第8話 合流

二つ目の夢ーー記憶ーーを見終わったアルベルトは、またもラキナの膝の上で目が覚めた。

「なぁ、恥ずかしいんだけど」

膝枕をされているところを、ドライアドさんだけでなく、アダムとハナも胸の上に座って見ている。

「良いではないか、妾がしたいんじゃ」

「・・・・・・・・」

なんだその可愛いセリフは・・・・・・。

不本意だが、ラキナの顔を見ることができなかった。

「お、なんじゃ?照れておるのか?」

「・・・・・・そんなんじゃねぇし・・・・・」

正直照れていた。

幼女とはいえ、長い時を生きた故の色気がある。


「で、今回はどうじゃった?」

「ああ、すごかったよ」

アルベルトは、見た内容をみんなに話した。

「・・・・・・・クレア」

「ああ、エルフの人だったよ」

「・・・・・・・・・・・」

「どうした?」

「いや、なんでもない・・・・」



台座の方を見ると、すでに螺旋階段ができていた。

「次は、どこに繋がってるんだ?」

「聖教国だと思われます」

アルベルトの呟きに、ドライアドさんが答える。


「そうなんですか。それはちょうどよかった」

「何か、用事でも?」

「はい。仲間がいるんですよ」

「仲間・・・・・・、そうですか、どうか大切になさってください」

「もちろんですよ」


「じゃあ、行くかラキナ、アダムとハナも」

「ああ」

「「は〜い」」

ラキナは立ち上がり、アダムとハナは、目の中に入っていった。


「では、お気をつけて」

「はい、ありがとうございました」

頭を下げるドライアドさんにお礼をして、螺旋階段を駆け上がった。



「これで、使命は果たしました」

ドライアドさんは、台座よりももう少し奥の方に進み、一本の大木に近づいた。

「あの時拒否をしたのは、あなただったんですか?」


”クレアさん”


そう言って、大木の中で眠ったままの少女を撫で、アルベルトが欠片から離れた時のことを思い出していた。

「大丈夫ですよ。あの人なら・・・・・」

ドライアドは、上に顔を向け、アルベルトたちが登った螺旋階段をみていた。





◆◆



「お〜、前回までとは違って、平和だな〜」

目の前に広がる景色を見て、感動していた。

「これのどこが平和なんじゃ・・・・」

ラキナは、目の前に集まる奴らを見て呆れていた。


「だって、魔物でもなんでもないそこら辺にいる人間だぞ?」

「まぁ、人間には変わりはないが」

二人の前には、数人の盗賊と思われる者たちがいた。


「おい、ガキ」

「なぁ、ラキナ空飛んで行かない」

「おい、聞いてんのか?」

「いや、めんどくさいから嫌じゃ」

「ええ〜」

「お、おい?」

盗賊が、オロオロし始めた。


「あれ?まだいたの?」

「・・・・・んだと!コラァ!!」

盗賊が束になって襲ってきた。

「バイバイ」


”シュンッ”と盗賊たちが消えた。

「どこに飛ばしたんじゃ?」

「向こうの大陸」

「鬼畜じゃな」


盗賊たちは、ただただ運悪くアルベルトたちを狙い、魔大陸へと飛ばされてしまった。



◆◆



「あ、来た」

アリスが、立ち上がった。

「え、なにが?」

アイナは、訓練の休憩をしていたアリスが突然立ち上がったことに驚いた。

「アル君きたよ」

「あ、そう」

アイナはもう驚かなかった。

「じゃあ、ご飯でも作りましょうか」

「うん!」


セナも合流した後、アルベルトたちが帰ってくるのを待った。



「お、みんな久しぶり〜」

「って言っても2日ぶりじゃぞ」

「そうなんだけどさ」

魔大陸で、魔物わかる日々がきつかったので、長く感じているのだ。

「おかえり、アル君!」

「ただいま、アリス。みんなも」

「まずは、ご飯食べましょう」

アイナに促され、ラキナは、転移したのではないかと思うくらいの速さで、椅子に座った。


「「「「「いただきます」」」」」」


みんなで食卓を囲み、他愛もない話をする。

これだ、これが俺の目指す生活。


「そうそう、アルたちはどこに行ってたの?」

アイナが手を止め聞いてきた。

「魔大陸とか?」

「「魔大陸!?」」

アイナとセナが驚いた。


「じゃあ、なんでこんなに早く合流を!?」

「なんか、遺物のあるところから直接行けるらしくて・・・・」

あのあと、なにがあったのかを報告した。


「ベルゼって確か・・・・・」

「ああ、聖女様の護衛だぞ」

え、あの人そんな立場の人なの!?

なんかやばいことをしてしまった気がする。


・・・・・・・・・・・・・・・・・。


ま、いっか。

「しばらくは、ゆっくりしようと思うんだけど・・・・・」

「なら、明日から観光しようよ!」

「お、いいなそれ」

ということで、明日からは、聖教国の観光をすることになった。



◆◆



「聖女様」

聖教国最大の権力者であり、記憶を引き継ぐ力があると言われる伝説を生きる人。

彼女の元に、侍女の一人が報告にきた。


「どうしました?」

聖女は、外を眺めたまま答えた。

「はい。ベルゼ様がお亡くなりに」

「そうみたいですね」

「それから、もう一つございまして」

「あら、珍しいわね」

「命じられた調査の結果が出ておりますので、後ほどお持ちします」

「そう。ありがとう」

侍女は一礼し、部屋を出た。


「さて、あなたと会えるのはいつになるのでしょうね」

窓の外を見つめる彼女の目には、5人で食卓を囲むアルベルトたちの姿があった。



◆◆



宿の部屋内で・・・・

「ねぇ、アル君」

「なに?」

「やろ?」

「なにを?」

なにをやるんだ!?

そんな可愛く首を傾げながら言われると勘違いしてしまいそうだ。


「模擬戦」

「・・・・・いいよ」

わかってましとさ・・・・・。



「いくよ!!」

「ああ」

アリスが、いきなり聖剣を使ってきた。

「うおっとぉ」

天之尾羽張で、アリスの剣戟をいなす。

「また・・・勝手に・・・・強く・・・・なってるし!!」

「そりゃ、あんな奴らと戦ったらね」

「私も、戦いたかった」

「また、出てくるさ」

そんな会話をする間もアルベルトは、アリスの剣戟を苦なくいなし続けた。



「はぁはぁはぁはぁ・・・・・」

「お疲れ」

アルベルトは、倒れ込むアリスに近づき手を伸ばした。

「!?」

不意にアリスに手を引かれ、アリスに覆い被さる形となった。

「お、おい、アリス?」

「やっと、会えた・・・・・」

アリスは、アルベルトの首に手をまわし抱き寄せた。

その手は、震えていた。


「ごめんアリス」

アルベルトもアリスの頭と背中に手をまわし抱きしめた。

「しばらくこうしてて・・・・」

「はい」


彼らは、若いとはいえ、将来を誓い合った中である。

しかし、若いのだ、力はあっても精神は、成熟しきっていない。


アリスにとって、アルベルトが、2日以上そばにいなかったのは、初めてだったので、我慢していたのが解放され、今回の行動に移った。


そんな二人を、アイナたちは陰から見守っていた。






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