第9話 一時撤退
「暴風魔法:風雷砲!!」
セナは、ジーナにオリジナルの新魔法を放った。
圧縮された空気が、発生した電流によってできた膨大な磁界に推進力を与えられ、音速の約7倍の速さで対象を撃ち抜く。
ジーナは、アルベルトに感じた嫉妬をより強く自分の中に生み出した。
発射された、超高速の空気の塊に手を伸ばし、
「大罪:嫉妬・インビディア」
ジーナが大罪能力を発動した瞬間、風雷砲はジーナに当たる前に止まり、反転した。
これは、先程の雷撃を反転させた
「なに!?」
セナは、自分で放った現状で最強の魔法がそのまま跳ね返ってきたことで、あの時以来の”死”を感じた。
死ぬ!
まだ仇も打ってないのに、それに・・・・・・・。
恋だって。
バァァァァァァン!!
セナの目の前で風雷砲は壁に阻まれた。
「これは、アルベルトの!?」
腕輪に設置された空間断絶が命の危機に発動した。
「なんだそれはぁ!!」
ジーナは、またしても自分にはできないことをするセナに声を荒げた。
セナの耳には、そんなジーナの声が届いていなかった。
「また、助けられた・・・・・」
ジーナの中で、感情が渦巻き始めた。
「いや、私は、仇をうつために共にしているだけだ!」
戦いそっちのけで、初めての感情相手に苦戦していた。
「セナぁ!早くそいつを倒せー!」
同胞の叫び声にセナは、現実に戻ってきた。
ジーナを倒さない限り、エルフの森は燃え続けてしまう。
「暴風魔法:暴槍!」
セナの背後に暴風を纏う風の槍が現れた。
「いけぇぇぇ!!」
「無駄だ。インビディア」
ジーナは、風の槍が向かってくるという
「くそっ、どうなってる!?」
このままでは、こちらの分が悪くなる。
大罪能力は魔力を使わずに発動できるとアルベルトに教えてもらった。
「ははは、これはいい、これがあれば奴をっ!」
ジーナは、新たに手に入れた力に酔っていた。
アルベルトのあの魔法もこれがあれば、そのまま返せる。
嫉妬:インビディアは自分にできない
グサッ!
「ははは・・・・・は?」
高笑いをしていたジーナの足にエルフの放った矢が刺さった。
「あああ!!クソがっ!」
辺りにいるエルフに雷撃を放った。
「暴風魔法:風の道!!」
セナは、全雷撃をジーナに返した。
「くそっ」
ジーナは、片足を庇いながら雷撃を避けた。
嫉妬は、あくまで自分ができないものを返すだけ、自ら放った魔法は返せない。
暴風魔法の暴槍は返せても、風魔法の風槍は返せない。
「そうですか。それがあなたの弱点ですか」
セナもそれに気付きここにいるエルフに指示を出した。
「全員、基本魔法の攻撃を!」
そう言いつつ自身は、風雷砲を準備した。
「魔法発動!!」
ジーナの八方から魔法が放たれ、正面から風雷砲が放たれた。
「あ〜、それはダメだよ。彼女には今死んでもらっては困る」
ジーナの前にフードを被った子供が現れた。
パチンッ
子供が指を鳴らすと、魔法が全て消えた。
「なに!?」
「ジーナ、今日はおかえり。よくやってくれた」
「も、申し訳ございません!」
ジーナは、その子供に縋るように謝った。
「謝る必要はないよ。君たち全員を回収したら今日のところは引こう」
「行かせると思うか!」
セナは、魔法を発動しようとした。
「潰れろ」
「がっ!?」
セナは、地面に叩きつけられた。
「おおー、これに耐えるのか。その腕輪かな」
子供は、腕輪の効果を消そうとした。
「!?」
子供はもう一度消そうとした。
「・・・・・なんで消えない」
「まさか・・・・理外の者が!?」
子供は、頭を抱えながら歯軋りをした。
「まぁいい、そうだとしてもいずれ会うことになるだろう。そいつはその時だ」
子供は。ジーナをどこかに飛ばしその場から消えた。
セナにかかった魔法が消え、解放された。
