第3話 アイナの料理
黒龍こと幼女は、黒い外套を身に纏い襲いかかってきた。
「ちょっ、はや・・・・・!」
アルベルトは、反応速度には自信があったがほんの一瞬遅れた。
「はぁ!」
「むっ」
アリスの反応が早く、黒龍幼女に攻撃を放った。
黒龍幼女は、アリスの剣を右の
「なあ!?」
アリスは、予想外のことに驚きの声を上げながら宙を舞った。
アルベルトはその隙に居合を放ったが、アリスを投げてなお正面を向いている黒龍幼女は、体を捻り左手で止め、回し蹴りを放った。
「がっ!!」
炎竜の時とは比べ物にならない衝撃を頭に受けたアルベルトは意識を朦朧とさせながら地面を転がった。
なんだこの強さは、全く魔力の流れを感じなかった・・・・・。
ということは、純粋な身体能力ってことか。
なんとか意識を留め、刀を杖代わりに立ち上がった。
「ほう、その刀、神気を刈り取るのか」
なんでそのことを・・・・・
「まさか・・・・!!」
神の域に達してるのか、この幼女。
「天元突破!!」
アリスも本格的にやばいことを察知したのか、全力モードに入った。
アリスは、天元突破に加え、聖剣、神装と完全な本気だった。
「これは、なかなか・・・・・だが」
アリスが黒龍幼女の懐に入り、剣を振るうが、全て腕だけで対処されていた。
「なんだよそれ、あれは流石に・・・・・」
やばすぎるだろ。軽く絶望しながら、アリスに意識を向けている黒龍幼女の背後に周り、憤怒と強欲を使い、刀に魔力を最大限纏わせ居合を放つ。
「横雲!!」
キィィィィィィン!!!
およそ肉体に当たってなるような音ではなかった。
しかし、目には黒龍幼女に当たっているように見える。
「おお、二枚か。久しぶりじゃの〜」
二枚?何を言って・・・・・・・
「・・・・・・・!!」
よく見ると刀と黒龍幼女の間には、目には見えないほどの魔力の壁が、ありえないほどの強度で展開されていた。
アリスもアルベルトの攻撃は通ると思っていたのか、剣が止まっていた。
「アリス!避け・・・・・」
「遅い」
二人は、黒龍幼女に腕を取られ、同じ方向にぶん投げられた。
さらに宙を舞っている二人に黒龍幼女は、追撃を加え、二人は地面に叩きつけられた。
ズドォォォ・・・・・・・ン
二人は、初めて戦闘で気を失った。
「それなりだったな」
◆◆
離れたところで先頭を見ていたアイナとセナは黒龍幼女の正体に迫っていた。
「あの、アイナ」
「なに、セナ」
「あの黒龍はもしかして・・・・・」
「ええ、おそらく、マルス様の師匠であり育ての親として伝えられている『ラキナ様』ですね」
「やはり、それならばあの強さにも納得ですね」
目の前では、アルベルトとアリスが手も足も出ず軽くあしらわれていた。
そして、とうとう二人が地面に叩きつけられ、勝負がついた。
◆◆
「・・・・・・・ん?」
「やっと起きたか」
目が覚めたら幼女がいた。
あ、黒龍さんか。
隣で、寝ているアリスを起こし、幼女と向き合った。
「で、評価は?」
幼女は顎に手を当て頭を傾げた。
かわいいな。普通の幼女だったら愛でたいレベルだ。
「そうじゃな。お主は、自分の力を過信し過ぎじゃ。これまでは、大したことないやつを相手にしてきたのだろう。だが、これから先は、格が違うぞ?」
「過信・・・・・格か・・・・」
「私は?」
アリスが尋ねた。
「お主は、スキルに頼り過ぎじゃ。この小僧が目指す域にお主も入れ。先程の天元なんちゃら?を常の状態にしろ」
「スキルを使わずに天元を・・・・・・」
流石に無理があるだろうと思うが、アリスなら行けそうな気がする。
「まぁ、よかろう。それぞれ聞きたいことはあるかの?」
遺物のこととは別に教えてやろうと言われた。
山ほどあるんだけど・・・・・どうしようか。
「”龍”と”竜”の違いはなんだ?」
「そうだのう。妾のような”龍”は天地開闢の時より生きておるが、あやつら”竜”は魔素より生まれ、長い時を経て自我を持った奴らじゃ」
天地開闢か・・・・・いくつなんだ?この幼女。
スケールの大きい内容だったのでそれ以上は聞かなかった。
「お主はどうじゃ?」
黒龍幼女は、アリスに聞いた。
アリスはしばらく考えついに口を開いた。
「どうやったらあなたに勝てる?」
・・・・・・・・・。
戦闘狂みたいな質問だな。
「神の一人でも殺してから出直せ」
神ときたか。
「神?」
「そうだ。あのクソどもを倒してから出直せ」
◆◆
その後遺物のことを教えてもらい、エルフの森へ行こうとしたら、
「妾もついていくぞ」
「・・・・・・はい?」
え、なんで?
