第11話 仇
翌日
アルベルトたちは、朝食を食べたあと、アイルビアさんの元に行った。
「昨日は、この森をありがとうございました」
シルビアは頭を下げてお礼を言った。
「かまわん。成り行きじゃ」
話を聞く限り、なにもしてないラキナが答えた。
それよりも・・・・・
「なぁ、ラキナ」
「なんじゃ?」
「そこは、もう定位置なのか?」
肩の上に乗っているラキナに聞いた。
「んあ?なんじゃ?」
「いえ、なんでもないです・・・・」
「相変わらずですね、ラキナ様は・・・・・」
シルビアはそんなラキナを見て目を細めた。
「それよりもシルビア様。なぜあなたが狙われるのですか?」
セナは、今回の標的となったアインツベルンの血を引く彼女に理由を尋ねた。
「それは・・・・・・」
言い淀んだシルビアにラキナが言った。
「やつのことは少しだが話してある。良いぞ、話しても」
「そうでしたか・・・・・」
シルビアは、覚悟を決め話し始めた。
「アインツベルンの血は、ソロモンの最愛の人、『ナーマ』の血族なんです。そして、、ナーマの遺体は、時間の止まった水晶に入れられ腐食しないようになっています」
「じゃあ、彼の復讐のきっかけとなったのは・・・・・」
「はい、『ナーマ・アインツベルン』です。彼女が封じている魔法を解除するためには、私の血が必要になるのです」
アインツベルンの血が必要ということは・・・・・
「エリスも危ないんじゃ・・・・・」
「いえ、一度超越化した人は、肉体が生まれ変わります。ですので姉さんは心配入りません」
じゃあ、あのマモンとかいうやつはそれを知らなかったのか?
それともただ人質にしようとしただけか?
「では、シルビア様さんも超越化すればいいのでは?」
アイナが解決策として提案した。
確かに、簡単ではないが、それができれば解決する。
「それはできません。確かに超越化すれば、たとえ血が取られたとしても問題はありません。しかし、私にはステイタスというものがありません」
「・・・・・はい?」
思いがけないことに疑いの声をあげてしまった。
「あのステイタスがないというのは・・・・・・」
セナが遠慮がちに聞いた。
「ソロモンがアンツベルンの血に気づいた時、姉さんは超越化していましたが、私はまだでした」
つまり、すでに肉体が変わっていたのか。
「そこでソロモンは、自らが作り上げたシステムを私から削除したのです」
なんだそのチート野郎は。
「ですので、今回は彼らを使って私の血を狙ったのでしょう」
だが、そこをアリスたちに返り討ちにされたってことか。
そこであることを聞いてみた。
「あの、ビシスという人を知ってますか?」
その名前に、シルビアとラキナが反応した。
「どこでその名前を!?」
ラキナは声をあげなかったが、明らかに体が反応していた。
「知っているんですか?」
「ええ、彼は、この世界で初めてシステムから逸脱した、ソロモンの最初の天敵です」
「それで、アル坊がその名前を知っているということは、会ったのか?」
「うん。王都でね。ボコボコにされたよ」
あの人はすごかった。本当の最強はあの人だ。
「まぁ、あいつは強いからの」
「ラキナがそう言うならやっぱり相当強いんだね」
するとラキナが苦虫を噛み締めたような顔をして・・・・・
「ああ、そうじゃな・・・・・・」
まさかラキナでも勝てないのか?
「ふふ、毎回返り討ちにあってましたもんね」
シルビアが懐かしむように言った。
「な、そんなことはない!・・・・・たまにじゃ」
嘘をつくのが下手なようだ。
目が泳いでやがる。
ラキナの様子にみんな笑い声をあげ、そこからは昔話に花を咲かせた。
「それで、今日はどのような用件で?」
シルビアから呼び出された要件を伺った。
「はい。あなた方に贈り物をしようかと思いまして」
贈り物?
