第22話 旅の準備
アリスとエリスの二人と模擬戦をすることになったアルベルトは自分の成長を明らかに感じていた。
超越者の先輩であるエリス、勇者であり超越者であるアリスその二人を同時に相手にしては、スキルを最大限使って戦わないといけないと思っていた。
しかし、現実は違った。
目の前には、アリスとエリスが片膝をついて剣を突き立てようやく立っていた。
それに対しアルベルトは、息は切らしているが両足でしっかり立っていた。
「ここまで・・・・・差がついているとは」
「アル・・・くん、強すぎ・・・・」
あの日から、戦闘でスキルを使わなかっただけでこんなにも。
アルベルトは、確かな成長に心が躍っていた。
「俺の勝ちだね」
2対1の模擬戦はアルベルトの勝利で幕を閉じた。
「全く何があったらそこまで・・・・」
エリスがあきれるように聞いてきた。
アルベルトは、ビシスという最強に会ったこと、ステイタスというシステムから抜け出すことが、本物の強さを得るためには必要だということ。
それを聞いたアリスは、
「ほぇ〜、なるほど」
何かを理解したようで、早速今日からやると意気込んでいた。
エリスの方は、
「なるほど、そういうことか。だから、あいつはあの時・・・・・」
何かぶつぶつ呟いていた。
模擬戦を見ていたセナは、口をパクパクさせ
「こんな馬鹿な・・・・・・、こんなエロガキが・・・・・こんな」
まだエロガキ認定は取り消されていなかった。
だがこれで、実力的な部分だけは信じてくれたと思う。
「セナさん、安心してくれました?」
笑顔で言うと、
「ひっ!・・・・あ、ああ・・・・・」
なんかものすごい怖がられたんだけど・・・・・
その後、騎士団の人たちとしばらく世間話をしたり、魔道具のお礼をされたりしていると、アイナ様が来た。
「あ、アル!今から時間ある?」
「アイナ様。ええ、ありますよ」
「なら、アリスと二人で両親に会いに来てくれない?」
ああ、この前言っていた、お礼のことか。
「はい。わかりました」
ふらふらのアリスを呼びアイナ様について行った。
セナは、エリスとしばらく話をしたいとのことでその場に残った。
「やぁ、よく来てくれたね」
国王アレクは、笑顔でそう言った。
「はぁ、それで今回は・・・・・」
ため息まじりにアルベルトは答えた。
「ははっ、君ぐらいだよ。私の前でため息をつくのは」
まぁ、それで良いんだけど、と少し嬉しそうに言った。
「それで、君たちを呼んだのは今回のお礼と渡したいものがあってね」
そう言って、一振りの剣と短剣を持ってきた。
「この剣は、ある遺跡から出てきたものでね、使い手がいなかったからこの際ね」
つまりは、在庫処分か。まぁ良いけど。
素材を使ってセナさんに剣でもあげるか。
「そしてこの短剣は、混沌の時代に作られたと言われるものでね、こっちも使い手が・・・・」
またかよ・・・・・。
まぁ、とりあえず見てみるか。
=バルムンク=
竜の遺跡から発掘された、竜殺しの剣。
素材にするとその力を引き継ぐ。
=神殺しの短剣=
神に傷をつけることができる力を持つ。
素材にするとその力を引き継ぐ。
ははぁん、これは最高だ!在庫処分ナイスだ!
竜殺しも神殺しも心が揺さぶられる!
帰ったら早速!
ふふ、ふふふふふ・・・・・・
「アル君?」
アリスに名前を呼ばれ現実に戻った。
おっと、いかんいかん。
「ああ、大丈夫だよ」
「そお?」
大丈夫だ。また別世界に飛ばされたらたまらん。
「大丈夫かい?アルベルト君」
陛下にまで心配された。王妃様はニコニコしている。
「ええ、大丈夫です」
「そうか。それと渡したいものなんだけど・・・・・」
陛下は一通の封筒を渡してきた。
「これは?」
「中身を読んでみてくれ」
中を開けると一枚だけ紙が入っていた。
「”約束の地にて眠る”?」
なんだこれは。約束の地?
