第8話 嫉妬
「ダイス・ロンド?」
なんで彼がこんなところに・・・・・・
「あん?こいつの知り合いか?」
まるで自分はダイスではないとでも言いたいような言葉だった。
「まぁいい、どうせ殺すんだ、知られたところでなんてことはないな」
「何を言って・・・・・」
「俺は、ダイスってやろうじゃねぇぞ」
ダイスの顔をした男は確かにそういった。
なら、彼は一体・・・・・・。
「ダイスに何したの?」
ダイスの顔を持っている以上なにか彼の身に起きたということ、少しの間だとはいえクラスメイトだったのだ。
「おっ、知りてぇかぁ?」
ダイス(?)は、ニヤニヤしながら続けた。
「俺を殺せたらわかるかもなぁ」
「そう、ならそうさせてもらうわ」
アリスは、戦う意思を初めてみせた。
「ねぇ、主に戦うの俺なんだけど・・・・・」
ガルムの呟きは、だれにも聞かれなかった。
◆◆
「なかなか様になりましたね」
エルキアは、目の前で瞑想しているアルベルトを見ながらそう言った。
しかし、たった2日でここまでいくとは、さすがは彼の・・・・・・。
エルキアは、以前ここで同じように修行して行った少年の姿を重ねなていた。
「ふぅ・・・・・」
アルベルトは、目を開け、体の状態を確かめた。
体の周りには、魔力が静かに渦巻き、その魔力はアルベルトの体から出ていた。
今まで体の外から入ってきていた魔素、いや精霊は入ってきていなかった。
「これが完成形なのか?」
「あと少しですね。あとは、その奔流を完全に抑え込み、体の中で渦巻かせることで、あなた自身が魔力の永久機関になります」
永久機関か・・・・・、ていうことは魔力の限界を気にしなくていいってことだ。
それに、精霊に依存しない存在になれる。
アルベルトは、さらに修練を続けた。
◆◆
「暴風魔法:降風!」
ジーナの頭上に魔法陣が現れ、暴風の塊が落ちた。
「くそっ、なんだこの魔法は!・・・大地魔法:土壁!」
ジーナは、頭上に土の壁を作り上げ暴風の塊を防いだ。
「雷撃魔法:ショックボルト!」
今度はセナに、雷撃が襲った。
さすがは、王都最強、全属性を使えるという噂は本当のようだ。
だが・・・・
「暴風魔法:風の道」
電撃が走るのは、空気があるから、ならばその空気を自由に扱えたら・・・・・
セナは、雷撃のベクトルを反転させ、ジーナに返した。
「なに!?」
予想外の展開に躱すことができず自分の放った雷撃が顔を掠めた。
「クソが!あの小僧以外にこんなやつが!」
ジーナは突然喚き出した。
「小僧?」
「あのアルベルトとかいうガキのことだよ!」
「アルベルトが何か」
セナは、予想していない名前に驚いた。
「おまえ、あいつの知り合いか」
「知り合いというか今一緒に旅をしてますが・・・・」
ジーナはそれを聞き震え出した。
「・・・・・・えろ、・・・・教えろ!奴の居場所を教えろ!!」
「え、いやですけど」
アルベルトの居場所は、同時にシルビアの居場所でもある、セナが教えるわけがなかった。
「そうか、ならこの森を焼けば全員死ぬよなぁ」
「混合魔法:火炎旋風!!」
ジーナが、両手を広げた瞬間、左右に火柱が立ち、それを中心に四方から風が吹きあふれた。
やがて、竜巻となり、炎を含んだ竜巻となって森の木々を燃やし始めた。
「なっ!」
セナは、慌てて風を制御しようとしたが、
「邪魔はさせん。闇魔法:黒霧」
セナの周りに黒い霧が立ち込め視界を奪った。
「くそっ!これでは、掌握できない!」
どんどん森が焼かれていく中、アリスは修行の成果をあらわにしていた。
「なんだ、おまえはっ!」
黒装束は、全く歯が立たない少女を相手にして、この運命を呪った。
「う〜ん、まだだなぁ」
少女の口からそんな言葉が聞こえた。
これでまだだと!?
