第28話 vs巨人 決着
王都を今度こそ完全に破壊しようとする巨人の足元に、統率がとれていない冒険者と騎士団が向かっていく。
「いいかー!!てめえのありったけをこの巨人にお見舞いしてやれ!!」
「「「しゃあああああ!!」」」
状況とは裏腹に冒険者は楽しそうだった。
彼らはスキルに恵まれたが、生まれや性格から騎士や衛兵にはなれなかった、ならなかった奴らばかり。
それに普段は、パーティを組んで連携を優先に戦闘をする。
そのため全力全開なんてそうそうできるもんじゃない。
「「「「オラあああああ!!いくぜええええ!!」」」」
テンションが上がるのは必然だった。
射程範囲に辿り着いたものから全力の攻撃を行なった。
巨人の足元に、さまざまな属性の魔法やバラバラな流派の剣技が炸裂した。
どごおおおおおん!!
巨人は、両足を砕かれバランスを崩した。
「よし、お前ら離れろ!!」
「まったく、冒険者たちはとんでもないですね」
「だろ?自由な奴らは強いんだよ」
騎士たちも全力を出したが、レベル99でも負けそうなくらいの威力だった。
「俺たちの役目はここまでだな。あとは・・・・」
「ええ、団長たちに託しましょう」
上でとんでもない魔力を練っている四人にあとは託した。
やるべきことは終わり気を抜いていた時、森の中から多くの聖騎士が出てきた。
「おい、あれって聖教国の」
「ええ、そのようですね」
冒険者のうち何人かは、一目見ただけで聖騎士だとわかっていた。
「おーおー、ぞろぞろ出てくんなぁ」
もう百人は出て来ているがまだ終わりそうにない。
「どんだけいんだよ」
呆れたように誰かが言った。
「我々聖騎士団は、神の名の下に王都に神罰を下さん」
一歩前に出てきた聖騎士が宣言した。
「なあ、何言ってんのあいつ?」
冒険者の一人が呟いた。
「おそらく、王都が無信仰だからでしょう。聖教国は最高神様を信仰していますから」
「え、それだけで?」
冒険者の意見はもっともだ。確かに、歴史では、英雄は神の力を借りて世界を救った。
信仰する気持ちもわかるが、そんなものは自由勝手にやってほしい。
「それだけだと?十分な理由だよ」
聖騎士は剣を掲げ、宣言した。
「神に支える騎士たちよ。異教徒に神罰を。進軍開始!!」
剣を王都に向けて振り下ろした。
「「「おおおおおおおおおおお!!」」」
「ったく、巨人の次はこれかよ」
「共にやってくれますか?」
騎士の一人が冒険者に尋ねる。
「ああ、やってやろうぜ」
「いいわよ、この国は自由だから好きだし」
次々と冒険者が賛同する。
「ありがとうございます」
騎士が頭を下げる。
「では、やりますか」
騎士団と冒険者・総勢50人vs聖騎士団・およそ200人。
王都をこれ以上陥落させないための戦いが始まった。
◆◆
「お、バランス崩した」
アリスは、アイナを飛ばしたあとこの瞬間を待っていた。
「アリス、何するつもりだ?」
「師匠」「エリス様」
エリスが、アリスたちの元にきた。
アリスは、この巨人を完全に破壊するための作戦を説明した。
「なるほど、わかった。
私は、左腕。セナは、右腕。お前は、胴体を消耗させ、アイナ様が上から一気に破壊する。それでいいんだな」
「うん」
「わかった。やってみよう」
エリスは、チラリとソロモンの方を見た。
「!?」
いない?
