第24話 王都vs聖教国⑤
〜聖騎士団一行〜
「くっ・・・・なにが・・・・・」
気絶からようやく目が覚め、あたりを見渡した。
「なぜ、このようなことに」
我々は、聖女様の意思で王都に神罰を下すために進軍していたはず。
それが、突然魔力弾に襲われ気がついたら気絶していた。
「早く、進軍を開始しなければ・・・・・」
近くにいる聖騎士を起こしていき、全員が起きたところで体勢を整えた。
「いいかお前ら、まだ戦争は終わってない」
聖騎士が頷く。
「よって、これより進軍を再開する」
剣を突き上げ、宣言する。
「「うおおおおおおおお!!!」」
王都に向け、聖教国・聖騎士団が再び歩き始めた。
◆◆
”ガアアアアアアアア!!!”
「なん・・・・・だ・・・・」
エリスは、『始原の霊体』が離れたことで、周囲の魔素が増え傷だけは回復した。
そして、目の前に広がる光景に開いた口が塞がらなかった。
なんだ!あの魔人の数は、まだ増え続けてるじゃないか!
さらに、目線を上げた。
「え、マルス?」
前の対戦で死んだはずの英雄がこの惨劇を生み出していた。
なんで・・・・・。
エリスにとってマルスは、戦いの世界に身を投じる事となったきっかけであり、初めてエルフの森以外の世界を見せてくれた大恩人。
そんな彼が、王都に向かって魔人を召喚し続けている。
別人だ。
そう言い聞かせ、魔人を討つために立ち上がった。
「ふぅ・・・・行けるか?」
この戦争で何度弱音を吐いただろうか。
『始原の霊体』は、今は近くにはいない。
魔素も、豊富にある。十分だ。
「隊長!!加勢します!!」
「おまえら」
騎士団の隊員たちが集まってきた。
「『始原の霊体』は?」
「アリスちゃんたちが相手をしています!」
アリスが・・・・・。
ほんの少し見ないうちに、とんでも無く強くなってるな。
もう師匠とは名乗れない。
「そうか。今度こそ、守るぞ」
「「「はい!!」」」
騎士団にとっての第2陣が始まった。
◆◆
「混合魔法:氷牢刃」
水属性魔法と
「なっ、まずい!」
ユリスは、アルカとマイナを風魔法で吹き飛ばし、完成しつつある氷の牢から弾き出した。
「「ユリス!?」」
弾き飛ばされた直後、氷牢が完成し、ユリスだけが閉じ込められた。
「あら、さすがは、勇者ね」
ジーナは、感心した様子で見ていた。
「はあ!!」
アルカが拳に魔力をこめジーナとの距離を詰めた。
「魔拳!!」
「ちっ、お前が一番うざいんだよ!!」
ジーナが先程とは打って変わって煩わしそうにアルカに近接魔法を放つ。
「その魔道具はなんなんだよ!!」
ジーナは、とんでもない魔弾を放ってくる魔道具に嫉妬していた。
「友人からもらったんですよ」
アルカは、腕に嵌めている魔道具を見ながら笑顔を漏らした。
「あ〜、煩わしい!!」
ジーナは、魔力の波動を周囲に発する事で、アルカとの距離をとった。
「私もいますよ。先生」
「!!」
マイナが、槍でジーナの横腹を殴った。
「ぐっ!!」
宙に投げ出されたが、風を起こし、衝撃を和らげた。
「まだですよ!!」
アルカが、落ちてくるジーナに魔拳で追撃をしようとした。
「そんな簡単には行かないわよ」
「え!?」
ジーナも、拳に魔力を込め、魔拳を放った。
バアアアアアアアン!!
「ぐっ」
魔拳は、纏う魔力の質でその威力が決まる。
アルカは、拳闘士になってからというものその才能は伸び続けているが、魔力に関しては、王国でジーナの右に出るものはいない。
「まだまだね」
「なんで、魔拳を・・・・・」
ジーナ先生は、純粋な魔法士だったはず・・・・。
「ふふ、なぜでしょうね」
「そう、それがあなたの能力ってわけですか」
マイナが、ジーナに眼を向け種を明かした。
「あら、あなたは魔眼持ちみたいね」
「ええ、遺伝的な継承で宿りました」
「そう、でも私の力がわかったところでなにができるのかしら」
マイナに『嫉妬』の新たな能力を知られたところで、対策をできない二人には何もできない。
「私がいますよ。先生」
氷牢刃に閉じ込められていたユリスが、全身に傷をつけながらも外に出てきた。
「へえ・・・・・」
ジーナは素直に感心していた。
〜氷牢刃に閉じ込められたユリス〜
「混合魔法:氷牢刃」
先生が、魔法を発動した瞬間、寒気が走った。
アルカたちを風魔法で飛ばし、魔法陣の外から逃した。
魔法が完成し、一人で氷牢の中に閉じ込められた。
「これは、ただの風魔法じゃないけど・・・・・」
中に入っても水魔法で作れるものしかなかった。
どういう事なんだろう。
「いっ!!」
腕に風属性の刃が当たり血が滲む。
どこから・・・・・。
周りを見渡すと所々に属性の違う箇所があった。
あれから、風の刃が?
