第5話 またも

どうなってんだこれは。

遺物の欠片を触った瞬間、確か気を失って・・・・・。


「どうしたのさっきから?」

女の子が心配そうに聞いてくる。

「え、いや、ごめん」

まずこの子は誰なんだ?


しばらく歩くと村が見えてきた。

「ここは・・・・・」

アルベルトにとってその村は忘れることのない故郷にそっくりだった。

「なんでここに?」

村の周りには、森があったはずだ。

しかし、この村の周りは、草原が広がり丘のようになっている。


「マルス、どこいってた?」

その声の主人を見て固まった。

「父さん・・・・・?」

ザックハードがそこにはいた。


「お、おまえ、どうした?」

「え?」

「俺を父さんなんて・・・・・」

「え、違うの?」

それを聞いたザックハードは、涙を堪えているようだ。

なんで?


「すまん。おまえを預かってから、初めてそう呼んでくれたもんでな・・・・・」

預かったって、まさか・・・・・

「ラキナから?」

「え、なんで知って・・・・・」


ゴォォォォォン・・・・・・・


マルスの頭にゲンコツが落ちた。

「いっつ〜・・・・・」

ていうか頑丈すぎんだろ、この頭。

殴ったやつを見ると、拳を鳴らすラキナがいた。

「ラキナ”さん”だろうが、クソガキ!!」

「うえ!?」

なんか、今のラキナと全然違うんですけど・・・・・。

これが、丸くなる前のラキナか。

シルビアさんに聞いていた通り、すぐ殴っているのか。


「もう、ラキナ様。いきなりなにしてるんですか〜」

ラキナの背後から、女性が走ってきた。

エミリアだ。

最後に見た時と全く変わってない。


「此奴が妾のことを呼び捨てにしたのじゃ」

「そんなことで・・・・・」

「そんなことじゃと!?妾は、此奴の恩人じゃぞ!」

恩人・・・・・、拾ってくれたからそうなるのか。


ちゃんもありがとうね」

イリアってマルスの本当の仲間の・・・・・。

この子が。

「ラキナさんも許してあげてよ」

イリア、君は救世主だ。

いまだに、マルスの頭を掴み持ち上げるラキナを見て、救いの言葉をかけた。

「・・・・・・しょうがないの」

パッと手を離した。

「ぎゃっ!」

少し投げるように手を離されたため背中から落ちた。


「それよりもガキ二人」

「な、なに?」

いまだに痛む背中をさすりながら応える。

「魔法の練習をするぞ。早く来い」

「え!?」

「は〜い!」

マルスとは、違ってイリアは楽しみにしていたようだ。

まさかこの子も戦闘狂なのか・・・・・?


しかし、なんでマルスの時代に両親が?

「行こ?」

イリアから促され後に続いた。

「ああ・・・・・・」

と、そこで意識が途絶えた。



◇◇



「ん・・・・・・」

目を開けると先ほどまでいた台座のそばにいた。

「お、目が覚めたか」

ラキナか。

なんか目を合わせづらい・・・・・。

身体を起こそうと頭を上げた時、


ゴッ!!


「「ぎゃっ」」


二人とも同じような声を上げた。

なんで、ラキナの頭が・・・・・・。

改めて身体を起こし、状況を確認した。


「もしかして、膝枕?」

「なんじゃ、嫌だったか?」

「いや、なんか意外で・・・・」

「そうか。マル坊にはよくしてたんだがな」

「そ、そうなのか」

あの時のラキナを見ると想像つかないな。


「それよりもなんか変わったか?」

遺物を手に取って倒れたのだ。

なんか、変わってるのかもと思ったのだろう。

「見た目は?」

「別に変わっておらんな」

ならステイタスを見てみるか。



『名前』アルベルト

『種族』神魔 『性別』男 『年齢』十一歳

『能力』ー


『原初』

三千世界


『三千世界』 無数の世界で全てを手に入れることができる。



おっと〜、急に来たな。

システムから外れることができた。

これで、不労以外の目標達成だ。

あとは、ソロモンとか言うやつを倒すだけ。


でも、大罪能力はどうなったのだろうか。

今度使ってみるか。


「なんか、システムから外れたらしいんだけど・・・・・」

「何!?」

「お、おう・・・」


やはりそれだけの魔力が?

