第27話 ラキナvsシスティーナ 決着
『三千世界』とは、この世のあらゆるもの全て、世界のどこもかしこも、全宇宙。
アルベルトたちの居る小世界、さらに他世界の小世界を二つ合わせ重ねたものが三千世界。
地上と精霊卿、天界という三つの世界が存在する。
三千世界を統べるものは、世界のどこでも存在でき、その世界の全てを手にすることができる。
「とりあえず、やってみるか」
創造神に言われた通りに三千世界を発動してみた。
プツンッと何かが切れた音がした。
ツーっと鼻血が垂れてきた。
「うっ・・・・」
急いで世界とのリンクを切った。
なんだこれ、何もかもを感じる。
今までいた世界とは情報の量も質も何もかもが違う。
「これは、きついな・・・・・」
「でしょ〜」
そんな、笑顔で言われても・・・・・・。
サディストなのか?
「でも、慣れてもらうよ」
「慣れるのか、これ?」
「うん、慣れてもらわないと次に進めないからね」
次?
次ってなんだ?
まさかこれよりもやばいのが待ってるのか?
「わかった、やってみる」
「うん、頑張って!」
両手を握り、応援してくる。
こんななりでも創造神だもんな・・・・・。
もう一度、『三千世界』で、世界とのリンクを繋いでみる。
先ほども感じたように何もかもが違う。
地上の世界の空気の一つだけでも、それが持つ情報量が一次元違う。
地上の世界の空気の構成要素は、三つだったが、ここではそれに加えもう一つ・・・・・。
「これって・・・・・」
それを知覚した瞬間に意識が途絶えた。
「あ〜、やっぱりすぐには無理かー」
「「ねえねえ」」
アダムとハナは、アルベルトの目から出ており、創造神と話していた。
「どうした?」
「何させようとしてるの〜?」
「この子には、あいつらを倒してもらいたいしね。そのためには、一段階あげる必要があるし、この子の中は、
「ぐちゃぐちゃ〜?」
「そう、魂は一つにして来たみたいだけど、魔力も気も仙力も何もかもぐちゃぐちゃだよ」
「「へー」」
アダムとハナはそれだけ聞くとアルベルトの中に入っていった。
◆◆
聖教国では、一つの戦いが幕を下ろそうとしていた。
「ふぎゃっ、がっ・・・・・」
ラキナがシスティーナが馬乗りになり、顔面を殴り続けていた。
ガッ、ドンッ、ボカッ。
地面にまで衝撃がいくほどのパンチが繰り出されるが、気絶できないレベルで殴られ続けているため、痛みだけが蓄積されていく。
「も、やめっ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
それでも、ラキナは止める素振りを見せなかった。
ボッ、バキッ、ガッ・・・・・・・・。
システィーナは、気を失いたくても失えなず、ただただ同じ威力で殴られ続けるだけ。
死ぬよりもきつい時間が続いていた。
「ごめん・・・・・なさぃ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・!!」
ボンッ!!
最後に特大の一撃をお見舞いし、意識を刈り取った。
「おい、コジロウ。無事か?」
「ええ、さすがですね。まさか、神位まで使えたとは」
「ああ、少し修行というものをしたことがあってな」
「え、
ラキナは、生まれた瞬間から最強で、実践についても生まれながらのセンスで圧倒してきた。
そして、少し修行をすれば”神位”を使えるほどになる才能。
「ところで、なぜこんなことに?」
「それは・・・・・」
ラキナは、戦争になった経緯を知っている範囲で教えた。
「そうでしたか。では、我々も無関係ではいられませんね」
「どういうことじゃ?」
「日の国には、円環流の創始者が鍛えた妖刀が収められておりますので」
「妖刀・月詠か」
「ええ、マルスに受け継がれていた最強の刀です」
’月詠’は、一振りで天を裂き、どんな神器相手でも負けたことがない人が造ったものでは最強の刀。
ソロモンが手に入れたいと思わないわけがない。
「では、これからどうしますか?」
「そうじゃな・・・・・・」
ラキナは、コジロウの後ろにいるセリカに目を向ける。
セリカの体を戻すことが最優先じゃな。
しかし、ここまで冒されているとなるとアイナでも難しいかの?
アイナの料理かもしくは捌くものであればセリカの体を蝕むものを取り除けるかもしれない。
取り敢えずは、王都組に合流するか。
そう思いもう一度セリカの方を見ると違和感を感じた。
「ん?侍女はどこいった?」
「侍女ですか?私どもが来た時にはいませんでしたが・・・・・」
どういうことだ?
「ごほっ・・・・・・」
システィーナが意識を戻した。
「ようやく・・・・尻尾を出しましたか・・・」
システィーナが仰向けになったまま言った。
「どういうことじゃ?」
ラキナは、その言葉の内容に疑問を呈した。
「彼女がセリカさんに薬物を投与し続けたやつってことですよ」
「なんじゃと?ならお主は・・・・・」
「私は、確かに彼らの仲間になりましたが、それはマルスさんの大切なものを守るため」
「ならなぜ、妾を襲った?」
「それは・・・・・・・」
システィーナは、淡々と話し始めた。
マルスが死んだと知り、最後に立ち会えなかったことに後悔して、しばらく自暴自棄になったこと。
ソロモンが目の前に現れた時、奴の魂の一部がマルスのものであったこと。
奴についていけばマルスに会えると思ったこと。
かつてのマルスの知り合いを手当たり次第に襲い、何かを探していたこと。
日に日にマルスの魂が濃く、そしてソロモンの物となっていくこと。
聖教国で何をしようとしていたのかを。
「セリカがだんだんおかしくなっていくことに気づいたお前は、その原因を探って、錯乱薬に辿り着いたと・・・・・」
「はい、しかし、誰が間者なのかわからなかった」
「じゃが、あの侍女は常にあいつの傍にいたのではないか?」
「そうですが、全くといっていいほど証拠が出て来ませんでした」
「そこまでのやり手なのか?」
侍女を見た限りでは、普通の侍女だったが・・・・・。
「おそらく彼女は、ソロモンの配下最強部隊’三審判’の一人だと思います」
「’三審判’?」
「私も、何回かしか聞いたことないですが、その強さはマルスに匹敵すると言われています」
「なに?」
マルスに匹敵するものが三人だと?
それは、とんでもないことだ。
ただでさえ、最盛期のマルスは育ての親の妾でも、手も足も出なかったというのに。
これは、早くアル坊を・・・・・・。
「状況は理解した。妾は、引き続きアル坊についていく。あいつは、遺物を手に取れる」
「そうでしょうね」
「知っておったのか?」
「え、ご存知ないのですか?」
「なにを?」
「彼は、マルスさんの魂の分霊体ですよ?」
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