第6章 霊峰探索編
第1話 復興開始
戦争が終結した翌日、アルベルトたちは王都の復興を手伝っていた。
「おい、英雄さん」
冒険者の一人がアルベルトの元に歩いてきた。
「それって、俺のこと?」
「他に誰がいんだよ」
「・・・・・・確かに」
周りには誰もいないし、明らかにこっちを見て話しかけてるし。
「で、なんのよう?」
「復興が終わったら、しばらく鍛え直すんだろ?」
「まあ、そのつもりだけど・・・・」
なんだ?まさかついてくるとか言わないよな。
流石に名前も知らないやつは、受け入れられんぞ。
「ああ、いや、ついて行きたいとかじゃなくてな」
じゃあ、なんだよ。
「その・・・・噂レベルの話なんだが」
「噂?冒険者の間での?」
「ああ。お前さん、『霊峰』って知ってるか?」
『霊峰』?
ようするに、神が祀られている山のことだろ?
「いや、聞いたことないけど・・・・・」
「まあ、昔の冒険家の日記で語られていることなんだが、そこにはこの世のものではないと思えるような物が無限にあるそうなんだよ」
「なんでそれを俺に?」
自分たちで行けばいいんじゃないか?
「俺たちじゃ、そこにたどり着くことすらできねえんだ。もう数百年、誰も辿り着けないでいる。でも、もしお前さんたちならと思ってな」
「確かに、そう言われると気になるな・・・・・」
この世のものと思えない物か、いろんな素材にはできるな。
それに、『霊峰』の魔力が気になる。名前的に神聖そうだし。
修行には、もってこいの場所だな。
「行ってみるか・・・・・」
「お、本当か!?」
「あ、ああ。なんだよ急に」
行くと口に出した瞬間、冒険者が詰め寄ってきた。
「なあ、もし『霊峰』が見つかったら、今度話聞かせてくれよ」
急にテンション上がったなこの人。
「それが目的か・・・・・」
ここまで素直に態度に出されると文句が言えない。
「あ、すまん」
「いいよ、別に。本当にあったら今度話してやるよ」
「本当か!?ありがてえ!!」
テンションの上がった冒険者は仲間によばれ、そのままのテンションで復興作業を再開した。
「しかし、跡形も無くなったなー」
村から出てきて初めてみた、あの王都の姿は今や瓦礫の山。
地下空間に地面が埋もれ、遺跡が浮き出たことから、多くの考古学者などが調査に来ている。
「あの、巨人が来てこれを・・・・・。しかも、それをアリスたちが・・・・」
英雄の記憶の中では、超越化前の英雄の一撃で沈んでいたが、今回はなかなかに苦戦したらしいし、かなり頑張んないと勝てないなこれは。
「魔法でも使えばすぐに元に戻せるんだけど・・・・・」
アレクさんたちに提案したがこういうのは、人の手でやらないと意味がないらしい。
国を治める者の考えは、やはり少し違うらしい。
アリスたちは、アルカやマイナ先輩たちと楽しそうに復興作業をしている。
こっちはというと・・・・・・
「おい、ラキナ」
「なんじゃ、飯か!?」
ガバッと、勢いよく
そう、こっちはラキナと二人、そして、そのうちの一人は寝ている。
「寝てないで、手伝ってくれよ」
「嫌じゃ」
ポテッと、再び夢の世界へと旅立った。
「はあ・・・・・・・」
まあ、頑張るか・・・・・・・・。
陽が沈む頃、瓦礫を数カ所に集め終わり、今日の作業は終了した。
あとは、ここから魔法で綺麗にし、建築材にしていくそうだ。
ここだけは、魔法を使うらしい。
というわけで今からは、宴会だ。
アレクさんからのお願いで、食料を全てこの国が復興するまでの食事に充てた。
今は、国の料理人とアリスたちが総動員で、瓦礫のキッチンで調理している。
フワッと、いい匂いが漂ってきた。
「んあ!?」
ラキナが目を覚ました。
キョロキョロと周りを見渡し、アイナが調理をしている姿を見て、涎を垂らしながらだらしない顔で、目を輝かせていた。
こいつは、本当にっ!!
