第26話 王都vs聖教国⑦

〜王都正門前 騎士団VS魔人〜


なんだこいつら、私の知る魔人と比べて弱すぎる。

現に、魔人に敵うはずのない団員が次々と消滅させている。

この魔人を生み出した元凶を見てみる。

やはり、マルスに似ている。

だが、何をしているのかわからない。

手を下にかざし、魔人を生み出す液体に向けて・・・・・・


「まさか!!」

斬り続けている魔人を見ると核がすでになく、魔法で固められているだけだった。

じゃあ、核はあそこに集まって・・・・・。


ソロモンは、自分で魔人を産み出しながら、自分で殺し、核を集めるとんでもないマッチポンプを行っていた。

魔物の核は、言い換えれば魔物そのもの。

それを集め一つにしたらどうなるか。しかも、今回は大量の魔人。


「もうこれぐらいでいいか。懐かしいやつを見せてやる」



”召喚魔法:巨人招来”



黒い液体が、一点に集まっていく。

そしてそれは、天に届くほどになっていく。

ついに、その姿を表した。


「ガアアアアアアアアアアアア!!」


その巨人は、あまりにも巨大で頭が雲を突き抜けていた。

”天地穿つ巨人”

天穿つのは、その巨体から、地穿つのはその・・・・・・。


巨人が腕を持ち上げる。

それだけで、ものすごい暴風がおこる。

エリスたち、騎士団はとにかく逃げた。


”街が、国が落ちてくる”


それが、あの時代に揶揄された、巨人の一振り。


その一撃が、王都から離れた大地に落ちた。


”ドオオオオオオオオン・・・・・!!”


