第6話 あの二人との再会

エルキアさんといったん別れ、精霊になる方法について悩んでいると、あの泉で会った二人の精霊に再会した。


「君たちは、確か・・・・・」

「うん!久しぶり〜!」

「ねぇねぇ、何してるの〜?」

相変わらず自由だな。


「エルキアさんに精霊になれって言われたんだけど・・・・・」

「エルキアに〜?」

「あの子が来てるの〜?」

あの子?最上位精霊をあの子って。


「ねぇ、君たちって・・・・「それでそれで?」・・・・」

くっ、会話が成り立たない。

「え、えーと、そもそもが分からないっていうか、精霊って魔素の塊って聞いてたから」

二人の精霊は、アルベルトの言葉を聞いて首を傾げていた。

いや、首がないから、そう見えるとしか言えないんだけど。


「まそのかたまり〜?」

「まそってなに〜?」

「え?」

精霊が魔素を知らない?

「え、魔素って知らない?空気中にあるやつなんだけど」

二人は、キョロキョロしてこう言った。


「周りは精霊の子達しかいないよ〜?」

「だね〜」

みんな自由だね〜っと笑い合っていた。

精霊しかいない?

じゃあ、魔素と思っていたのは精霊の子供?

なら魔法ってどうやって使ってるんだ?


これまでの常識は、大気中の魔素を体に取り込んで、魔力に変換し、魔法を発動する。

でも魔素が、精霊の子供だとしたら、今まで、精霊を取り込んでそれを介して魔法を発動する。

つまり、魔法を使っているのは、人間などの生物ではなく精霊だけ。

なら、精霊になるというのは、直接魔法を発動できるようにすること。


「精霊ってすごいね」

その言葉に、二人は激しく反応した。

「でしょでしょ!?」

「私たちってすごいんだよ〜!」

キャハハっと笑いながらアルベルトの頭の周りを回っていた。


「特別に教えてあげる〜」

「君で三人目だよ〜」

そう言って二人は、ヒントをくれた。


「「今の自分を知って、自分を捨てるんだよ〜」」



◆◆



「う〜・・・・・・」

「まだまだじゃの〜、アリスよ」

ラキナは腰に手を当て、仁王立ちしながらアリスを見下ろした。


「ほれ、切れかかっておるぞ」

ラキナは、常に天元突破をかけ続けることを条件に鍛えることを了承した。

「くっ、これきつっ」

「当たり前じゃ。常に肉体の限界を超え続けておるのじゃ。お主が成長すればするほどキツくなるのは必然じゃ」

ほれいくぞ、とアリスに攻撃を加えた。

「ちょ、待っ」

アリスはなんとか剣で受け止めたが、天元突破に体がついていけず、吹き飛ばされた。



セナは、精霊を呼び出し暴風魔法を完璧に扱えるようになるために、魔力を体に慣らしていた。

「これは、今までの魔法とは、規模が何もかも違う・・・・」

しかし、明らかな成長を感じていたセナは、初めて魔法が支えた子供の時のようにワクワクしていた。


一方、アイナは、シルビアに連れられ鉱山に来ていた。

「あの、ここは?」

「エルフの森唯一の鉱山なんですが、エルフの力では、硬すぎて削れないのです」

鉱山の壁には、透き通った紅い色をした石が埋まっていた。

「この石ってもしかして、緋色金?」

緋色金は、この世界で最も希少で最硬の好物として、鍛治士が人生で一度触れたら死んでもいいとも言う代物だ。

その鉱石が、そこらじゅうに埋まっている。

「よく知っていますね。これが斬れたらあなたのスキルは本物ですよ」

その言葉を聞き、アイナはアルベルトにもらった包丁を取り出した。




◆◆




「自分を知って、自分を捨てる?」

なんだそれ、拾ったものを捨てる感じ?

二人の精霊は、ヒントを残してどこかに飛んでいった。


「なんか、ますます分からなくなった気がするな〜」

自分を知るか・・・・・。

構成要素とかかな。肉とか骨とか。

とりあえず腰を落とし、体を精霊卿に慣らすため、目を瞑り集中してみた。


お、これは。

アルベルトの体の周りに精霊が集まりだした。

しかし、魔素と思っていた精霊たちは、アルベルトの中に入ってこなかった。

なんとなく入るところが見つからない感じだ。


アルベルトはさらに自身の体に集中して、背中の一部に入口を作る感じでやってみた。

お、おー!

精霊たちが入ってきた。アルベルトはどんどん入口を広げていき、ついには全身を開けた。


ドクンッ!!ドクンッ!!!


「な、これ、きつっ・・・・・」

アルベルトは、全身に開けた入口を閉じ、呼吸を急いだ。

全身から汗が吹き出し、呼吸は乱れ、魔力はうまく練る事ができなかった。


仰向けに倒れ、呼吸を整えていた。

「お疲れ様です。初日でそこまで行けるとは、さすがですね」

エルキアさんが戻ってきた。

「これをどうぞ」

「ありがとうございます・・・・」

エルキアさんから水をもらい一息ついた。



「どうやってその方法を?」

エルキアさんは、心底不思議そうに聞いてきた。

「あ〜、なんか二人の小さな精霊に聞いたんです」

「え?」

「知り合いですか?二人はエルキアさんのこと知ってるようでしたが」

「ま、まぁ、そんなところです」

まぁ、エルキアさんをあの子呼びするぐらいだ、知り合いじゃなきゃおかしいよな。


「今日はこの辺にしておきましょうか」

「え、帰れないんですか?」

毎回、門を潜って来れないのか?

「ええ、精霊卿は一度出るとそう簡単には入れません」

なんてこった。

アイナの料理が食べられないなんて・・・・・・。


「だ、大丈夫ですか?」

「はい・・・・・大丈・・・・・ぶです・・・・」

軽く絶望が限界突破しそうだった。


「で、では、こちらへどうぞ。しばらく過ごしていただく場所に案内しますので」

「はい・・・・・・」

アルベルトは、肩を落としながらついていった。



◆◆



アルベルトたちがそれぞれ鍛錬をしているとき、見つかることのないエルフの森の外に黒装束が数人いた。


「ほう、ここがエルフの森か」

「このようなところにあるとは」

「奴の力の一部がここに・・・・・」

前に控える3人が声を出した。


「おまえがここにいるってことは、あの二人は殺したのか?」

「ザックハードとエミリアか?」

「そうそう。あの分からず屋」


「ああ、たとえ生きていたとしてもあの傷では再起は不可能だ」

ペンダントで全快したことを知らない男は、そう述べた。


男が振り返り、後ろに控えていた者たちに対し、いくぞと言った。

「王族以外は殺せ」

黒装束の一人が、指示を出すと後ろに控えていた黒装束たちが一斉にエルフの森に侵入した。



結界に綻びが生じたことを察知した警備隊が警鐘を鳴らした。

「侵入者だ!!」

「戦えないものは奥に逃げろ!!」

「国を守れ!!シルビア様をお守りしろ!!」


黒装束とエルフの戦いが始まった。


黒装束のただ一つの失敗は、この場に覚醒勇者・黒龍・超越者手前のエルフ・なんでも捌くものが、いたということ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る