第25話 王都vs聖教国⑥

セナは、偶然にもこの国に存在する創世記前の遺物を発見していた。


「こんなものがなんで王都の下に・・・・・」

それに、このケースにだけ魔力が施され、腐食しないようになっている。

しかも、これって、アルと同じ・・・・・。


「そう、それは『魔法設置』によるものだ」

「!?」

声がした。

しかし、そこには誰もいなかった。

なんだったんだ?今のは・・・・・・。


それよりも・・・・・

「どうやって出ようか・・・」

周りを見渡しても、苔のようなものがまとわりついた建造物が所々に崩れ落ちてるだけで、外への道は落ちてきた穴ぐらいだ。

「少し、見て回るか」


世界中の歴史家がその生涯をかけて探し求める、欲してやまない創世記前の遺跡。

そこを偶然にも発見したセナが知ることになるのは、希望か絶望か、それは神のみぞ知るというやつだ。




◆◆




「アリス!捌くものじゃ倒しきれない!!」

アイナは、何度か『始原の霊体』に切り込んだが切った瞬間には、回復された。

無傷の相手に対し、アリスもアイナも怪我を負っていた。

『始原の霊体』の攻撃は、なんとか緋白のコートが防いでいた。

「だったら・・・・・


英霊剣:ティルフィング!!」


英霊剣で、英雄イリスの剣を宿し、さらに

「天元突破!!」

今できる全力を出すことを決心した。


ギョロッと、『始原の霊体』の目がアリスの方へ向いた。

アリスから発せられる膨大な魔力に反応した。


「こっちから行くしかないね」

受け身でいては、勝てない。

いつまでも、びびっていたら、ラキナちゃんに怒られる。

私からしたら、そっちの方が嫌だ。


「円環流:極」

円環流をさらに、覚醒勇者・天元突破での身体能力、ティルフィングによる純粋な攻撃力の強化で、より洗練した剣技を、繰り出した。


「ガァァァァァ・・・・・・」

初めて、声を出した。

『始原の霊体』は、剣を作り出し、アリスの剣について行っていた。


「まだまだ!!」

アリスの剣はますます早くなっていく。

「ガッ、ガァァァァァァ!!」

『始原の霊体』が追いつけなくなってきた。


一度、当てた瞬間から、アリスの剣は次々と当たるようになった。

「・・・・・・あった。見つけた」

アイナは、何百、何千と切り刻むことで『始原の霊体』の核となる部分を探していた。

もし、核自体がなければ勝つ方法はなかったため、大博打の一騎打ちだった。


円環流を続けながら、を待っているアイナに、目を向け頷いた。


「円環流:終環」


円環を終わらせ、核を丸出しにした。

「アイナ!!」

「ええ、ありがとうアリス」


「雷霆:神の雷!!」

ケラウノスがアイナの手元から離れ、雷そのものになった。


その圧倒的な雷ー神鳴りーは、『始原の霊体』が己の力の源とする魔力を・・・・纏っていなかった。

正確には、この世界のものではない魔力を纏っていた。


アイナの放った魔法を見た瞬間、『始原の霊体』は、興奮した。

これは、あの時代、神を名乗る女から感じた魔力に似ている。そして、それは求め続けた魔力だった。

『始原の霊体』の意識は完全に雷へと向いた。


「英霊剣:天桜」


アリスは、ラキナに教えてもらったイリアの技にオリジナル性を加えたものを放った。

ティルフィングは、この世界にはない桜色に輝き、核に切り込みを入れた。


「ぁぁぁぁあああああ!!」


アリスは、腕に血管を浮かび上がらせるほど力を入れ核を斬ろうとした。

『始原の霊体』はその時初めて命の危険を感じた。

前回は、神の力を手に入れようとこの地に訪れたがその時は、片腕を落としたが、吸収する前に消された。

だが、今回その神はいない。


なぜこの矮小な人間がこのような力を・・・・・。


雷も核に衝突した。

雷は、吸収されずにダメージを与え続けた。そして、霧散する前にその雷はティルフィングに纏わり付き、さらにその威力を増していく。


”ピシッ!!”


