第7話 英雄の力

アルベルトたちは、ドライアドさんに案内され、森を歩いていた。

「しっかし、綺麗だよな〜、ここ」

「でしょ〜」

「さすが、我が子〜」

アダムとハナは、いつもの二人になっていた。

「ここってあの人が作ったのか?」

前を歩くドライアドさんを見る。

「そうだ。ドライアドの種族特性の魔法でな」

二人の代わりに、ラキナが答える。


「種族特性の魔法って?」

「妾に、竜魔法があるのと同じじゃ」

「え、じゃあ、俺にもなんかつかえるの?」

「いや、今は違うとはいえ、人間族には使えん」

「ええ〜・・・・・・・」


「ならマルスも使えなかったのか?」

他の種族は使えるのに人間名は使えない。

それで、英雄になるのは、相当すごいことなんじゃ・・・・・。

「少なくとも妾は知らんな」

「じゃあ、使えたかもってこと?」

「ああ、それも、遺物を辿ればわかるかもしれんな」



しばらく歩いたところで、目的の場所に着いた。

「こちらです」

ドライアドさんが手を向ける。

そこには、あそこにあった台座と同じようなものがあった。


「あれ?」

「どうしました?」

「あの、その紙って何色に見えます?」

「白、ですが・・・・・」

「そうですか・・・・・」

白なのか。


「では、どうぞ」

ドライアドさんに促され、台座に近づいた。


”だめ!!!”


「!?」

触ろうとしたとき、拒絶する声が聞こえた。

「どうした?」

ラキナには聞こえなかったのか、突然距離をとったアルベルトを不思議そうに見ていた。

「いや、なんでもない」


アルベルトは、再び台座に近づきその、紙を手に取った。



◇◇



「ねぇ、マルス」

「なに?」

大きくなったマルスとイリアは、それぞれ剣をとり、怪物と対峙していた。

「でかいね」

「でかいな」

二人の前には、顔が確認できないほどの巨人がいた。


”グォォォォォォォォォォ!!!”


巨人は、街ほどの大きさの拳を二人に放った。

「いくよ!!」

イリアが叫んだ瞬間、二人は飛んでかわし、腕の上を走り、顔を目指した。

イリアが一足先に、顔に近づきを生やした。


「あれが、ティルフィングの・・・・・」

遠くから先頭を見ていた騎士がつぶやいた。


「天翔斬!!」

イリアが、顔の遥か上から急降下しながら顔を斬った。

「え!?効いてないんだけど!!」

アリスは、明らかにショックを受けていた。


「イリア!離れろ!!」

マルスが、顔の目の前で、構えをしていた。


「天裂き!!」

上に向けて雷の魔力を孕んだ居合を放った。

斬撃は、顔に当たりながらも空に飛び、天を裂いた。


”グァァァァァァァァァ!!!”


巨人は、顔を斬られよろめいたが攻撃は終わってなかった。

天は割れ、雷を纏っていた。

「落ちろ」


”ズガァァァァン!!”


まさに天災。

巨人よりも遥かに大きな落雷が落ちた。


”グァァァァ・・・・・・・”


その一撃で巨人は、体の内部まで焼かれ、生命活動を停止した。


・・・・・・・・・・・・。


そこまで、黙ってみていたアルベルトは、ため息をついた。

これでまだ、システムから出てないんだろ?

ラキナ曰く、システムから解放されたのは、最終決戦前だという。


これが英雄か・・・・・。

こんなものなれるわけねぇじゃん。

システムから逸脱した今なら、天候を操ることは可能だが、以前の俺なら絶対に無理だ。

それにあの巨人、暴食よりも遥かに強く感じた。

これが本物の化け物。

しかも、これでまだ、普通のレベルとは、この時代は、どれだけの世界だったのか。


「も〜!また、マルスが〜!!」

イリアが、頭を抱えて、悶えていた。

「あ、アリス様、落ち着いてください」

「クレア〜、だってこの前も・・・・・」

クレアと呼ばれた女性は、耳が長く、エルフであった。


「ごめんって、イリア」

「・・・・・・いいけど・・・・・」

「・・・・・・はぁ」

照れながら許すイリアを見て、クレアはため息をついた。


”わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!”


少し離れたところから、大きな歓声が響いた。

「行こうか、みんなのところに」

「うん」

「はい」

3人は、歓声をあげる騎士たちの元へ歩いて行った。


その後、見覚えのある場所にきた。

ここって、炎竜と戦ったところか?

なら、祠が近くにあるのか。


マルスたちは、戦勝したことを祝ってパーティーをしていた。

「マルス様、お疲れ様でした」

「クレアか、ありがとう」

「相変わらずの強さでしたね」

「いいや、まだまだだよ」

「そうなんですか・・・・・・」

マルスの、視界の中には、イリアが肉を両手に騒いでいた。


「マルス様は、なんのために戦っているのですか?」

「・・・・・・・・・・」

「イリア様ですか」

マルスの視線をたどり、理解した。

「そうかもね・・・・・」

ちょっと休憩してくるよ。そう言い残し、マルスは、その場を離れた。


マルスは、そのまま歩き岩壁の前に着いた。

「ここでいいか」

そう言って、岩に手を当て、魔力を流した。


壁が消えた!?

いや、これは、異空間を作った!?


マルスは、そのまま、奥まで進み、台座を創造した。


もう、なんでもありだな英雄は・・・・・。


「もう、保たない。あとは、託すしか・・・・・」

羊皮紙の一部を破り、台座の上に置いた。

「”ここに、歴史を刻む。この欠片が約束の地へ導く”」

魔力を流しながら、言霊を刻んだ。


言霊は、言葉に魔力を通し、思いを物に込める力のことだ。


「受け継ぐものよ。歴史の全てを背負って、彼ら・・・・・いや、あいつらを・・・・」


”殺してくれ”


そう、憎しみの力をこめていた。


なにがあったんだ、英雄に。

保たないってなにが、それにあいつらって神のことか?

なんで、マルスに関わった人は神を敵対視するのか・・・・。

まだまだわからないことだが、遺物を辿れば、歴史を辿ることができる。


「あとは、託すよ。まぁ、あっちに残してきた子、が受け継いでくれるのが一番なんだけど・・・・・」

それは、高望みか・・・・・、と苦笑いを受けながらみんなのいるところへ戻っていった。


あっちって、どっち?



今回も、謎が残りすぎるものだらけだったな・・・・・。


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