第5話 精霊卿
アルベルトが、エルフの一人に案内をされシルビアに会いに行っているとき。
アリスたちは、初めての女子会に話を咲かせていた。
「ねぇ、アリス」
「なに?」
アイナは、アリスの左手に輝く指輪を見ながら気になっていたことを聞いた。
「その指輪って・・・・」
「うん!アル君にもらった!」
アリスは、指輪を撫でながら、愛おしそうに撫でた。
「そ、そう」
こんな笑顔を向けられたら女の私でも落ちそう。
「じゃ、じゃあ、アルとアリスはその・・・・・」
「うん。実感はないけどね」
「なんじゃ、お主とアル坊は、番だったのか」
「番って・・・・」
言い方が・・・、とセナは口には出さなかったが違和感を感じた。
「しかし、そうだったのか」
「うん。あの祭りの日にね」
「平民にしては若いな」
貴族の婚約などをそれなりに見てきたセナは、そんな感想を抱いた。
「どうしてそんなことを?」
アリスは、戦闘のセンスは抜群だが、こういうところは鈍感だった。
「えっ、あ、その、あ、アリスは、その・・・・・・」
セナは、慌てふためくアイナを娘を見るような目で見守っている。
アイナは、深呼吸を何度かし、ついに思いを伝えた。
「その、アリスは、アルを好きな人が他にいたらどう思う?」
アイナは顔を俯かせながら聞いた。
「う〜ん。いいんじゃないかな〜」
「え、いいの!?」
アイナは、身を乗り出し喜んでいた。
セナは微笑み、ラキナは「女たらしは変わらんの〜」とアイナが作った料理を食べていた。
「うん。だってアル君優しいし、強いし、助けてくれるし・・・・・・・・」
アリスとアイナはアルベルトのいいところを言い合い、仲を深めた。
その後、アルベルトが帰ってきて、アイナとセナはスキルの進化を報告。
ご飯を食べて、眠りについた。
翌朝、やはりラキナは、アルベルトの顔にしがみついていた。
◆◆
「みなさん。改めましてようこそ」
シルビアさんに、全員で挨拶に行った。
「わぁ〜、師匠そっくり」
「師匠?」
「アリスは、エリスの弟子なんですよ」
アルベルトは、エリスとの関係を説明した。
「そうなんですね。それにしてもマモンを」
ありがとうございます、そう言って頭を下げた。
やはり、エルフとマモンは何か因縁があるのだろうか。
「マモンは、父と母の仇なんです」
「そうだったんですか」
それで、あんなに。
「まぁ、それは終わったことです。では早速、精霊卿へ案内します」
精霊卿か、やっぱり精霊がいっぱいいるのかな。
「シルビアよ。それは、アル坊だけか?」
「はい、ラキナ様。あそこには、彼にしか見えないものもありますので」
俺にしか見えないものか。あの遺跡や『英雄の真実』もそうだな。
「あの、その俺にしか見えないものが何個かあるのですが、どういうことなんですか?」
「それについては、私からは教えられません」
「精霊卿にヒントがあるぞ」
ラキナは、ヒントがあると言った。
「なら行くしかないですね」
アイナたちに待っててくれと言い、シルビアさんに案内を頼んだ。
「では、こちらへ」
促された方にあったのは、白いゲートのようなもの、今にも吸い込まれそうな感じだ。
「これが、入り口。この先に精霊卿があるんですね?」
「ええ、必ず帰ってきてくださいね」
「?・・・はい」
なんかいい方が気になるが、アルベルトは深くは聞かずにゲートへと足を踏み入れた。
「ご武運を」
◆◆
何度目だろうか、この世界はどうにも美しい場所が多い。
しかし、ここは、まさに理想郷。
そんな言葉がそのまま当てはまるような美しさがあった。
「すげぇ・・・・・」
「でしょ?」
不意に声が聞こえた。
振り返ると、そこには、精霊がいた。
姿形はあるが、サタナキアが召喚した精霊とは違い、神聖さが宿っていた。
「あなたは?」
「ふふ、私は、エルキア。精霊王直属の最上位精霊です」
最上位精霊、確か精霊王の一歩手前の精霊だったな。
「それで、懐かしい人の面影があるあなたは?」
「アルベルトです。その・・・懐かしい人っていうのはもしかして」
最近よく、その時代に生きた人たちから面影があると言われていたため、予想はしていた。
「マルスですよ。あの子にそっくりです」
やっぱり、まぁ、なんとなくわかってたけど。
「あの、マルスってどんな人だったんですか?」
そこまで似ているのなら聞いてみたい。
「それは、私の口からは言えません。約束ですので」
でも・・・・・
「一つだけ。彼はとても・・・・・・・」
エルキアは懐かしむように語った。
それはむしろ、前世の自分に似ている気がした。
「それで、俺はこれから何をしたらいいんですか?」
「そうですね〜。とりあえず、精霊になってください」
「・・・・・・・・・・はい?」
◆◆
「あのシルビア様、アルベルトは精霊卿で何を?」
アルベルトが精霊卿に入った後、セナが尋ねた。
「自分を知るために自分を捨てるんですよ」
それを聞いたアリスたちは、理解できなかった。
「ふふ、、帰ってきたら分かりますよ」
「それはそうと、ラキナ様。なぜ、あなたがこの方達と?」
シルビアの部屋でくつろいで、朝送られてきた串焼きを食べているラキナに尋ねた。
「暇つぶしじゃ」
「・・・・・そうですか。てっきり、昔のことを思い出したのかと」
ラキナは手を止めて
「・・・・・・かもな」
目を細めて呟いた。
「ねぇ、ラキナ”ちゃん”」
「”ちゃん”っておまえ・・・・・まぁ良いか。それで?」
いきなり”ちゃん”付で呼んだアリスに呆れながら伺った。
「私と戦って!」
「良いぞ。暇だからの」
「やった!」
じゃあ今からねと言ってアリスは、外に駆け出した。
「まったく。そんなところもそっくりじゃな・・・・」
ラキナもアリスに続いて外に出た。
一連のやりとりを見ていたアイナたちは、呆れたように扉の方を見ていた。
「アリスって肝が据わってますね」
「ほんと、尊敬するわ」
生きる伝説を”ちゃん”付で呼んだことはもちろん、戦ってくれと行ったことにはもっと驚いた。
ここにくる道中で、アルベルトと二人であんなにボコボコにされたばかりだというのに。
「私も鍛えるとするか」
セナも仇を倒すときに備えて、鍛えることにした。
「そうね。私もいろいろ試したいことあるし」
アイナも”捌くもの”がどこまでできるのか試しに外に出た。
部屋から出ていく彼らを見ていたシルビアは、
「世は巡りますね。ここまで、あの時と変わらないとは」
運命は信じるかと聞かれたら、否と答えるだろう。
しかし、今回に関しては、信じるほかない。
「マルスさん、あなたの望んだ世界は、近いかもしれません」
待っていてくださいね。そう言って、精霊卿への門を見つめた。
◆◆
「精霊になってください」
そう言われてから、しばらくたった。
「まったくわからん」
そもそも、精霊って、魔素の塊だろ?
なら魔素の塊になればいいんだけど、人間の体は、骨があり肉がある。
それを魔素に変えろと言われてもわかるわけがない。
どうしてもんか・・・・・。
「あれ〜?なんでここにいるの〜?」
「あ、久しぶりだね〜」
目の前に現れたのは、泉で出会った小さな精霊だった。
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