依頼に出ているのか、ほとんどいなかった。
「それ、いつまで続くんですか・・・・・」
英雄と言われるのは、なんか嫌だ。
「我慢しなさい。あれを見てしまったら誰でも言いたくなるわよ」
私も含めてね、とウインクをしながら慰め?をしてくれた。
「それよりも、ギルドに来るなんてどうしたの?」
「依頼を受けようかと・・・・・」
「え!冒険者だったの!?」
知らなかったの!?ここで、登録したはずなんだけど・・・・・。
「ランクは!?」
「Cです」
「そこは、普通ね」
悪かったな、普通で。依頼受ける暇がなかったんだからしょうがないじゃん。
「なら、依頼を選んできますんで」
「選んできたよ」
アリスが十枚ほど依頼書を持ってきた。
静かだと思ってたら、依頼を選んでたのか。
アリスの持つ依頼書を見てみた。
ん?なんかやけに古臭いボロボロの物が五枚あった。
「なあ、アリス。それは?」
「うん、なんか面白そうだったから」
「それ、”五大大陸クエスト”じゃない」
アリスが持ってきたのは、五つの大陸からなるこの世界で、大陸に一体存在すると言われる天地創造前の化け物。
普通の山として扱われるほど巨大な魔物、『ベヒモス』
海に囲まれた大陸を包み込むように生息している魔物、『リヴァイアサン』
鳥人族が守り神として崇める空の覇者、『バハムート』
生息地不明で過去一度だけその姿が確認された不死鳥、『フェニックス』
霧に包まれた上陸不可能な大陸に住む巨人、『ヨートゥン』
その存在自体が神話級の魔物たち、その討伐依頼書は、遥か昔、いつからか冒険者ギルドに張り出されており、その全てをクリアすることが冒険の終わりだと揶揄されている。
「アホか!!そんなもん一日で終わるわけがないだろ!!」
「あたっ!!」
流石に、ゲンコツをくらわした。
こんなアホみたいに強い奴らに勝てるわけないし、神との戦いで勝ち残った奴らに神にすら勝てないのに挑んだらどうなるか。
「あなたたちならいけるんじゃない?」
受付嬢はそんなことを言うが適当に言ってるとしか思えない。
「な訳ないでしょう」
「えー、面白そうなのにー」
アリスがむくれながらそんなことを口にする。
「無理だから、ほら、選び直すぞ」
「はーい・・・・・」
適当に、C〜Bランクの依頼を選び、受注してもらった。
「はい、では受注しました。いってらっしゃい」
「「ありがとうございます」」
依頼に出ようかと振り向いたところで袴を着た女の人がいた。
「アルベルトさん、アリス」
「サクラさん」「サクラ!!」
「私も一緒に旅をさせてくれないだろうか」
「え?」
話を聞くと故郷である日の国もソロモンの標的として狙われたこと、目指すべき頂を円環流を完璧に使いこなす俺たちに見た事、ついて行きたかったところ師匠から許しが出たというらしい。
「いいよ!一緒に行こうよ!!」
「アリスが言うなら断ることはしないよ」
やっぱりアリスのコミュ力は素晴らしいな。
’昨日の敵は今日の友’ってやつか?
「ありがとう。ちなみに今からどこへ?」
「依頼だよ」
「そうか。なら、私も一緒に行っていいだろうか」
「いいよ、なら申請しに行こうか」
サクラとのパーティ申請をして3人となり、今度こそギルドを出た。
〜依頼中〜
「なあ、アル。円環流はどうやって会得したんだ?」
敬語が嫌だったため、他の仲間同様にアルと読んでもらうことにした。
「えーっと、俺はアリスを見て覚えたからなぁ」
ラキナがアリスに教えたものを見て覚えたからどうやってと言われたら、見て覚えたとしか言いようがない。
「そ、そうか。参考にならんな・・・・」
「ご、ごめん」
「いや、いいんだ。円環流に拘ってはダメだと分かったからね。私なりの剣を極めることにしたんだ」
「ああ、あの守りの剣か」
英雄の宴でアリスと戦った時に使ってた剣技。
あれはなかなか面白い型だった。
「ねー、早く次行こうよー」
アリスが討伐した魔物を手に持ち急かしてきた。
「はいはい、今行くよ」
「なにもしてないのに、いいのだろうか」
サクラ、気にするな。気にしたら終わりなんだから。
「よし、次で最後だな」
最後の依頼は、マンドラゴラの採取っと。
「マンドラゴラ?これって、抜いたら死ぬやつなんじゃ・・・・」
マンドラゴラは、薬草として重宝されてきたが、その根には人をしに至らしめる神経毒が含まれている。
「これは、なかなか大変なものを選んだな」
サクラが依頼をメモした用紙を見ながら言った。
「やっぱり大変なのか?」
「ああ、普通に引っこ抜いてしまうとその叫び声で脳が破壊されるからな。よく最後の手段の命を賭した攻撃法として有名だ」
ああ、やっぱりそういうやつなのか。
しかし、脳が破壊されるか・・・・・。とんでもないな。
「なら、どうやって採取すればいいんだ?」
「一つだけ方法があって、それは・・・・・」
なんかやれそうで、やれなさそうな方法だった。
「おっ、これがマンドラゴラか」
周辺の薬草などを鑑定し続けようやく見つけた。
「よし、いいか二人とも」
「うん」「ああ」
葉の部分を持って二人に確認した。
「行くぞ。せーえのっ!!」
ズボッと、一気に引っこ抜いた。
根の部分が引っこ抜かれたことを自覚する前に斬る。
それが、唯一の採取方法。
アリスとサクラが一瞬のうちにアイコンタクトを交わし、中に浮いたマンドラゴラを斬った。
「ぎゃっ・・・・・・」
叫び声をあげようとした瞬間に、その命を終えた。
「よしっ、依頼完了!!」
「「やった!!」」
アリスはランクアップに、サクラはやることがあったことに、喜んでいた。
「戻るか」
「だね」
「そうだな」
マンドラゴラを収納し、王都に向けて歩き出した。
「この後どこに行く予定なんだ?」
サクラが聞いてきた。
「そうだね。予定としては、『霊峰』を探しながら修行をしようかと思ってるよ」
「『霊峰』を?」
「知ってるの?」
「ああ、我が国の秘宝である英雄マルスの刀・月詠はそこで採れた素材から作られたそうだ」
それは、いい話を聞いたな。
是が非でも辿り着きたい。
「なら、今後ともよろしく頼む」
「ああ、こちらこそ」「よろしくね!!」
サクラと握手を交わし、俺たちの旅がさらに賑やかになったことを心の底で喜んだ。
〜とある山頂〜
そこは、神聖な魔力が漂い、あたりは遺跡のような物が建ち、中心にはトーチのようなものが置いてある。
”キュアアアアアアアアア”
そのトーチの上に、炎を纏った巨大な鳥が降り立った。
トーチに聖火が灯ったように、あたりは輝き、神聖さが増す。
ここは、『霊峰』クレメンス。
不死鳥の座す、聖なる山の頂き。
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