いや、しかし、あの時は・・・・・


「お、おい、ラキナ?」

キッ!と睨まれた。

「何を見た?」

「え?」

「気を失った後じゃ」

これは、答えにくいな。

自分の過去を見られていいやつなんていないだろうし・・・・。


「昔のマルスとイリアを見たよ」

「何?」

それから俺は、両親やラキナのことは言わずに、イリアと話したことだけを伝えた。

あれは、おそらくラキナの黒歴史になるだろうから。


「妾には会ったか?」

「いや、会ってないよ」

「そうか」

「うん」

「本当か?」

「う、うん」


「まぁ良い」

「ふぅ・・・・・」

なかなか鋭いな。


「それよりもここからどう出るんだ?」

「そうじゃな、記憶が正しければ・・・・・・」

突如として、台座が揺れ始めた。


ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・


「ら、螺旋階段?」

台座のあった場所から、螺旋階段が生まれ上に続く階段ができた。

「おおー、記憶道理じゃな」

「すごいな・・・・・」

「じゃろ?」

「え、ラキナが作ったの?」

「いや、マル坊じゃ」


「なんでドヤ顔?」

「そりゃ、あやつに魔法を教えたのは妾じゃぞ?」

「それは、知ってる」

「ん?」



◆◆



「おい、ここってどこなんだ?」

アルベルトは、どこからか出ると必ずこうなる。

明らかに、あの森とは違う場所だ。

なんで、地面が赤黒いんだよ。

「ここは、魔大陸だな」

じゃが、端のようじゃな、都市が見えん。とラキナが付け足した。



「魔大陸って海を挟んだ向こう側だよな」

「ああ、おそらく次の遺物のかけらがここにあるんだろう」

「次って・・・・・順番があるのか?」

「ああ、あいつからはそう聞いている」

あいつとは、マルスのことだろう。

英雄がこんなことを理由も無しにするとは考えられない。


「妾も流石に魔大陸の地理まではわからんぞ」

「じゃあ、どうすんの?」

「転移は使えんのか?」

「無理だね。ここがどこかわからないなら座標の入れ替えができないから」

アルベルトの長距離転移は、現地の座標と目的地の座標がわかって初めて成立する。

視界に入る場所であれば、即座に転移可能だが、流石に情報もなしにはできない。


「妾が飛んでもよいが、ここに飛ばされた以上、魔族がそこらじゅうにいるからの」

「強いのか」

「ああ、それなりにの」

なんで、いつもこうなんだろうか。

”混沌の大地”もそうだったが、強敵ばかりがいるところに・・・・・。

待てよ?

魔族がいっぱいってことは、魔素が濃い、だから魔物がいっぱい、ポータル設置すれば魔石が大量に・・・・・・。


「どうしたのじゃ?」

「ラキナ、俺は幸運だ。こんなにも不労収入が生まれる場所があるなんて」

「・・・・・不労・・・・・・」

ラキナは軽く、恐怖をフラッシュバックさせていた。


「行くぞ!!」

「・・・・・ああ・・・・・」

テンションが違いすぎる二人が、魔大陸の大地を駆け出した。



◆◆



「!!」

アリスが何かに気がついた。

「どうしたの?」

「アルくんが出てきた」

「え!?」

セナは、そんなことがわかるアリスに驚いていた。


「なんでそんなことが・・・・・」

「んー、なんとなく?」


「でも、どこにいるの?」

「なんか、ものすごい遠いところにいる」

「え?あそこからここまで、そんなに遠くなかったけど・・・・・」

「なんかあったのか?」


「まぁ、大丈夫なんじゃない?」

「そうだな、ラキナ様もいるし」

アイナとセナは、安心していたがアリスは少し違った。


「なんか、少し気配が・・・・・・」


変わってる?




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