第4話 襲撃

〜ラキナがアルベルトたちの前に現れたと同時刻〜


「「・・・・・ッ!!」」

ある場所にいるザックハードとエミリアは突然の襲撃に殺気だった。

「おいっ、なんでテメェがここにいる!?」

ザックハードは、フードを深く被る襲撃者に対し激昂した。

「・・・・・・これが運命さだめだ」

「運命?何をふざけたことを・・・・・」

エミリアも怒りを隠しきれていなかった。


「テメェらはあの時、あいつを、あいつらを裏切った!」

「そうね。あなたたちは許されないわ」

二人は、目の前にいる裏切り者に対し、殺気を飛ばした。


「はは、超越化したのか。でも、僕には勝てないよ?」

彼は、フードを降ろしながら微笑んだ。

「おまえ・・・・・その顔はっ!!」

「・・・・・・なんで」

「懐かしいだろ?君たちが愛した男の顔さ」

さらに男は、笑いながら続けた。

「それにこの顔になってよくわかったよ。あの男の忘れ形見であり継承者」

「お前・・・・!」

「よく似てるよね。ほんと、殺したいぐらいに」

男は、王都で見たある少年の顔を思い出しながら言った。


「やらせねぇよ・・・・・二度と」

「ええ、行かせない」

ザックハードとエミリアは、持ちうる全ての力を出す決意をした。


「ふふ、止められるものなら止めてみろ」

3人の化け物たちが衝突した。



◆◆




「なんだこの状況は・・・・・・」

アルベルトは、いつものように寝袋の中に入って寝ていた。

しかし、目を開けるとそこは暗闇だった。

「え、なに?」

アルベルトは、手を動かし、あたりを探ることで暗闇の正体が判明した。

「ラキナ、なにしてんの?」

ラキナがアルベルトの頭にしがみついたまま寝ていたのだ。


「くそっ、なんて馬鹿力っ」

幼女の姿をしていても、天地開闢より生きる黒龍様だ。

寝ていてもそう簡単に退けることはできない。

腕の内側に魔力を外側に気を流し、なんとか引き剥がした。

「ふう。なんとか・・・・・」

ただ起きるためだけに魔力と気の同時発動という、やろうとしなかったことが出来た。


その後、ラキナ以外の3人が起き、ラキナの寝相に気をつけろと伝えた。

アイナが朝食を作り出した瞬間、ラキナは目覚め寝袋から出ていることを不思議がっていた。

「ん?なんでこんなところに?」

「おまえ・・・・・・・」


朝食を食べ、5人(一名は肩車)は歩き出した。

そしてついに・・・・・

「ようこそ、エルフの森へ」

セナが故郷へアルベルトたちを迎え入れた。

「やっと、ついた〜」

「うわぁ」

「綺麗ね」

「・・・・・・・」

約1名は頭に顔を乗せ寝ていたが、目の前に広がる神秘的な光景に感動した。

こんな綺麗な光景はあの泉以来だ。


「誰だ!なぜ人間がここにいる!?」

入り口で止まっていると中からエルフの戦士が弓や剣を持って警戒していた。

まぁ、そうなるわな。

エルフの森は基本的に見つかることがない。

そこに、人間が複数人くれば警戒もするだろう。


「ちょっと待って!私です。セナです」

セナが、一歩前に出て事情を話した。

「シルビア様に?」

「なぜシルビア様のことを・・・・・」

「それについては、これを」

セナは、警戒して声を上げたエルフに手紙を一通渡した。


そのエルフは、その手紙を読み目を見開いて、こちらを見た。

「まさか・・・・そこの少年が?」

なんだ?なんの手紙だ?