二人と一体の耳にその音が響いた。


「「斬れろー!!」」

アリスとアイナは、叫んだ。


”ピシッ!・・・・・パキンッ!!”


「アイナ避けて!!」

ティルフィングの剣先の延長線上にいるアイナに避けてもらい思いっきり振り切った。


”スパンッ!!”


一直線に大地が裂けていった。



「「・・・・・・・・・」」

二人は、示し合わせたかのようにその場に座り込んだ。

「やったね」「うん」

二人は、笑い合った。


「ガッ・・・・・・・・」


『始原の霊体』が断末魔の叫びもあげず消えていくはずだった。


「魔力が集まってる!?」

まさかこれって・・・・・。

アイナは、この現象に心当たりがあった。


「アリス!!今すぐ離れないと!!」

「何が起こるの?」

「これは、魔力爆発よ!!」

”魔力爆発”それは、魔物の死に際に周囲の魔素を集め一気に解き放つことで衝撃波を生み出す、死に際の一撃。


間に合わないと理解し、二人は、緋白のコートで身を守った。


”ドンッ!!”


地中から暴風が突き上がってきた。

核に集まっていた魔力は、その核ごとはるか上空に打ち上げられた。

空中が一瞬、ピカッとひかり、はるか離れた地上にも衝撃が襲った。


「「うっ・・・・・」」

二人も、その衝撃には耐えきれず地面を転がった。


「一体何が・・・・・・」

暴風が出てきた穴を見ながら茫然とする二人があった。

そして、その穴から・・・・・

「あれ、アリスにアイナ。なんでそんなボロボロに・・・・・」

セナが不思議そうな表情で出てきた。


「「・・・・・・・・ま、いっか」」

二人から出たのは、そんな言葉だった。




◆◆




聖教国では、いまだにラキナとシスティーナの戦いは続いていた。

「あなたには、敵わないと思っていましたが、そうでもありませんね〜」

「・・・・・・・・」

笑いながら喋るシスティーナとは逆に、ラキナは言い返す余裕もなかった。


チラリとセリカの方を見る。

システィーナのやつ、何としてでもセリカを殺したいようじゃな。

その証拠に、システィーナは背後に衝撃波を生み出すような技しか出してこない。

このままでは・・・・・。


「気を抜かないでくださいね」

「!!」

広範囲魔法を、セリアにも魔法が届くように撃った。

まずいっ!!

セリアに当たる!!


間に合わない、そう思ったがセリアの前に二つの人影が現れた。


「流落とし」

魔法とセリア前で、不規則に曲がり、下へ落ちていった。


「お待たせして申し訳ない、ラキナ様。この方のことはお任せを」

「お主、コジロウか!?」

「はい、お久しぶりです。あとは、ご存分に」

「ああ、すまん。頼んだ」

ラキナの荷がおりた。


「すまんな。ここからは手加減できんぞ」

「今までは、本気じゃなかったと?」

「当たり前じゃ、セリカに余波が届いてしまうからの」

「ふふ、そうですか。それだけならいいですけど」

「ん?」

「いえ、なんでも」


二人は、さらにギアを上げぶつかりあった。


「!?」

システィーナは自分の拳をひき、距離をとった。

自分の腕を見る。

手は震えており、拳を満足に握ることができなかった。

これは・・・・・・。


「どうじゃ?わしの本気は」

手を腰に当てドヤ顔をするラキナがいた。

「やっぱり、むかつきますねその顔」

何度も、何度も見てきた。

懐かしいラキナのドヤ顔。


「なら私もあの方にもらった力を使いましょうか」

「もらった力?」


「神位:仙気」

システィーナの仙気が神の位階に上昇した。

「ほう、それが、ならば・・・・・神位:龍気」

「え!?」

「お主らだけだと思っておったのか?」

神位は、使用時のみ存在の位階が神の座す神界に届くほどになるものだ。


「いくぞ、システィーナよ」

「くそっ」

初めて余裕を無くしたシスティーナが額に汗を滲ませラキナと対峙した。






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