第12話 vsアスタロト
「行くぞっ!ラギルス!!」
グァァァァァ!!!!
アスタロトは、相棒の竜に乗り、セナに襲いかかる。
「はっ、お前の両親たちのように無惨に殺してやるよぉ!!」
「いや、あの時とは違う。私は、お前らに復讐するためだけに生きて、力をつけた」
セナは、竜殺しの特性を持った魔剣グラムを構え、暴風を纏わせた。
「暴風剣:ゲイル・グラム!!」
魔剣に纏った暴風を剣先に集め、さらにそれを圧縮した。
そして、それを竜に向け剣を振り下ろすとともに放った。
「はっ、そんな攻撃がラギルスに聞くとでも!?」
アスタロトは知らなかった。
セナが、圧倒的な速さで自動的に強くなっていることを。
魔剣グラムに竜殺しが備わっているこを。
圧縮された空気は、超高速で放たれることを。
ギャッ!!
それが、アスタロトの相棒、ラギルス最後の言葉だった。
ラギルスは、体に穴を開けられ、即死した。
「な、ラギ・・・・ルス・・・・?」
アスタロトは、動揺を隠せず地面に落ちた。
「お、おい、ラギルス?」
アスタロトは、ラギルスの巨体を揺らしながら、体を震わせていた。
仇のそんな姿を見て、セナは、過去を思い出していた。
◇◇
ここは、シルビアのいるエルフの森、中心地より離れた集落。
「セナー!遊ぼうぜ〜!」
セナの家に、一人の男の子がやってきた。
「うん!父さん、母さん、行ってきま〜す!」
「「いってらしゃい!」」
少女セナは、男の子の後に続いて家を出た。
「ねぇ、ロイル。今日は何する?」
「そうだな〜。泉の方に行かない?」
「いいね!行こうよ!」
二人は、手を繋ぎ泉の方まで走っていった。
二人が向かった先には、アルベルトが見たような綺麗な泉が広がっていた。
「「うわぁ」」
二人は何度も見た泉に感動した。
「やっぱりすごいね、ロイル」
「だな」
セナは、いつもやっている二人だけの遊びをやろうと言った。
「いくぞ。水魔法:水球」
「風魔法:風の道」
拙い魔法だが、それでも長い時を生きるエルフの中では、これが普通だった。
ロイルが作った水球を、セナが風に乗せて空中に水の道を作り上げる。
その水の道に泉に差し込む光が反射し、二人の作り出した世界は、キラキラと輝いていた。
「ふわぁぁ」
セナは、この景色を自分と幼馴染が作っていることに毎回感動していた。
ロイルの目には、魔法など写っておらず、セナの笑顔だけが焼き付いていた。
「あっ・・・・・」
魔法の制御が崩れ、綺麗な水の道は途切れた。
「あ〜、なかなか続かないね、これ」
「え?あ〜、そうだな」
原因は、ロイルの制御ミスなのだが、幼さゆえにセナは気づかない。
「ねぇ、ロイル。寝っ転がらない?」
「あ、ああ」
二人は、そのままその場に転がり、将来のことを話しはじめた。
「セナは、大人になったら何するんだ?」
「私はね、外に出たいかな」
ロイルの方を見てワクワクしながら話した。
「外に?」
「うん!外に出て、たくさんの人と話して、たくさんのものを見てみたいんだ!」
「なら、僕もいってみようかな」
ロイルはセナと一緒に居たいがために咄嗟にそう言った。
「ほんと!?一緒に来てくれる?」
「あ、ああ。一緒に行こう」
「うん!絶対だよ!」
二人は、泉の光景を見ながら約束をした。
ギャァァァァァァ!!