いったいどこに。
いや、今はそんなこと考えてる暇はないな。
バランスを崩していたが、もうすでに、腕の溜めが終わっていた。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。じゃあ、やるぞ」
「うん」「はい」
セナを、振り上げられている右腕の上に飛ばし、エリスが位置についたことを確認し、アリスが声を上げた。
「いま!!」
「暴風魔法:風雷砲!!」
「精霊化。精霊魔法:精霊の怒り!!」
「英霊剣:天桜!!」
それぞれの最大火力を一点集中で両手、胴体にぶつけた。
巨人は、再びバランスを崩し、体は脆くなっていく。
「アイナ!!」
アリスが叫ぶ。
「ええ、わかったわ。
雷霆:神の雷!!」
”ズドオオオオン・・・・・。”
体の中を雷ー神鳴りーが貫通する。
両手、両足、胴体。それぞれが破壊されているため全身を雷ー神鳴りーが走った。
体の中を焼かれた巨人は、核も消滅し、存在維持機能を失った。
セナとアイナを回収し、4人は地面に降りた。
「「「「ふうー」」」」
全員で一息ついた。
「とりあえずこれ以上の崩落は防いだね」
「そうね」
セナは危機を乗り越えたことよりもアイナに聞いてみたいことがあった。
「そういえば、アイナ。王都の下に空間があることをご存知でしたか?」
「え?」
セナは、一度目の崩落で地下の空洞に落ちたこと。
そこで何を見たのかを話した。
「アイナ様、セナが見たのはもしかして・・・・・」
「・・・・・ええ、おそらく”神の片腕”でしょうね。まさか、そんなところにあったとは」
エリスは、そこで気がついた。
マルスの姿をしたやつが、巨人を召喚してまで、崩壊させようとしたこと。
我々、超越者以上の実力者を王都から切り離したこと。
まさか・・・・・。
しかし、もしそうだとしたら・・・・・。
「あの・・・・、この巨人を召喚した英雄に似た男をご存知ですか?」
「ソロモンのこと?」
アイナは、エリスの疑問に答えた。
嫌な予感が的中した。
ソロモンがあんな姿をしているとは・・・・・。
もし、やつがここに来た目的が”神の片腕”と『鍵』だとしたら・・・・・。
騎士団長の役目は王族の護衛だが、それよりも混沌の時代より、シュトベルト家が守ってきた『鍵』の守護。
しかし、現在は、その存在自体を知る者がごく僅かとなり、王都では、王とエリスだけが知っている。
もし、その二つが取られたとしたら。
最悪の未来が頭をよぎる。
「エリス?」
「アイナ様、今すぐ王都に向かいましょう。セナ、案内してくれ」
「は、はい!」
『鍵』は、この崩落で宝物庫とともに埋もれているかもしれない。
すでに、敵の手に渡っていたとしても、片腕だけは死守しなければ。
「ねえ、師匠。その腕ってなんなの?」
「それは・・・・・」
エリスは、アイナを見る。
アイナは視線に気づき頷く。
「あれはな、本物の神の腕なんだ」
「それ、ほんと?」
「ああ、しかしあれは、ある場所でしかその力を使うことができない」
「ある場所?」
「それは、最高神の座す天上界。そこでしか、腕に宿る力を抽出できない」
「そんなところどうやっていくの?」
「それは、ほんのひと握りのやつしか知らん」
そう、行き方は一つだけ、マルスが残した『鍵』の存在を知るものだけ。
ソロモンももちろん知っている。
早く、”神の片腕”の無事を確認しないと。
◆◆
巨人のせいで崩落した時、ユリスたちはジーナを見失ってしまった。
「くそっ!!」
ユリスは、兄の手がかりを見失ったことにイラついていた。
「ユリス。ありがとう」
アルカは、ユリスのそばに行き、お礼を言った。
「でも、逃しちゃった」
「また、会うことがあるよ。その時は、私も一緒に戦うから」
「・・・・・そうだね」
「ふう、助かったわね」
ジーナは、崩落により勇者の攻撃から逃げることができた。
「ジーナ」
「!!」
ジーナの元にソロモンが来た。
「『鍵』は手に入ったかい?」
「ええ、ここに」
空間魔法の収納から取り出し、ソロモンに渡した。
「よくやってくれた。あとは、片腕だけだ」
「それは、どこに?」
「下だよ」
ソロモンは、指で指しながら答えた。
「下ですか・・・・・。あ、そのためにこれを?」
「ああ、あれを手にしたらしばらくは帰ってこれない。留守は頼んだよ」
「はい。仰せのままに」
ソロモンはジーナをある場所に転移させ、一人地下空洞に向かった。
「さあ、これで、あと二つ」
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