第22話 王都vs聖教国③
王城内では、アイナとダグラスが、火花を散らしていた。
「どうなってるんですかねー」
「なにが?」
ガルムとサナは、アイナのもとを離れながらも、暗殺者特有の察知能力で見守っていた。
「あれ、一国の王女が持っていい力じゃないでしょ」
アイナが短刀を振るたびに、稲妻が走り、ダグラスを襲っている。
「仕方がないさ、気にするな。旦那の元にいる奴はああなる」
「はあ、私たちもなんですか?」
「その腕輪を見てみろ」
「ですよねー。こんなとんでもないもの作れる人なんて世界に何人いるか・・・・・」
「それよりも、俺たちは王を守るぞ」
「はい」
アイナから目を外し、先を急いだ。
「あなた、ほんとにあの王女様ですか?」
「ええ、そうよ。あなたが核を埋めこんでくれたおかげで、アルと出会い、ここまで来れた」
「はあ、失敗してしまいましたか・・・・」
ケラウノスから放たれる稲妻を交わしながら、投擲を繰り返していた。
「あなたさっきから何を・・・・」
まったく的外れなところに投擲されるナイフを見ながら訝しげに聞いた。
「さあ、なんでですかねー」
ダグラスは、手を合わせ、魔法を発動させた。
「
ダグラスが魔法を発動した瞬間、五つのナイフの魔力が繋がり、王城を構成する”地”を起点に”水”、”火”、”風”、”空”の魔力が混ざり合い、星を紡いだ。
「見かけによらず綺麗な魔法を使うのね」
「見た目だけですよ。あなたは、何もできなくなる」
魔力の線が、星の点を紡ぎ終わった時、五角形の結界がアイナを包み込んだ。
「これは・・・・・」
アイナは、ケラウノスを振るった。
しかし、稲妻は結界に阻まれた。
「その五芒星は、それぞれの属性が互いを強くし続けることで時間が経つほど強くなっていきますよ」
「へえ」
捌くものだったらいけるんだけど、まだ隠していたほうがいいのかしら。
こういう駆け引きの部分はまだまだね。
「では、私は目的のものを取りに行きますので」
ダグラスは、結界の中にいるアイナに背をむけ、ある場所に向かおうとした。
「何してるの?」
「だから、あなたに構っている暇はないと・・・・・・!!」
振り向いたダグラスは、目の前にいるアイナを見て後ろに下がった。
ダグラスは、本能的に恐怖していた。
「なんで、五芒星結界を・・・・・!!」
この結界は、今まであの方以外には破壊されたことはなかった。
それゆえに、速効性を求める場面では、重宝している最大の魔法だった。
「
「捌いた?なにを・・・・」
アイナは、ダグラスが背を向けた瞬間に結界を捌いていた。
「大したことなかったわね」
「くそっ!!」
ダグラスは、矜持も何もかもを捨てその場から逃げた。
「あら、あなただけは逃さないわ。でも、あなたには、本当に感謝するわ」
ケラウノスの剣先を向け、ダグラスに放った。
「雷霆」
その名の通り、雷そのものがダグラスに放たれた。
まさに、天災。
人が抗う事ができない神の雷が一人の人間の手によって、放たれた。
「うっ・・・・・・」
アイナは、膝をついた。
まだ、超越化してないから魔力的にきついわね。
でも、これが試練ではなかった。
「はあ。でも、なんかスッキリしたわ」
長年苦しめられてきた原因を作り出した男を自らの手で殺したことで、本当の意味で救われた気がする。
「ちょっと休憩・・・・・・」
なんとか壁にもたれかかり、座り込んだ。
「でも、『鍵』ってなんなのかしら」
それが聞けなかったことだけが、心残りだった。
◆◆
「ダグラスも死んだか・・・・」
ソロモンは、また一つ反応が消えた指輪を見て玉座のように見える椅子の背もたれにもたれかかった。
「ジーナを向かわせたのは正解だったみたいだ」
保険として、向かわせたのは正しかった。
最近、うまくいかない事が多すぎる。
「あの
ソロモンは、立ち上がり歩き出した。
そして、ある部屋に入っていった。