衝撃が波のように王都に向かった。

エリスたちを追い抜き、王都を襲った。


大地は割れ、騎士も地に沈み、そして王都も沈んだ。


「あはははは!!いい眺めだ!!」

ソロモンは、顔を手で覆いながら高笑いをしていた。

「忌々しいシュトベルトの一族が治める国がこんな姿に!!いい気分だ!!」

ソロモンの高笑いだけが響いていた。





「いったいな〜・・・・・」

「なんなのよ一体・・・・・」

「大丈夫か?二人とも・・・・」

アリスたちは、王都の崩落で、瓦礫に埋まってしまった。


だが三人とも瓦礫の下敷きになっても、ちょっと痛みを感じるだけだ。

「え、ちょっと、なんなのこれ」

アイナが、瓦礫の上に上がりあたりを見渡した。

アイナが生まれ育った故郷が無惨にも瓦礫の山へと変貌していた。


「だああああ!!」

遠くの方で冒険者や傭兵が街の住民を囲み結界で瓦礫に飲まれるのを防いでいた。

「ちくしょうっ!!何だってんだまったく」

「おい、大丈夫か!?」

どうやら彼らのおかげで死傷者は少ないようだ。

王城のそばに目を向けると怪我をしている者もいるがなんとか無事のようだ。


「アイナ!!」

両親の声が聞こえた。

「お父様、お母様!!」

アイナたちは、国王たちの元へと向かった。


「大丈夫か?三人とも」

「ええ、大丈夫よ」

「そうか、私たちもガルムたちのおかげで助かったよ」

「そう、それはよかった」

「アルベルト君は、いないのか?」

アリスに顔を向けても首をふる。


「多分どっかで戦ってるわよ」

「ならいいんだが・・・・・」

何か言いたいことがあったのか言い淀んだ。


「アイナ、それよりもあれをなんとかしないと」

「そうね」

「それにしてもでかいな」

アリスとアイナ、セナはこの惨状を生み出した元凶を見上げた。


巨人は、再び腕を振り上げていた。

「やばいっ」

アリスが真っ先に飛び出し、開けたところまで走った。

「お父様たちは、できるだけ遠くに。ガルムさんお願いできる?」

「ああ、大丈夫だ。サナも行けるな」

「はい」

いつの間にかガルムの背後に控えていたサナも頷いた。


「あなたたちはどうするの?」

ここまで、口を閉ざしていたハンナが心配そうな表情で尋ねた。

「あれを止めに行きます」

アイナは、二発目を打ち込もうとする巨人を見上げながら言った。

「できるの?」

「ええ、やらないと。これ以上故郷をめちゃくちゃにされちゃ困るわ」

「・・・・・・そう」

それ以上は、何も話さなかった。


「セナ、行きましょうか」

「ええ、行きましょう」

二人は、アリスを追っていった。




「強くなったな我が娘は・・・・・」

「そうね」

国王夫婦は後ろ姿を見て目を細めていた。


ガルムは、そんな二人を見てただ一言言いたかった。

「強くなりすぎだから・・・・・」と。




◆◆



「で、どうやって止める?」

アリスが二人に聞いた。

「え、何も策がないのに突っ走ったの?」

「アリス・・・・・」

この状況で無策で挑むことほど愚かなことはない。


なにせ、街以上のものがとんでもない速度と威力で降ってくるのだ。

「どうしようか・・・・・」

「「・・・・・・・・」」

やはり二人は呆れたままだった。


「ま、まあ、一番早いのはあれを破壊することだよね」

「そうだけど。あれを操ってるのって・・・・・」

「ああ、ソロモンだな」

巨人の傍で魔力を送っている黒装束を見て簡単にはいかないことを察した。



「おい、嬢ちゃんたち。あれをどうにかすんのか?」

三人の元に複数の武器を持った人たちが来た。

「あなたたちは?」

「俺らは、この国に拠点を置く冒険者だ」

「これ以上、この国破壊されちゃ困るからね」

「協力するぜ」

冒険者たちは、それぞれができることを共有していた。

「俺たちゃ、個じゃあれにゃ手も足も出ねえが、力を合わせたらそれなりになるぜ」


「じゃあ、足をお願い」

アリスが、直球で言った。

「ちょ、アリス、いいの?」

「うん、だってできるんでしょ?」

今日初めて会った人間をここまで頼りにできるのはすごい。


「足?それはいいが、嬢ちゃんたちは何をするつもりだったんだ?」

いかにもベテランな感じの男が大剣を肩に担ぎながら聞いた。

「私は、上に行く」

「ちょっと待ってよ。あなたみたいな小娘がなんで仕切るのよ」

女冒険者が割って入った。

「じゃあ、勝手にやれば?」

「なっ、あんたね・・・・・」

突っかかろうとした時、先程の男が手で制した。


「よせ、この嬢ちゃんが一番強えから従うんだ」

「そんなわけ・・・・・!!」

アリスは、どうでもいい会話をするつもりも、そんな余裕もないのかティルフィングを出し、背中にをだした。

「アイナ、セナ、掴まって」

二人の手を握り、空へ飛んだ。


「・・・・・・・・・!!」

「な?わかっただろ?」

女冒険者も、他の冒険者も口を開けてただただ眺めていた。



「よし、いいかお前ら。最初から全力で行けよ。他の邪魔をしないことだけを考えろ」

「「ああ、わかった」」

そんな冒険者の元に騎士団がやって来た。

「我々も協力させてもらいたい」

「騎士団か、あれでよく無事だったな」

最初の一撃を、一番身近で食らったはずだが・・・・。


「ああ、我々には、最強の味方がいるからな」

腕を胸の前に上げ、そう言った。

「そうか、よくわからんがあれを止めるためだ。・・・・・ところで団長様は?」

「ああ、団長は上に行かれた」

見上げるとアリスの白銀の翼とは他に風の魔力で飛んでいる姿があった。


「いくぞ!!てめえら!!」

「「「「うおおおおおおおお!!!」」」」

冒険者と騎士が一斉に巨人の足元に駆けた。





「アイナ。デカブツの脳天からさっきの雷撃てる?」

「え、まあ、できない事はないけど・・・・・・」

「じゃあ、お願い」

「え?」

アリスはアイナを巨人の頭のてっぺんに向かって


ぶん投げた。


「え、ええええええー!?」

アイナは、悲鳴を上げながら雲の上へと飛んでいった。

「え〜・・・・・・・」

アイナのことを顔を青ざめながらセナは見ていた。




◇アルベルトと創造神◇


「ねえ、なんかすごく息苦しいんだけど」

軋む身体をなんとか解放し、創造神に修行の内容を聞いた。

そして連れてこられたのは、

「そりゃそうだよ、だってここは、天界だから」



「天界って・・・・。天上界とは違うのか?」

「あそこは、サイコ野郎たちが勝手にそう呼んでるだけの別世界のことだよ」

「別世界・・・・・」

それだけでも、もうよくわからないと言いたいが、異世界から来たため口にはできなかった。


「で、ここで何するんだ?」

「うん、神位と神威に慣れてもらうよ」

「それ、何が違うんだ?」

「それはねー」


神位は、すでに持っている能力の位階を神の力に近づけることで、神と戦うことを許される力を手に入れること。

神威は、発動中スキル由来の力は使えなくなるが、神の力を体に宿すこと。

らしいのだが、どちらも凄すぎてよくわからない。


「まあ、なんとなくわかったんだけど何すればいいんだ?」

「ああ、まずは『三千世界』でこの世界に慣れて」

「『三千世界』で?」

「うん、早くしないと弾け飛んで死んじゃうよ」

「え」


そういうことは先に言えよー!!





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