「いいだろう。エリス様からのお願いとあらば、入れないわけにはいかない」

さすが、王族。



◆◆



「シルビア様お客様をお連れしました」

エルフの一人に案内されアルベルトは一人巨木の上に建つ一際大きな家についた。

アリスたちは、先にセナの家に行き、休憩をしている。

「どうぞ」

中からエリスに似た声が返ってきた。

流石は姉妹だな。

「失礼しま〜す」

恐る恐る中に入るとエリスから戦いの中で身についた風格を取り除いたような女性がいた。


「・・・・・!?」

その女性、シルビアはアルベルトの顔を見て驚愕した。

「なんで、今・・・・・!!」

予言と違う・・・・・なんで・・・・いったいどこで・・・・。

「あ、あの〜」

ぶつぶつ言い出したシルビアさんに声をかけた。





「す、すみません。お見苦しいところを」

あの後しばらく戻ってこなかったシルビアさんは、顔を赤らめながら頭を下げた。

「あ、いえ、お構いなく」

あの姿を見ているのは少し面白かったので退屈はしなかった。


「ところでなぜこの森に?」

「はい。この本について教えていただきたく・・・・」

『英雄の真実』を出し、要件を伝えた。

「そうですか。もうその時ですか」

シルビアさんは、覚悟をみめたように口を開いた。


「その本にある内容は、私がマルスから伝えられたこと、私が直接見たことを記したものです。ですのでその中に書いてあることは事実です」

「では、この『本当の敵はマルスを裏切った神の使徒と神だ』ってのも・・・・」

神殺しの武器があり、ラキナの言った言葉、そしてこの本の作者の言葉で確信した。

それを持ってこれだけは聞いておきたい。

「あの、幸福の神フォルナ様は敵ですか?」

これだけは聞いておきたかった。

「それは・・・・・・・」




◆◆



「明日も、来ていただけますか?」

「何かあるんですか?」

今日だけで結構話したけど。

「はい。明日、精霊卿へつながる門を開こうかと思っています。本来はもう少し後にやる予定でしたが、あなたがきてくださったので」

精霊卿、本来そこでシルビアさんが待っている予定だったのだそうだ。

それが、なんの因果か、どこかで狂ったらしい。

「わかりました。では、明日」

「はい。ありがとうございました」




アルベルトが部屋を出た後シルビアは耽っていた。

「やはり似ていますね。あなたに・・・・・」

初めて愛した人間の男の面影を持つ少年に会い、思い出を振り返っていた。

「しかし、なぜ狂ったのでしょうか」

ラキナ様が来ていることも気になりますし、どこで運命の糸が・・・・・


「精霊卿には、彼の遺物がありますから、アルベルト君なら手にできるはず」

そしていつか

「いつか、あの裏切り者たちに天罰を・・・・・」

シルビアの怒りを含んだその言葉は誰にも聞かれることはなかった。



◆◆



「ふふ、もう終わりか?」

男は、目の前に倒れる二人を見て言った。

「・・・・・・・・くそっ」

「・・・・・・・・・・・」

一人は、腕が片方なく、もう一人もなんとか生きているような状態だった。


「全く、落ちたもんだな。あの男の顔は殴れねぇってか」

口調を荒げていう男に二人は、反応しなかった。

「もういい。しかし、ここが”約束の地”じゃないのか」

なら興味はない。そう言い残しその場を後にした。


倒れる二人の胸元でペンダントが光っていることに気づかずに



◆◆



「そうだ、アル」

「なに?」

晩御飯を食べている時、アイナが何かに反応しながら伝えてきた。

「回復魔法が進化して、さらに聖属性魔法を吸収して”神聖魔法”になったんだけど・・・」

「私も風属性魔法が”暴風魔法”になりました」

結構な衝撃だった。

「まじ?」

「「うん(はい)」」


早速、回復魔法を神聖魔法に切り替えこれまで設置した魔道具に組む込み、風属性を暴風魔法に切り替えた。


神聖魔法は、体の欠損、体力・精力の回復、死んだばかりなら死者蘇生まで同時に行える最強の魔法だった。

暴風魔法は、風が空気が存在する限り、その空気を操りありとあらゆる攻撃ができるそうで、使用者のイメージ次第らしい。


ほんと、俺の周りはすごいやつばかりだ。



◆◆



「・・・・・ん?」

「これは・・・・」

ザックハードとエミリアは、さっきまで死んでもおかしくない怪我を負っていたが、欠損は治り、体力まで何もかもが完全回復していた。


「これは、アルのペンダントか?」

「こんな魔法見たことがない」

二人は、見たことのない魔法に驚愕しながらアルベルトに感謝した。


「想定外の事態だったが、なんとか守り切ったな」

「ええ、あの子の”墓”だけは、何があっても守るわ」

あの時は、守れなかったから。




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