「それにしても、お前たちが育てていたとは・・・・・」
十字架に磔ている二人に憎らしい顔を向けながら話しかけた。
「だったら?お前の中のマルスの魂が反応してるのか?」
「黙れ!!」
魔力弾を放つが、空間断絶が発動し、その人物には当たらない。
「くっ、忌々しい”理外の力”が・・・・・!!」
「あなたはまだ完全ではないようね」
「五月蝿い!!『鍵』さえ手に入ればあの力も奪える!!そうなればお前たち諸共あのガキを殺してやる!!」
「『鍵』?あなたまさか・・・!!王都を狙ったのは・・・・」
「そうだ、あれは異界と現世を繋ぐもの。そして、王都に
「そんな・・・・・」
「僕は、神の力を・・・・
「そんなことをすればその身体が持たねえぞ!!」
「いいさ、器の完成は近い」
ソロモンは、二人の元を離れ、去り際に一言。
「ごめん・・・・・」
「「え?」」
「ちっ・・・・・」
今のは、ソロモンか、それとも・・・・・。
それを知るのは、本人ただ一人だけだ。
◆◆
「あったわ。ここね」
ジーナは、敵側にいることを知られていないため、王城に入っても歓迎されるだけだった。
「まったく、初めからこうするべきだったわ」
王城にある宝物庫の扉に手を掛け、押し開いた。
”ギィィィ・・・・・・・”
長い間開かれていないのか錆ている音がした。
「さすが王城ね」
目の前に、伝説級の武具や財宝が置かれていた。
だが、こんなものはただのガラクタに過ぎない。
本物を隠すための偽物にすぎない。
「あった。これね・・・・・」
最奥に、ポツンと置かれている『鍵』を手に取り空間魔法にしまった。
「なにしてるんですか?先生」
王城を出たところで、数人の少女に止められた。
「あなたは確か・・・・・」
その少女たちには、見覚えがあった。
特にそのうちの一人は強烈に。
「アルカさんに、マイナさん、それから・・・・ユリスさんね」
ジーナの前に現れたのは、アリスの友人のアルカにその雇い主のマイナ、そして国家公認勇者・ユリス。
ユリスは、動乱の時の功績で正式に勇者となった。
「なぜ貴方達がここに?」
「貴方から嫌な気配を感じたので・・・・・」
ユリスが、目を細めながらそう言った。
「へえ、兄と違って優秀なのね」
ぴくっ、とユリスの肩が揺れた。
「兄のことをご存知なのですか?」
「ふふ、さあ、どうでしょうか」
ジーナは三人に手を向け、魔法陣を展開した。
「貴方達には、死んでもらうわ」
「アルカ、ユリス」
「わかってる」
「はい」
三人も、それぞれの武器を構えジーナと対峙した。
◆◆
「はあ、終わったか・・・・・」
エリスは、仰向けに倒れ、空を見上げていた。
正門前の荒野には、数多くの魔物とフェンリルが数体倒れていた。
「なあ、おかしくないか?」
「なにが?」
隊員達の話し声が聞こえてきた。
「いや、魔物達がなかなか魔素に還らねえと思ってさ」
「・・・・・確かに」
魔素に還らない?
魔物は、どれだけ強かろうと素材として剥ぎ取らない限り、肉体は魔素に還る。
それが起こらない?
「・・・・・・まさか!!」
エリスの叫びと同時に、魔物の死体の中に一つの球体が現れた。
「全員退避!!固まって結界魔法を張れ!!」
エリスのその叫びとともに騎士団員たちは、集団で魔法を展開した。
現れた球体は、人の形になっていき、黒い影を纏った人影となった。
それは、手を広げ、何かをつぶやいた。
その瞬間、魔物の死体達が魔素へと成り、その手に吸収された。
あの量の魔素を一身に受けた?
そんなことをしたら・・・・・・。
エリスの不安をよそに、それは形作られた。
「
エリスの言葉にその場にいた騎士が息を呑んだ。
アルファは、ゆっくりと周りを見渡し、正面を向いた。
そして、ニヤリと、絶望を呼ぶ笑みを浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます