第10話 敵の正体

「魂を一つに・・・・か」

魂ってどうやって感じるんだ?

このままじゃわかんないか・・・・・。

アルベルトは、精霊卿を歩いて回ることにした。


「しっかし、綺麗なところだよなほんと」

見渡す限り、綺麗な花が咲き誇っており、前世や王都で見たような建造物は、見渡す限り見つからない。

天国といっても過言ではない。


「汝は誰だ?」

男の声が聞こえた。

あたりを見回しても誰もいない。

「あの、どこにいるんですか?」

「汝は誰だ?」

えーっと、これは、答えなきゃ先に進まないやつか。


「アルベルトですけど」

「汝は誰だ?」

え、えー?

ちゃんと答えたのに・・・・・。

「汝は誰だ?」

「だから、アルベルトだってば」

「汝は・・・・・」


・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。


それから、何百回も同じ問答を繰り返し、アルベルトは疲れ切っていた。

「汝は誰だ?」

あーもう、なんなんだよ、まったく。

こちとらアルベルト以外に名前なんて・・・・・・。

名前・・・・・・?


もしかして・・・・・・

「あの、本木丸雄もとぎまるおです」

前世での名前を答えてみた。

普通の名前だ。


「そうか。なら、もうわかるな」

そういって声の気配は消えていった。


「え、なにが?」


いきなりのことすぎて、ついていけなかった。



だが、あの問答のおかげで分かったことはある。

アルベルトと本木丸雄、二つの名前を持つ自分。

アルベルトと本木丸雄、二つの・・・・・

「魂?」

そいうことか、あの問答は意味があったのか。

これがわかっただけで、救われるというものだ。


なら、これからやることは一つ。

アルベルトと本木丸雄の魂を一つにする。

自分という存在を一つの器に集約させる。

「で、どうやってやんの?」

どうせならそこまで教えて欲しかった・・・・・。



◆◆



黒装束が少年にどこかに飛ばされ、不完全燃焼のままアリスたちはセナの家に集まった。

ガルムは、そのまま姿を消した。


「あれはなんだったの?」

アリスが、何かを知っていそうなラキナに聞いた。

「私のこともシュトベルトの血を引く者と言われました」

「・・・・・・・」


「他の3人のことは知らんが、最後の一人は、我らとマル坊の本当の敵だ」


「マル坊ってマルス様のことですか?」

「そうだ」

アイナの問いに、素直に答えた。

「あの子供が?」

「あれは、マル坊だ」

「「「え!?」」」


「正確に言えば、マル坊の体を乗っ取った『創造神・ソロモン』だ」


ソロモン

ソロモンの指輪を持って、72の悪魔を使役し、精霊の力を借りてこの世界の魔法に大きな影響を与えた存在。


「ソロモンって、マルス様が封印されたとされる八柱の主人ですか?」

「いや、八柱はやつの直属ではない。八柱はソロモンが神と戦った時に72の悪魔のうち生き残った4人の王の部下にすぎん」

ラキナの口から語られた事実にアイナとセナは、驚愕で呼吸も忘れていた。


「じゃあ、そいつらを倒せばいいんだね」

アリスは、歴史に興味がないのか、それとも新たな強敵の存在にワクワクしているのか、うずうずした様子で言った。

「お主・・・・・」

ラキナも呆れた様子でアリスを見た。

その姿に、かつて共に戦った剣士を重ねていた。

「これも運命か」

「ん?どうしたの?」

「いや、なんでもない・・・・」


「まぁ、それが今回襲ってきたやつの正体じゃ。セナが戦ったジーナとやらは、何かがあってやつの元に行くことを決めたのじゃろう」

「その彼女は、王都最強の魔導士と呼ばれていたのですが、そのソロモンの元に行く理由はなんですか?」

最強の名を冠していても彼の元に行く理由、それを知りたかった。


「ソロモンはな、この世界の魔法やステイタスのシステムを構築したやつなんじゃ」

「システムを構築!?」

「ああ、奴も最初は普通の子供じゃった。じゃが、ある存在に愛する者を殺されての。復讐のために生きておるのじゃ」

復讐の対象がなんなのか、それをラキナは決して言おうとしなかった。


「これ以上は、いずれな・・・・」




◆◆



「ラキナ様たちがいてくれたおかげで、なんとか被害は最小でした」

シルビアは、すでに復興に入っている森を見ながら言った。


「さて、彼は、見つけたでしょうか」




「よしっ、いけた!」

やっとのことで魂を把握することができた。

ここからは、ふたつある魂を一つにする。

「ここからだな・・・・・」


アルベルトは、目を瞑り、魂を視る。

前世での本木丸雄としての魂は、転生によって、アルベルトという存在となった。

今までは、アルベルトとしてだけの人生だったが、前世での人生も合わせて今のアルベルトがある。

本木丸雄はアルベルトで、アルベルトは本木丸雄だ。


二つの魂が、少しづつ混ざっていく。

そして、一つの器に注がれ、これからのアルベルトとしての魂へと変化していく。

器がいっぱいになるにつれ、アルベルトの周りには多くの精霊が集まってくる。

まるで帰る場所を見つけたかのように、彼に寄り添い、彼の中に入っていく。


「・・・・・できた・・・・・」

その瞬間、アルベルトの中で、魔力の奔流が渦巻き、なくなることのない源泉ができたような感覚を感じた。

ゆっくり目を開ける。


「あ、やっと終わった〜」

「ほんとだ〜」

目を開けた先にはあの二人がいた。

今なら、はっきり見える。

二人は、光球ではなく、少年少女の姿をした精霊だった。


だね」

「だね〜」

「ね〜」


二人は、アルベルトを手招きしてついてくるように促した。

「どこいくの?」

アルベルトは、言われるがままについていった。



辿り着いた先には、一つの杯があった。

「これは?」

「「飲んで〜」」

え、飲むの?

まぁいいか。


「いただきます」

ごくっと一気に飲み干した。


「あがっ!」

目に激痛が走った。

痛い痛い痛い!!!

なんだこれは、目が弾けそうだ!


「「大丈夫だよ〜」」

二人は、まだかまだかと待ち侘びていた。

するとようやく、痛みがおさまった。


「こ、これは?」

痛みがおさまった後、両目に大量の魔力が宿っているのが分かった。

「それはね〜」

「私たちの家〜」

そう言って二人が目の中に入ってきた。


「は!?」

ちょ、なに?

目の中が家?

困惑しているとエルキアさんがやってきた。

「やはり、お二人だったのですね」

「あ、エルキアだ〜」

「久しぶり〜」

二人は、目から出て挨拶した。


「あの、この二人はどういった・・・・」

「そのお二人は、始原の精霊ですよ。我々の王、精霊王の父と母です」

なんとも反応しづらい答えだった。


「それでそんな二人がなんで目の中に?」

全くもって意味がわからない。

「ふふ、いいじゃないですか。お二方があなたを選んだのですから」

「「よろしく〜」」

まぁいいか。

「よろしくね」


「では、これで精霊卿での修練は終わりです」

「ありがとうございました」

エルキアさんは外に繋がる門を開き、どうぞと手招きした。


「では、また」

エルキアさんに挨拶をして、精霊卿にお別れをした。

「「またね〜」」

二人も、精霊卿に手を振っているようだった。



「お、ただいま戻りました・・・・・・なにしてるんですか?」

戻ってくるとシルビアさんが膝をついていた。

「無事に始原の精霊様に認められたようで何よりです」

「ど、どうも」

シルビアさんに普通にしてもらい、襲撃があったこと、アリスたちがほとんど解決したことなどを聞いた。

「はぁ〜、そんなことが」

「みなさんは、セナの家にいますよ」

「ありがとうございます。では・・・・」




「ただいま〜・・・・」

「あ、お帰りなさい」

アイナが迎えてくれた。

彼女は、料理の準備をしていた。

ああ、やっと食べることができる。


「あら、なんか変わった?」

「まぁ、ちょっとね」

ふ〜ん、とあまり興味はなさそうだった。


その後、全員帰ってきて集まったところで、食事を食べた。

そこで、ラキナからソロモンの話を聞き、最近戦いすぎてる原因を知り、不労を邪魔するものとしてロックオンした。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る