「じゃから、ついて・・・・「だからなんで?」・・・・」
「面白そうじゃからな」
「ええ〜」
「だめか?」
幼女は上目遣いで聞いてきた。
くそっ。
「だめか?」
「い、いいです」
アリスたちには、冷めた目で見られていた。
「ところで、名前は?」
アルベルトに肩車されている黒龍幼女に聞いた。
「ん?ラキナじゃ。そこの娘たちは知っていたようじゃぞ?」
ラキナは、アイナとセナを見た。
「え、そうなの?」
「まぁ、有名だから」
「『英雄物語』にも出てくるわね」
『英雄物語』か、読んだことないな。
「あ〜、あれか。やはり、変わってないのか・・・・・」
ラキナは、『英雄物語』という言葉にそんな反応をした。
「そういえば、ラキナは『英雄の真実』って本知ってる?」
「知らんな」
そう言ったラキナは悲しい目をしていた。
なんか知ってんなこれは、まぁ今はいいか。
「そう」
「いずれ全てが見えてくる。その時まで気長に旅をしろ」
全てか・・・・・。
なんか空気が重くなったな。
「あ、ラキナ、これ食うか?」
アルベルトは、ソース付きの串焼きを魔法で焼き渡した。
「な、なんじゃこれは!?」
ラキナは、涎を垂らしながら両手をワナワナしていた。
「おいっ、よだれ!」
「おっと、すまんな」
「それで食うか?」
「もちろんじゃ!」
ラキナは、串焼きを受け取り、貪り始めた。
「アルくん!私も食べたい!」
アリスもか。
アイナとセナも食べたそうにしていた。
「休憩にするか」
ラキナを降ろし、アイナに飯の準備をしてもらった。
今までちょくちょく襲ってきていた魔物はラキナがいるせいか全く来なくなった。
「なんじゃ、何をするんじゃ?」
串焼きを頬張りながらラキナが聞いてきた。
「ふふ、それよりうまい飯食いたくないか?」
「ゴクッ。・・・・・なんじゃと?」
黒龍の面影がないな・・・・・。
「アイナの料理は最高だぞ?」
「ふふ、よかろう。妾が見てやろう」
な、なんて上から目線・・・・。
アイナの料理をみんなで食べ終わった後、ラキナは口の周りに色々つけながら
「よかろう。お主らは、妾が最後まで見届けてやろう」
なんて安い黒龍なのだろう。
いや、違う。アイナの料理が素晴らしいのだ。神の域にいる存在さえも骨抜きにする。
「は、はぁ。ありがとうございます」
アイナは伝説の存在が自分の料理でそこまで宣言したことに少し引いていた。
「セナ、エルフの森まで後どれくらい?」
「そうですね。あと1日あれば着くかと」
まだ、そんなにかかるのか。
「なら、今日は早めに休むか、疲れたし・・・」
「ですね・・・・・」
4人は、ラキナの襲来で肉体的にも精神的にも疲れ切っていた。
「ん?飯か?飯じゃな!?」
原因である幼女だけが、テンションを上げていた。
アイナの料理で、5人とも英気を全回復させた。
そして、ラキナの寝相が悪過ぎて、アルベルトはなかなか寝付けなかった。
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