第29話 神の遊戯
ソロモンは、地下空洞を進み、腕の前に辿り着いた。
「これが、”神の片腕”。しかもこの封印魔法は・・・・・・」
魔法設置によるもの。
”理外の力”と呼んでいるもの。
世界に存するスキルは、ソロモンがシステム上で作り出したもの。
ゆえにその壊し方、操り方、その全てを自由自在に可能とする。
しかし、”魔法設置”は全く理解の及ばない力。
システムに組み込んでいなかった。予想外の力。
この封印魔法を見ると、太古の昔から存在しているとわかるが、システムを作り上げるときには、その存在すら知り得なかった。
封印魔法の解析を始める。
ケース一枚一枚に違う封印魔法がかけられ、幾重にもフィルターがかかっている。
最後の一枚に到達した時、厄介な封印に気がついた。
「”血系封印”。シュトベルトの血か」
封印を解くのに、特定の血族の血は必要となる。
それが”血系封印”。
「おい、ソロモン。それ以上は進めせない」
「ん?」
ソロモンは、後ろに振り向いた。
そこには、エルフと懐かしい雰囲気を持つ少女、そして・・・・・
アイナ・フォン・
「今日は、運がいい。全てうまくいく」
ソロモンは、笑いながら今日という日を祝った。
「なんだと?」
「シュトベルトの者よ。その血、いただいていく」
エリスを無視し、アイナに言い放った。
「私の血を?」
「ああ、封印を解くのに必要だからね」
「だから、させないと言っているだろうが!」
エリスは、ソロモンに斬りかかる。
ソロモンは、腕で剣を受け止める。
「君は、アインツベルンのものか。超越化をしてるのが残念だよ。君の一族の血が一番欲しいんだけどね」
「マーナ様のことか・・・・」
「そうだよ。君たちの先祖のためにも君の一族の血を分けてくれるといいんだけど」
「断る」
蘇りの御技。
そんなものが血の一つでできるはずがない。
そんなことができるなら、あの時、マルスは死ななかった。
「ん?」
ソロモンはあることに気がついた。
「シュトベルトの君は、超越化をしているのか・・・・・」
超越化をしてしまえば、その血では、血系封印は解けない。
「ええ、ついさっきね」
アイナの試練。
それは、守られる存在から抜け出すこと。誰かの後ろにいるのではなく、隣に立って格上を撃退すること。
それが、彼女に課せられた試練。
「でも、試すだけ試してみるか」
ソロモンは腕に力を入れた。
グググッと、エリスの剣が横に流されていく。
「な!?」
ソロモンは、剣を掴み、エリスを上に投げる。
ソロモンは、アイナを捕まえるために転移した。
アイナは、まだ超越化の体に慣れておらず反応は出来ない。
「おっと〜」
目の前に向けられた剣を避け、後退した。
アリスが、アイナとの間に英霊剣を出した。
「そう簡単には、やらせない」
「君は、彼女に似てるね」
ソロモンは、昔見たマルスに付き添っていたイリアを思い浮かべながら言った。
「?」
「そういえば、彼はいないのかな?」
この場にいない、もう一つの探し物である”分霊体”について聞いた。
「いないよ」
英霊剣で斬りかかりながら答える。
「よっと。そうか、いないのか」
軽口を叩きながらもアリスの円環流を躱していた。
「この、剣技も懐かしいねー」
どんどん早くなる剣も、軽々と躱していく。
「私もいるぞ」
セナが死角から風雷砲を放つ。
圧縮された空気がソロモンに当たると確信した。
バシュッ
ソロモンと風雷砲の間に渦巻き状の空間が出て来た。
風雷砲はその渦に飲み込まれ消えていった。
「なに?」
「こうかな?」
ソロモンの手元にセナが放った風雷砲が作られた。
「!?」
セナは、予想外の展開に反応できず直撃を受けた。
遠くに飛ばされ、建造物に激突した。
「セナ!!」
アリスは、吹き飛ばされたセナの身を案じた。
「大丈夫だ!!」
「まったく、超越者というのは厄介だね」
ソロモンがどこからか取り出した刀でアリスに斬り込んだ。
「うっ・・・・」
アリスの力では止められなかった。
アリスも、セナ同様に吹き飛ばされ、あとはアイナだけとなった。
「・・・・・そう簡単に止められないわよね」
ケラウノスに雷を纏い、ソロモンへと放った。
バチッ!!
