第7話 開戦
アリスは、ラキナのしごきにとうとう力尽きた。
「・・・・・・・・・」
「なかなか持ったな」
ラキナは、明らかに成長しているアリスを見て感心した。
「・・・・・ねぇ、ラキナちゃんってどれくらい強いの?」
「そうだな〜。国の一つぐらいなら片手間で滅ぼせるな」
「そっか・・・・・」
アリスは、そのまま気絶した。
「全く、末恐ろしいな。寝てる時ぐらい休まんか」
気絶してなお、天元突破をしたままのアリスを見てため息をついた。
セナは、手の上にある電気を放つ空気を見て、目を輝かせた。
「これは、新発見だぞ!」
セナの掌にあるのは、電気を帯びた空気の塊だった。空気を圧縮し、気体の温度が上がり、分子が原子になり、さらに温度が上がると電子が原子からわかれ、電離が起きる。それによって、生じた荷電粒子を含む気体をプラズマと呼ぶ。
そう、セナは、この世界で初めて、プラズマを生じさせた世界初のエルフとなった。
「これはあれだな。どうするか・・・・・」
処理に困ったセナは、とりあえず上に放射した。
『風雷砲』とセナは完全オリジナルの魔法に名前をつけた。
アイナは、捌くもので『緋色金』を斬ろうとしたが、刃が通らなかった。
それは単に包丁のせいでもあるのだが、捌くものはなんのために捌くのか、その思いを強く持たなければ対象を斬ることはできない。
「はぁ、全く斬れない・・・・」
料理をするときは、みんなのため、何よりアルベルトのためにどれだけ硬い魔物の肌も骨も断ち切ってきた。
だが、緋色金に関しては全く斬れない。
ここで都合がいいことに、アイナは思い至った。
緋色金が採れる、それは世界最高の鉱石、そして素材になる、素材になるということは・・・・・
「アルのために・・・・・」
サクッと世界最硬の鉱石が一般的な包丁で斬られた。
そこからは、アイナの独壇場だった。
最硬など、もはやアイナの敵ではなくなった。
おそらく、どれだけ硬い防御力を持っていようが、アイナはアルのためになるのなら捌く事ができる。
もはや、アイナに斬れないものはない。
3人がそれぞれ成果を上げているとき、森に警報が鳴り響いた。
◆◆
「誰だ貴様ら!」
エルフの一人が、黒装束に向かって叫んだ。
「我らは、使徒様の使いだ。邪魔する者は殺す」
「なっ!・・・・・・ぎゃっ!!」
叫んだエルフが一瞬で斬られた。
「よくも貴様ら!」
大勢のエルフが、黒装束に向かっていった。
「闇魔法:影槍」
エルフの影から魔力でできた槍が飛び出し、エルフを突き刺した。
「「「「ぐああああああああ!!!」」」」
エルフは、死にはしなかったものの、手や足に穴を開けられた。
黒装束は、一人でエルフの警備隊を戦闘不能にした。
「な、なにが・・・・・目的・・・・だ」
「神の復活」
黒装束が、トドメを刺そうとしたとき、
「暴風魔法:テンペスト」
爆風が黒装束たちを襲った。
「なっ!」
黒装束は、大半が大木に叩きつけられ呻き声をあげていた。
「何者だ?」
唯一、この場に残った黒装束は、突然の上位魔法に驚いていた。
「私は・・・・・・ってあなたは」
セナは、黒装束を見て、驚いた顔をした。
フードが取れ、あらわになったその顔は・・・・・
「ジーナ学校長!?」
「・・・・・ちっ」
セナが相対した襲撃者の正体は王立学校の長で、王都最強の魔導士である、ジーナだった。
「なんで、あなたが・・・・・」
「くそっ、知り合いがいたか」
ジーナは、黒装束を脱ぎ捨て、セナと向かい合った。
「我々の目的のため、おまえには死んでもらう」
「あなたがなぜこんなことをしているのか知らないが、故郷を襲う者は誰であろうと許さん」
超越者一歩手前のエルフと王都最強の魔導士の戦いが始まった。
◆◆
「なんだ今の魔力は・・・・・・」
別働隊で森に入った黒装束は、一際魔力の集まる地点に行った。
「この魔力は、エルフの王族以上だな」
放ってはおけん。そういい、向かった先にいたのは・・・・
「幼女?」
なぜ幼女が・・・・・・
「なんじゃ?主は」
ラキナは、アイナに作ってもらった肉を食べながら黒装束に尋ねた。
「ん?」
こいつはちょうど良いな。アイナの練習台になりそうじゃ。
ラキナは、いまだに寝ているアリスの鼻の近くにソースで焼いた串焼きを近づけた。
「おい、起きろ」
「・・・・・んむぅ・・・・」
アリスは、目を擦りながら体を起こした。
「あむ・・・・・・・」
ラキナの差し出した串焼きを加え、食べ始めた。
「・・・・・・・だれ?」
見慣れない黒装束を見て寝ぼけながら尋ねた。
「おい小娘。死にたくないのなら、アインツベルンのエルフの居場所を吐け」
「アインツ・・・・ベルン?」
そこでようやく飲み込んだアリスは、ラキナに顔を向け
「だれ?この人」
「敵じゃ、敵」
「そう」
アリスは、立ち上がり剣を一振り。
「なっ!!??」
黒装束はあまりにも突然のことに反応できなかった。
しかし、剣は空をきり直接斬られることはなかったが、その風圧だけで、吹っ飛んでいった。
「なんだ、今のは!?」
ただの風圧で、こんなところにまで・・・・・。
黒装束の額に汗が滲み出る。
「だが、我が主人のため、神のため、必ず・・・・」
「アリスよ。さっきのあいつを相手に妾が教えたことをやってみろ」
「さっきので?」
もはや、相手の正体など気にしてはいなかった。
「わかった。やってみる」
アリスは、寝ている間も天元突破を使い体に馴染ませてきた。
スキルを解除し、使っていない状態で使っている状態を越えるため戦いに身を投じた。
「だれ!?」
アイナは突如感じた気配に振り返った。
「おや?確か王女様か〜?」
なんだよ、王族違いかよ。と黒装束が言ってのを聞いてアイナは彼らの目的を悟った。
「あなたたち、シルビア様を!?」
「お、知ってんのか。なら、ちょうどいいや、おまえに聞くことにするよ」
黒装束はアイナに襲いかかった。
アイナはなんでも斬れるが戦い方は知らない。
目を瞑り、顔を背けたが、何も来なかった。
「おい、だれだおまえ」
突然の乱入者に黒装束は苛立った。
「俺は、ガルムだ。依頼を遂行する」
アイナは、以前見たアルの協力者であるガルムを見て安心した。
「王女様。何ができる?」
ガルムは、こんなタイミングで出てきてカッコ悪いが、一人では荷が重いと察し、アイナに聞いた。
「なんでも斬れる」
ガルムは、目を開き驚いた。
「はっ、王女様のセリフじゃねぇな。だが・・・・・」
主人についていく女らしいぜ。
「なら、最後は頼みましたよ」
「ええ、任せなさい」
「おい、なに、勝った気でいやがる」
除け者にされていた感のあった黒装束はさらに苛立ちを隠せなくなりフードをとった。
アイナはその顔を見て
「ダイス?」
元クラスメイトで、あの日以来行方不明となっていた、勇者候補の兄、ダイス・ロンドの姿があった。
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