最初の頃の威厳が全くと言っていいほどなくなってやがる!!
「おいっ、いくぞアル坊!!」
「ぐえっ」
ラキナに首根っこを掴まれ、アリスたちが集まる場所まで引きづられていった。
「あ、アル君に、ラキナちゃん」
「おう、アリス。よく頑張ったの」「お、おう」
「うん、やっとここまで来たよ」
アリスは、最高の笑顔で喜んでいた。
「それはそうと、雑魚相手にそのコートに頼ったようじゃな」
「・・・・・・・・・・」
アリスは、笑顔から一転、真顔で顔を背けた。
「そ、そんなことはないよ・・・・・」
目が泳いでる。これは、説教パターンか?
「・・・・・まあ、よい。今回だけは仕方がない」
「え、い、いいの!?」
「ああ、到達者になったことで勘弁してやる」
「やったー!!」
アリスは、飛び上がり喜んでいた。
アルカたちも、ラキナと初めて会った時は、恐れ多いとびびっていたが、今は普通に話ができるようになった。
アリスの説教回避を一緒に喜んでいる。
「あ、そういえば聖女様はどうなったの?」
ラキナが一緒に行動してたはずだし、何かあったとは考えられないんだけど。
「あやつは・・・・・・」
ラキナが聖教国であったことを話してくれた。
「そんなことが・・・・・」
なら本物は、今どこにいるんだろうか。
「ラキナ様、そのことでしたら解決しましたよ」
アイナが一通り終わったのか、こちらに来た。
「お、終わったのか」
「はい」
「なにが?」
「ちょっと待ってね」
アイナが空中に手をかざし手刀で空間を切った。
「?」
なにしてんの?
アイナが手刀を下ろした場所の空間が裂け、中から
「は?」
なにが起こってるの?
え、いや、ちょっと待って?異空間って生きたものは入れないはずじゃ・・・・・。
しかも、なんか部屋が見えたんだけど。
「これが、私の『原初』、『捌く者』よ」
名前は変わらなかったけどね、と言いながらその効果を教えてもらった。
『捌く者』は、なんでも捌き、空間を切り裂けば、生きているものも中に入れるそうだ。
さらに、空間自体が別次元に行っているので、外から干渉されることはないそうだ。
つまり、とんでもない要塞になり、いざ攻撃をしようとするとなんでも捌ける。
相変わらずとんでもないな・・・・・。
「それで、解決したというのは?」
「あの、もういいですか?」
裂け目の中から声が聞こえた。
この声って、聖女様?
「はい、どうぞ。段差があるので気をつけてくださいね」
そんな、階段一段分上がるみたいに言わなくても、すでに次元を一つ超えてるんだから。
そんなことを考えていると、中から聖女様が出てきた。
「また、お会いしましたね。アルベルトさん」
「ええ、ご無事で何よりです」
ラキナに聞いた薬物の影響とかなさそうだけど・・・・。
治ったのだろうか。首を傾げているとアイナが答えてくれた。
「それは、『捌く者』の効果ね」
「まだ何かあるのか?」
まだ追加要素があるのか?
これ以上増えたら完全なインフレだぞ。
「この、次元に入るとね状態異常が捌かれて治るのよ」
「あー、そう」
もういいや。
俺がいくら神威を身につけようが、アリスが到達者になろうが、一番のチートはアイナだろうな。
「あの、この度は有難うございました」
聖女様が腰を曲げお礼をする。
「いいですよ、別に」
そう、別に構わない。
アイナの故郷を救いたかったがこんな形になってしまったし、”米”に出会わせてくれた聖教国も救いたかったが、中枢機関が崩壊した今、復興はなかなか難しいだろう。
まあ、”米”は事前に預けてくれたし、料金も払ったからまた再開してくれるだろう。
「今回のことは、これぐらいで、これからのことを考えましょう」
「・・・・・そうですね」
聖女様と目を合わせ笑い合っていると、周りから視線を感じたが、アイナたちの料理が運ばれてきたことで、その視線から逃れた。
「じゃあ、いただきます!!」
「「「「いただきまーす」」」」
アルベルトたちは、子供たちや冒険者たちと高笑いをしながら、明日に備え騒ぎまくった。
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