第9話 日常
みんなと合流した翌日。
アルベルトたちは、聖教国の繁華街を回っていた。
「すごいな。こんなにいっぱい店があるなんて」
「まぁ、聖教国は世界最大の宗教国家だからね」
王都とは、比べ物にならないわ。とアイナが教えてくれた。
宗教国家か・・・・・。
「なんの神を信仰してるんだっけ?」
「最高神様よ」
最高神様ね。
敵なのか味方なのか・・・・・。
「まぁいいか」
「どうしたの?」
「いや、今日はとことん楽しもうかなって」
「そうね」
アリスとラキナは、美味しそうなものを片っぱしから選び、セナがお会計をしている。
この日常がたまらなく尊い。
「おっ、武器屋だ。アイナ行こう!」
「ええ」
「いらっしゃいっ」
武器屋の店主が、アルベルトとアイナを迎えた。
「おお〜、いい〜!!」
目の前に広がる武器の山に興奮していた。
「なぁ、なんか欲しいものあるか?」
「欲しいもの?」
「包丁しかないでしょ?」
「そうね〜・・・・・」
”捌くもの”があるとはいえ、武器がないとなにもできないだろう。
「短刀かな〜」
「短刀?なんでまた」
「私、あんまり力がないから」
なるほど、それなら短刀が一番だな。
「おじさん」
「なんだ坊主」
「この
「オーダーメイドか?」
「うん」
「金は、あるのか?」
「あるよ。腐るほど」
「そうか。嬢ちゃん、こっち来い」
店主は、アイナの手の大きさを測り、メモをしていた。
「なんか素材はあるか?」
「素材?」
「ああ、オーダーメイドは大体素材持ち込みだ」
素材か・・・・。なにがいいかな。
まぁ・・・・・思う存分使うか。
「じゃあ、これで・・・・・」
アルベルトは、魔大陸で倒した太古の魔物の魔石と緋色金を取り出した。
”ゴトッ”と言う音が、店内に響き渡る。
「こ、これは・・・・・・!!」
「これで、最高の武器を作ってくれ」
店主は、しばらく震えた後、手を差し伸べてきた。
「任せとけ!!」
店主と握手を交わし、3日後には完成してるとのことで、今日は終わった。
「あんなの使ってよかったの?」
「いいよ。いっぱいあるし」
それに、万が一にはなってほしくないし。
「あ、いた〜!」
「お〜、アリス。どうした?」
「あっちに美味しそうなお店があった!」
アリスは、両手に食べ物を持ちながら興奮気味に教えてくれた。
「まだ食べるのか・・・・・」
「え、なに?」
「なんでもない・・・・・。行こうか」
その後、みんなで昼食を食べた後もそれぞれやりたいことをやり、欲しいものを買い、1日を楽しんだ。
「ま、店の料理も美味しかったけど・・・・・」
目の前には、アイナが聖教国で買った食材で作った料理が並んでいた。
「じゅるっ・・・・・く〜・・・」
ラキナは、涎を垂らしながら、腹を鳴らしていた。
「忙しいな・・・・」
その体の反応だけで、疲れそうだ。
「じゃあ、食べるか」
「「「「「いただきます」」」」」
その後は、アリスとラキナの腹が膨れるまでアイナが料理をし続け、材料が尽きる頃に終わった。
「ふぅ〜」
アイナが一息置いて、座り込んだ。
「お疲れ」
「ありがとう」
アイナに飲み物を渡して、隣に座った。
「いつもありがとね、アイナ」
「・・・・・・・・!!」
「アイナ?」
「い、いえ、大したことはしてないわ」
「そんなことないよ。すごい助かってる」
我ながらすごい恥ずかしいことを言っている気がする。
「あ、あの、アル」
「なに?」
「その・・・・、アリスとは婚約したのよね」
「え、ま、まあ・・・・・」
なんでいきなりそんなことを?
「私ね、その・・・・・・・」
アイナは、顔を赤らめながら言い淀んでいた。
「うん」
これからなにを言われるのか想像がついたアルベルトは、情けないと思いつつも待っていた。
「あなたが好き」
それを言った瞬間、背をむけ、顔を見られないようにした。
「うん。これからも一緒にいよう」
それしか言えなかった。
ちゃんと言葉にするのは、今じゃない気がする。
全てが落ち着いて、なにもしなくて良くなった時に言おう。
◆◆
アリスとラキナの食欲を満たすために、全力で料理を作り続けた。
二人の食欲が収まることはなく、アルとセナは苦笑いをしながらも、よく食べる二人を見ていた。
食材が尽きかけた頃、ようやく二人の食事が終わった。
「ふぅ〜」
ようやく一息つけ、壁に寄りかかりながら座り込んだ。
「お疲れ」
アルが、飲み物を持ってきてくれた。
「ありがとう」
受け取り、飲んでいるとアルが隣に座ってきた。
「いつもありがとね、アイナ」
「・・・・・・・・・!!」
突然そんなことを言われたら・・・・・!
頬が熱を持つのがわかった。
「アイナ?」
「い、いえ、大したことはしてないわ」
なんとか平常心を保とうとするが、なかなかできない。
「そんなことないよ。すごい助かってる」
あ、もう無理だ。我慢できない。
「あ、あの、アル」
「なに?」
「その・・・・・、アリスとは婚姻したのよね」
「え、ま、まぁ・・・・・」
「私ね、その・・・・・」
うるさい心臓を落ち着かせようと深く呼吸をするが、どんどん騒がしくなるばかり。
「あなたが好き」
私は、恥ずかしさのあまりアルに背を向けてしまった。
言ってしまったとはいえ、今の状態を見られるのは恥ずかしすぎる。
「うん。これからも一緒にいよう」
アルが、答えてくれた。
私は、その言葉を聞き大切にされていることはわかってはいたが、アリスと同じところに行けるのは、まだまだだと理解した。
アルは、食べ疲れているアリスとラキナを介抱するため、立ち上がりその場を後にした。
”いつか、あなたから言わせてみせる”
そう決心し、アルを手伝うため立ち上がった。
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