「なんだったんだ今のは・・・・・」
その呟きは、風に攫われて消えていった。
◆◆
「おまえは、殺す」
殺意を持ったアリスはゆっくりと標敵に向けて歩いていった。
アリスが一歩前に進めば、黒装束は一歩後退りをする。
彼は、アリスの殺気で腰を抜かしていた。
「くそっ・・・・・こんなつもりじゃ・・・・」
黒装束も流石に死を覚悟し、反撃を諦めていた。
アリスは魔力を宿した剣を振り上げ、標敵に向かって振り下ろした。
英霊剣に宿った神聖な魔力が一つの斬撃となって、黒装束に向かっていった。
「ほんと、勘弁してくれよ・・・・・・」
「まったくだよね」
その斬撃を子供の姿をした黒装束が剣一本で受け止めた。
「!?」
アリスは、目を開き驚いた。
怒りに身を任せていたが、理性は残っていたため、まさか止められるとは思わなかった。
アリスは、その子供に斬りかかった。
「やめんか、ばかもん!」
「ぎゃっ!」
アリスは、変な声を出しながら地面に叩きつけられた。
「少しは落ち着け、斬りかかる相手を見極めるのじゃ」
ラキナに殴られ説教された。
「ご、ごめんなさい・・・・」
地面に倒れ込んだまま、謝った。
「ふふ、久しぶりだね。ラキナさん」
子供は、再会を喜ぶようにラキナに笑顔を向けた。
「坊や・・・・・・・」
対してラキナは、辛そうな表情を浮かべ、唇を噛んでいた。
「もうダメなのか・・・・・」
「そうだね。もうあの時の僕はいないよ」
「そうか・・・・・・」
「今日のところは引かせてもらうよ」
ラキナは、黙ってその子供を見ていた。
「ユウタ、帰ろうか」
「ああ、すまねぇ」
ユウタと呼ばれた黒装束は、どこかに消えた。
「では、また会いましょう」
その子供も続くように消えていった。
「ラキナ、大丈夫?」
「・・・・・ああ、すまんな」
黒龍とは思えないほど、覇気を失ったラキナがそこには居た。
◆◆
「なぁ王女様よ〜、いくら擬似とはいえ聖剣使いを陽の光が届かないところに誘導するとか無理なんですけど」
ガルムは、なんとかアイナを守りながら剣戟を防いでいた。
「ヒャハハハ、そんなもんか〜?」
ダイス(?)は、笑いながら、剣を振り続けた。
「あ」
ダイス(?)が突然止まった。
「おいどうした」
「もういいや。一気にやるか」
ダイス(?)は、聖剣により一層の光を集め、剣先をガルムたちに向けた。
「擬似聖剣:エクス・・・・・」
「今回はダメだ、ゾイド」
突然、子供が間に割って入った。
「今回は、理外の力が働いている。引くよ」
「・・・・・・ちっ」
ダイス(?)改め、ゾイドは、素直に従い子供に飛ばされた。
「またね。シュトベルトの血を引く娘よ」
子供もそのセリフを最後に消えていった。
「なんなんだ、一体・・・・・」
「今のは・・・・・・」
二人の言葉は、二人にしか聞こえなかった。
◆◆
「あー!くそっ!」
アルベルトは、あれ以降体内で魔力を渦巻かせるべく修練を続けた。
しかし、一時は体内に抑え込めてもすぐに外に出てしまい、内で渦巻かせられなかった。
「こんなに難しいとは・・・・・」
仰向けに倒れ込み空を見上げているとエルキアがやってきた。
「ふふ、苦戦してますね」
「はい。どうにもうまく行かないんです」
アルベルトは、これまでの成果を話した。
「なるほど。少し視せてもらいますね」
エルキアは、アルベルトの内を視た。
「なるほど、これは・・・・・」
「どうしました?」
「あなたの中に、魂が二つありますね」
それが互いに邪魔してるのでしょうと言った。
「え、魂?」
「はい、それを一つにしなければ難しいでしょうね」
精霊になれの次は、魂を一つに・・・・・か。
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