風雷砲のように吸い込まれ、全く効かなかった。
「雷霆」
地面に向かい撃った。
ドオオオオン・・・・・・。
土煙が舞い上がり、アイナは距離を取ろうとした。
「なかなかの威力だね」
「!!」
後ろにソロモンがいた。
「がっ!!」
「でも、ここまでだ」
アイナの首をつかみ、封印魔法を解除できるか試すために歩き始めた。
「させるか!!」
エリスが上から落ちてきた。
「邪魔はさせないよ」
アイナを盾にした。
「くそっ」
ソロモンは、封印の前に立ち、刀をアイナに刺した。
「ごふっ」
「「アイナ!!」」「アイナ様!!」
3人が叫ぶ。
ソロモンはアイナに刀を刺したまま、その血を封印魔法につけた。
血が、魔法陣をたどり、光を放ち出す。
封印の解除が始まった。
「ふふ、”理外の力”には超越者の血でもいいのか」
これで、”神の片腕”は手に入れた。
あとは、マルスの分霊とアインツベルンの血だけ。
マーナの封印だけは、純粋な血でなければならない。
あの封印は、マーナ自身がかけた自己封印魔法。正規の方法でしか解除できない。
「うぅ・・・・」
刀は、いまだアイナを刺していた。
「もう、用はないね」
血糊を払うように、刀を振り、アイナを剥がした。
「うっ」
アイナは、超越者となったため魔素による回復が行われた。
「無駄だよ。この刀は特別でね。
それは、日の国の秘宝。
マルスの愛刀、最強の刀だった。
「この刀は、斬った事実を、その時点で固定するんだ。だから、回復は無理だよ」
「アイナ!!」
アリスが駆け寄る。
アイナの目が虚ろにいなっていく。
「アリス・・・・・、ア・・・ル・・・・」
たったひと刺し。
それだけで、超越者がこのざま。
セナも、エリスも見守ることしかできない。
「僕の役に立って死ねるんだ。あの世で、自慢するといいよ」
その言葉にアリスが反応した。
「おまえ・・・・」
いつになくキレていた。
「悪いけど、その腕も渡さないし、アイナも死なせない」
アリスたちの方を向いていたソロモンの背後に立った人影が、殴った。
「がはっ!!」
ソロモンは、地面を何度かバウンドし転がった。
「お前は・・・・・」
アイナの
「結構本気で殴ったんだけど」
頑丈だな〜と、顔だけソロモンに向けた。
「アル君、遅いよ」
「ごめんごめん。なかなか帰してくれなくてさ」
ただの子供のようにニコニコしていた創造神を思い出しながら謝った。
「アイナ、大丈夫?」
「ええ、ありがとう・・・・」
ソロモンが不可能といった治療を簡単に可能にしてしまった。
「それにしても、変わったな」「だな」
セナとエリスが緊張が解けたのか、こちらに歩いてきた。
「そう?」
髪の色は黒に戻ったし、目の色は白で、小さな模様がある。
変わったというより、目以外は元に戻ったの方が正しいかも。
「そう言われるとアリス、よくわかったね」
「え?まあ、匂いが同じだから」
「あ、そう」
匂い?そんなに、匂うか、俺?
「まあ、詳しい話は後で、まずはあれをどうにかしなきゃね」
ソロモンが、立ち上がり怒りを滲ませていた。
「お前、その力・・・・・」
「たぶん、お前が思っている通りだよ」
「そうか」
ソロモンは、『鍵』を持った手を自分の心臓に突き刺した。
「!!」
なにしてんだアイツ?
アルベルトは、ソロモンの中を視た。
『鍵』が溶け込んでる?
あれは・・・・・・。
「自分の中で、天上界への扉を開いたのか!?」
ソロモンが倒れる。
すると、上から光の粒子が降り注ぎソロモンの中に入っていく。
「まずいな。アリス、みんなを連れて外に。ラキナもすぐにこっちに来るはずだから」
「私は残るよ」
アリスは、アイナたちを地上へ転移させた。
「でも・・・・」
「大丈夫。私も、到達者に成ったから」
「マジで?」
「うん。さっき上で戦った時に」
『始原の霊体』との戦いの後、アリスは到達者に、アイナは超越者になっていた。
「なら、久しぶりに一緒に戦うか」
「うん」
二人の前には、光り輝くソロモンが立っていた。
「地上に来るのは久しぶりだな」
声は、先ほどまでと同じだが、その身に宿す覇気が別次元の存在へと昇華していた。
「最高神か」
「そうなの?」
「お前らは、懐かしい雰囲気を持ってるな。それに、男の方は神威まで」
最高神は、体を慣らしながらアルベルトたちを観察した。
「これは楽しめそうだな。さあ、始めようか・・・・・
ーー『神の遊戯』を」
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