「世界樹の枝です」
世界樹は、世界に自然をもたらし、精霊を生み出す生命の源。
「それを俺たちに?」
「ええ、聞けばアルベルトさんは、素材を使っていろんなものを作れるとか」
なるほど、世界樹の枝は最高の素材になりそうだ。
「ありがたく頂戴します」
「では、早速世界樹の元にいきましょうか」
◆◆
「あはは、久しぶりだな。ここも」
「グルァ!」
男は竜に跨り、エルフの森の上を飛んでいた。
「まったく、あの人も人使いが荒いぜ。いや、エルフ使いか?」
男の耳は、尖っていてエルフの特徴が表れていた。
森を見下ろしているとき、突然森の上、男の頭上に雷雲が立ち込めた。
「は?なんでいきなり・・・・」
ズガァァァァァァン!!
男と竜に雷が落ちた。
一人と一頭は、そのままエルフの森に落下していった。
「アガッ。なんなんだ・・・・・一体」
その雷雲は、昨日セナが上空に放った風雷砲が孕んだ電流が大気に混ざり、ゆっくりと雷雲に成長したことで生まれた偶然の産物であった。
「くそっ。殺してやる・・・・」
◆◆
シルビアの案内で世界樹に向かったいた時、
ギャァァァァァァァァァァァ!!!!!
「え、なに?」
突然、魔物の叫び声が聞こえた。
「この声は・・・・!!」
セナは、この声に過剰に反応した。
「ちょ、まっ・・・・」
セナは、アルベルトの声に反応せず、声の下方に向かった。
「とりあえず追いかけよう!」
アルベルトたちは、セナを追いかけた。
「いた!おいセナっ、どうしたいきなり」
「あいつだ・・・・・。あいつが来た」
セナがここまで怒っているのは初めてみた。
「あいつって、セナの仇のこと?」
「ああ、両親と親友の仇だ」
なるほど、それでここまで・・・・・
「あ〜、ちくしょう!なんなんださっきのは!」
土煙の中から竜と悪魔が出てきた。
「あん?誰だお前ら・・・・・お?」
悪魔は、セナに気付き声をあげた。
「お前は、あん時の小娘か!?」
「アスタロトォォォ・・・・・・!!」
セナは怒りが限界に達しそうだった。
ポンッとセナの方に手が置かれた。
「・・・・・・・!!」
「落ち着けセナ」
「だが!!」
「いいから、怒りに身を任せるな」
「・・・・・!!・・・・・すまん」
しかし、アスタロトか・・・・・。
そこまで強そうじゃないな。
「セナ、一人で両方いけるか?」
「ああ、今の私なら・・・・・それに」
なら、手は出すまい。
「なら、後ろで見てるよ」
セナを残し、アルベルトたちは後ろに下がった。
「なんだテメェ。一人で俺たちを相手するのか?」
「そうだ。もう、あの頃の私ではない」
セナは、魔剣グラムを構え、アスタロトと竜に向かって叫んだ。
「お前らは、ここでぶちのめす!!」
アルベルトは、そんなセナを見て思った。
野蛮なヤンキーみたいだな。
◆◆
「大丈夫なのか?アル坊」
ラキナは、セナでは無理だと思ったのだろう。
「ああ、大丈夫だよ。それに・・・・・」
試練らしいから。
「そうか、超越化するのか」
まだわからないけどね。
「まぁ良い。そんなことよりアイナ、肉をくれ」
それでいいのか、黒龍よ。
「あの、大丈夫なのですか?」
シルビアも心配なのだろう。
「大丈夫ですよ。それよりもせっかくなので肉を食べましょう」
「え、ええ」
アイナが肉を焼き終わり、アリスとラキナは貪り始めた。
そんな二人を見て、シルビアは、肉を齧った。
「・・・・・・・・・!!」
そこから先は、4人ともそばで始まっている戦闘など気にしてない様子で、無言で肉を食べ続けた。
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