「何箇所あるんだろ」
かなりやばい状況だ。
魔力を広げ、風属性の魔力にだけ集中をする。
「・・・・・・・きた!!」
四方八方から時間差で刃が放たれた。
聖剣で次々と風の刃を撃ち落としていく。
「はっ、やっ、とうっ」
まるで踊るように剣を振る。
「!!」
どんどんと速くなっていく。
「嘘っ!!」
対応が遅れていく。
「あっ、がっ!」
次々と体に傷を作っていく。
氷でできた床に血が飛び散っていく。
このままじゃ・・・・・。
無尽蔵に続く刃の攻撃に勇者であれど、ついていけなくなっていった。
「ぐっ・・・・・」
痛みが全身に広がっていく。
あとは、顔ぐらいだろうか。
顔以外には、傷が増え続け、剣を振る力も無くなっていく。
「兄さん・・・・・」
意識が朦朧としてきたとき、走馬灯のように兄の声が届いた気がした。
「ユリス、お前は立派な勇者になれよ」
「勇者なんて、無理だよ・・・・」
ずっと臆病だったユリスには、勇者という肩書きはあまりにも大きすぎた。
「大丈夫さ。お前は、私の自慢の妹だ」
アルベルトたちがいれば、誰?と聞きそうな、いい兄だった。
「兄さん・・・・・」
「ずっと隣にいてやるから」
シスコンは変わってはない様子だ。
そして、王都動乱の日、私は、魔物と魔族に襲われる貴族を守ってこいと言われ、戦場に繰り出された。
戦闘訓練は、ある程度受けていたため、勇者のスキルと身体能力を過剰と言われそうなほど使い、魔物と魔族を狩り尽くした。
その後、『勇者候補』から、正式に『国家公認勇者』となり、さらなる重圧と訓練が私にのしかかった。
でも、私の心境は最悪なものだった。
兄:ダイス・ロンドの訃報。
いつも、支えてくれた兄の死。
実際は行方不明なのだが、いくら探しても見つからないため死亡扱いとなった。
「兄さん・・・・・」
何もかもがどうでも良くなっていた時に、私の心を埋めてくれたのがアルカとマイナだった。
「ユリスちゃん、訓練付き合ってくれない?」
「ユリス、行きましょうよ」
内容は、ほとんどが訓練関係だったが、それでも当時の私にとっては、嬉しかった。
この二人のための勇者に、兄に言われた立派な勇者になろうと決めた。
そして、聖教国からの宣戦布告を受け駆り出された戦争で、嫌な雰囲気を醸し出すジーナ先生を見かけた。
この人も、あの動乱の日以来、行方不明となっていた。
学校自体は、なんとか再開しているが、学長不在の学校は、いつもとは違うものになっていた。
そのジーナ先生の口から兄のことが出た瞬間に、敵だと判断した。
案の定、魔法を放ってきており、閉じ込められた。
ここで死んだら、アルカやマイナ、そしての兄の勇者にはなれない。
意識が戻った時、聖剣を握りしめ全てをかけた。
「聖剣:エクスカリバー」
静かに、剣を掲げ、振り下ろした。
氷牢刃自体の魔力が消え、解除された。
出た先では、アルカとマイナが焦った表情でジーナ先生を見ていた。
大丈夫、もう誰にも死なせない。
私が、守る。
「私がいますよ。先生」
その時、覚醒勇者が新たに生まれた瞬間だった。
〜一方、エルギス家に行ったセナは〜
「なんだここは」
王都が揺れた際にエルギス家を避難させていたセナは、地面が抜け地下に落ちていた。
「これはなんだ?」
目の前には、物々しい巨大なケースが何重にもなって置いてあった。
そのケースをよく見ると、中心に最も小さなケースがあり、その中には、
「腕?」
なんでこんなところに腕が。
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