二人の耳に魔物の声が響いた。
「な、なに!?」
「これは、集落の方?」
二人は滅多に聞くことのない魔物の声にたじろいだ。
「ど、どうする?」
セナは、ロイルの腕を掴みながら震える声で言った。
「と、とりあえず集落に戻るか」
「そうだね・・・・・」
二人は、ゆっくりと集落の方へと歩いて行った。
「な、なにこれ・・・・・」
「こんなことが・・・・・」
二人の目の前には、さっきまで木々に囲まれた集落が広がっていた場所が燃えている光景があった。
「セナ!ロイル!なぜ戻ってきた!!」
二人の元にセナの両親が走ってきた。
「お、お父さん・・・・・」
「いいか。ここから、全力で中心地に向かって走りなさい。絶対に振り返ったらダメだぞ」
「で、でも、お父さんは・・・・・・」
「後から行くから!」
セナのお父さんはロイルに目を向け、
「いけるな」
「・・・・・・うん」
「頼んだぞ」
ロイルは、大きく頷いた。
セナは、母親と話していた。
「いい、セナ。私たちは後から行くから」
「い、嫌だ!お母さんたちと一緒がいい!」
子供からすれば当然の反応だ。
「大丈夫よ」
セナを抱きしめながら、安心させようとした。
「行くぞセナ」
ロイルは、セナの手を取り、中心地の方へ走り出した。
「お父さん!お母さん!」
セナは、手を伸ばすが両親には届かなかった。
ロイルは、セナの姿を、昔の自分に重ねた。
ロイルの両親はもうすでにいない。
だから、ロイルにとって、セナの両親はもう一つの家族だった。
あの様子では、あの二人はもう戻ってこない。
ロイルはセナの手を強く握り走り続けた。
「あん?まだいるじゃねぇか」
二人の目の前に悪魔が現れた。
「「ひっ」」
初めて見る悪魔に二人は、腰を抜かした。
ロイルは、諦めかけた。
しかし、腕にセナが握る手のひらの感覚があった。
「い、いけ、セナ」
「え・・・・ロイルは?」
ロイルは答えなかった。
ここで、戻る約束をしても果たせないことはわかっていた。
「お、かっこいいねぇ〜。お前が残るのか?」
悪魔は、ロイルを見てその勇気を称えた。
「いけ!セナ!」
「わ、わかった!」
セナは、溢れ出る涙をそのままに走り出した。
「お前の勇気に免じて、あの女だけは生かしてやるよ」
「・・・・・助かるよ、クズ野郎」
ロイルはその言葉を最後に命を落とした。
「はっ、はっ、はっ、はっ・・・・・・」
セナは、一心不乱に走り続けた。
「お父さん、お母さん、ロイル・・・・・」
セナにとっての家族、いつも一緒に居た家族、その家族が1日でみんないなくなった。
ドスンッ!
目の前に竜と悪魔が現れた。
悪魔の手には、ロイルがいた。
悪魔は、乱暴にロイルを投げ捨てた。
「ロイルッ!!」
セナは駆け寄り、ロイルを抱えた。
「ははは、かっこよかったぜ〜、そいつ」
まぁ、一瞬だったがな。
「・・・・・・・・」
「おいおい、そんなに睨むなよ〜」
「・・・・やる、殺してやる・・・・」
「あん?」
「絶対に殺してやる!!」
セナは、目尻に涙を溜めながら、悪魔に叫んだ。
「いいね、いいね。またいずれ来てやるよ」
悪魔は竜に乗って、飛び去った。
「おい!大丈夫か!」
人間の声がした。
複数人いる。
「生存者がいるぞ!」
数人が、セナの元に来て保護した。
彼らは、ロイルを弔い、セナに尋ねた。
「共に来るか?生きる術を、戦う術を学ぶために」
セナは、頷き気を失った。
この日から、セナの生きる理由ができた。
◇◇
そして、現在あの日とは立場が逆転したセナは、
「まずは両親の仇だ」
ゆっくりとアスタロトに近づき、
「次は、ロイルの仇、それで私の家族は安らかに眠ることができる」
ラギルスに手を当てたままのアスタロトに剣を向けた。
「お前は、絶対にゆるさねぇ!!」
アスタロトは、怒りを叫んだ。
「わかるか。それが大切なものを奪われた者の怒りだ」
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