こんなもの、ザックハードやエミリアの二人を相手にした方がまだマシだ。
しかもこの剣の型は・・・・・
「おまえ・・・・ザックハードって奴を知ってるか?」
「ザックおじさん?」
アリスは久しぶりに聞いた名前に、黒装束に初めてまともに反応した。
「やっぱり知り合いか」
「ザックおじさんはどうしてるの?」
アリスは、元気にしてるであろうザックハードの現況を聞いた。
「死んだよ。俺が殺した」
「!?」
アリスはひどく狼狽えた。
黒装束は、好機と見たのか話を続けた。
「ザックハードの方は片腕を斬って、エミリアも再起不能まで切り刻んだよ」
あれは、楽しかったなぁ、と笑いながら言った。
「どうした・・・・・・・・っ!!!」
アリスの顔を見た瞬間黒装束の足は震え、汗は引っ込んだ。
「あ、あ、え、あ・・・・・・」
「おまえは、殺す」
アリスは、初めて殺意を抱き、相手に剣を向けた。
「あははは、強いじゃねぇかおまえ!」
ダイス(?)は、ガルムを相手に笑っていた。
「ったく、気味悪いなおまえ」
ガルムは、戦いづらそうにしていた。
本来暗殺術を得意とするガルムは、洞窟の外にいるとはいえ、正面からの戦いは得意ではない。
「くそっ、腕輪があるとはいえきついな」
「ははは、これはどうだ!?」
「擬似聖剣!」
ダイス(?)の剣は、光出し、剣速が上がった。
「なっ、くそっ」
ガルムが押され始めた時、ダイス(?)の剣を見て、アイナが驚いていた。
「その聖剣は、妹のユリスに宿った聖剣じゃ・・・・」
聖剣は、勇者ごとに変わってくる。
アリスの場合は、剣を持っていなくても聖剣を生み出して戦うことができる。
一方でユリスの場合は、剣に聖剣の力を宿すことで戦う。
目の前のダイス(?)は、ユリスに宿った聖剣を使った。
「けひひっ、こいつは勇者の血筋だろ?」
だったら、使えるよな〜、と聖剣を使いこなしていた。
「おい、王女様!どうすりゃいい!?」
ガルムは、流石に聖剣は想定していなかったのか焦り始めた。
「聖剣の弱点は・・・・・・」
アイナは考え始めた。
聖剣は、かつての勇者が使い、陽の光を力に変え、闇に生きる魔王を倒した神器。
しかし、その後悪神の力によって世界が闇に変えられ、聖剣は力を失った。
その悪神は、英雄によって退けられたが、かつての聖剣は光を失ったままだ。
「陽の光・・・・・、そうかっ」
アイナは、空を仰ぎ見た。
「ガルムさん!聖剣は陽の光を力に変えています」
「陽の光?」
「はい。それがなくなれば力を失います!」
なるほどな、とガルムは対抗策を考え始めた。
◆◆
「おいっ、火を消せ!」
「これ以上、森を焼かせるな!」
エルフたちは慌てて魔法で水の渦を作り、火を消し始めた。
「くそっ、規模が違いすぎる!!」
「セナ!そいつに集中しろ!!」
エルフの一人が、叫んだ。
「わかった」
セナは、目の前で燃えゆく森を見て笑っているジーナを睨みつけある魔法の準備を始めた。
火炎旋風に集中しているジーナはそれに気づいていなかった。
空気を圧縮しつづけ、やがて電流が生まれた。
セナは、ジーナに狙いを定めた。
そこで異変を感じたジーナが慌ててセナを見た。
「な、なんだそれは!?」
ジーナは、以前、王都で見た少年の魔法を見て絶望した時の記憶が蘇った。
◇◇
アルベルトが合同演習でサタナキアのいるところに転移させられた時、魔法で様子を見ていたジーナは、助けるべきか迷った。演習時に配布した武器には、ジーナの魔法がかけられており、生徒の状況がいつでも確認できるようになっている。
そんな中、ひと組だけ、予想もしていないところの転移していた。
そのペアが、アルベルトと王女だと気づき助けに行こうと様子を確認しながら準備をしていた。
「あれは、八柱!?」
以前一度八柱と戦ったことがあるが、一人ではどうにもならなかった。
しかし、今は、王都最強の魔導士とまで言われるようになった。
今なら、一人でもどうにかできると、アルベルトたちのところに転移しようとした。
「・・・・・は?」
しかし、アルベルトは魔法を使わず、八柱の攻撃をいなし、最後は見たこともないような高威力の魔法で消し炭にした。
「なんだ、これは、こんなこと・・・・・」
その戦いを見た瞬間、今まで自分が積み上げてきたものが崩れ落ちる音がした。
自分が自分でなくなるのがわかった。
嫉妬の炎が自分の中で渦巻き出した。
「そんなことあってはならない・・・・最強は私だ・・・」
『ユニークスキル』
嫉妬を入手しました。
その時、新たに大罪能力者が産まれた。
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