「いつかわかるよ」
陛下は笑顔のままそれだけを言った。
まぁ、どっかで役に立つものなのだろう。
「ありがとうございます。ありがたく頂戴します」
「ああ。それで出立はいつになるんだ?」
「明日には出ようかと」
「そうか」
陛下は、アイナ様を見て頷いた。
「なら、こうして会うのはしばらくはないな」
「そうですね」
こちらとしては、王族と関わるのは不労の精神に反するので遠慮しときたいので、ありがたいぐらいだ。
「では、失礼しました」
その後、改めてお礼を言われた後、部屋を出ようとした時、王妃様から
「よろしくね」
そう言われた。
「?・・・・・はい」
何がよろしくなのかわからず返事だけして部屋を後にした。
エリスと話しているセナさんを呼びに行き明日出ることを伝えた。
今日じゃないのかと言われたが、やりたいことがあると伝えたらあっさり了承された。
セナさんの分の宿を取り、新しい武器を作るために魔素の綺麗な泉に来ていた。
「アリス。武器を作る前にこれを持って欲しいんだけど」
アリスに、サタナキアを倒した洞窟で見つけた”太古の英雄の剣”を渡した。
「何?この剣・・・・」
アリスが触った瞬間剣が輝き出し、光が収まったあとアリスの手には、真っ白な剣が収まっていた。
これはまるで、
「エクスカリバー?」
前世の世界の伝説で出てくるエクスカリバーみたいだ。
「これ、すごい馴染むよ、アル君!」
やはり勇者であるアリスだったか。
「あげるよそれ」
「え、いいの!?」
「うん。多分俺もセナさんも使えないし」
もともとあげるつもりだったので素材にする予定は今のところない。
=英霊剣=
英霊の力を宿す者にのみ使用可能。
破壊不可。持ち主に合わせ成長する。
これなんだから、素材にはできない。
もうすでに完成形だし、成長武器だし。
「セナさんは細剣で良かったよね?」
「ああ、だが持ってるのか?」
「いや、今から作るよ」
「作る?まさか、魔道具を作れるのか!?」
「まぁ、そうだね」
「・・・・・・エリス様の言っていた通りだな」
え、何を言ったのエリスは?
「お前は常識がないと言っていた」
ああ、それはなんとなく自覚がある。
とりあえず自動経験値と神速の魔弾、空間断絶を設置した腕輪を渡した。
「じゃあ、武器を作るから、手を握ってくれない?」
「・・・・・は?」
なんで、そんなことを・・・・・?みたいな顔を向けてきた。
「えっと、セナさんに合わせた武器を作りたいから、セナさんが思う最高の武器をイメージしながら、魔力を流して欲しいんだ」
「そう言うことか・・・・・」
なんか、変な誤解をされそうだったな。エロガキ引きずってんのか?
「じゃ、作るよ」
先程もらったバルムンクとセナさんがもともと使っていた細剣、ありったけの魔力を使い、セナさんのイメージ通りの武器ができていった。
「よしっ、完成っと」
=魔剣グラム=
バルムンクに魔力が加わり、魔剣となった。
竜殺しの剣。破壊不可。
はい、これ。とセナさんに渡すと、心底驚いた顔をして、しばらく感触を確かめていた。
「それ、竜殺しの剣だから相当強いと思いますよ」
「・・・・・・・!?」
竜殺しと聞いて、セナさんが詰め寄った。
「それはまことか!?」
「ええ、本当ですが・・・・」
するとセナさんは、見事な土下座を決めた。
この世界にも土下座はあったのか・・・・・。
普通の体勢に戻り、事情を聞くと、仇は竜の悪魔なのだそうだ。
なんだこの都合のいい展開は・・・・・。
まぁいい。敵討ちに役立つなら。
その後、敬語をやめてくれと言われ、普通に接するように頼まれた。
ここまでしてもらって、敬語は使われたくないらしい。
そっちの方が楽だから、そう言ってもらえるとありがたい。
「アル君は、武器作らないの?」
「まだいいかな。素材をもう少し集めてからで」
ん?
待てよ?
武器同士ができるならあとで素材も付け足せるよな。
「いや、作ろうかな」
「素材はいいの?」
「うん。あ、そうだ。ベリアルの核もらっていい?」
その名を聞いてセナは口をぽかんと開けていた。
「ベリアル?あ〜、いいよ」
どうやら、アリスは倒した時の記憶がないらしい。
まぁ、倒したんだからいいか。
よしっ、最高の刀を作ってやる!
「まずは、炎竜の魔石・・・・」
「ちょっと待て、炎竜?」
セナにいきなり止められた。
「あ〜、王都にくる途中で倒しまして」
「・・・・・・そうか。もう驚かんぞ・・・・・」
セナは諦めた顔をして黙って見ていると言った。
「次は、サタナキアの核、マモンの核、ベリアルの核、さっきもらった太古の魔石と短剣と木刀」
いま手元にある中で最高の素材。これは楽しみだ。
アルベルトは素材を並べると自身の無尽蔵の魔力、この場にある綺麗な魔素、それらを素材に注ぎ込み刀の形をイメージする。
〜30分後〜
「あ〜、やっと終わった〜!」
アルベルトの手元には、鍔のない黒い刀身をもち、紅い波紋を持っていた。
=天之尾羽張=
神殺しの効果を持つ神刀。
破壊不可。神気回収。
『神気回収』 神に傷をつけるたびに神の神気を吸い取り、神から引きずり落とす
なんだこの物騒極まりないのは。
たとえ神と戦うことになっても、フォルナ様とは戦わないでおこう。
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