第21話 エルギス家へ

祭りを楽しみ、指輪を渡した後、王都に戻り宿に泊まった。

復旧作業は、明日から行われるそうで、家が倒壊した人たちは、ギルドや商会で寝泊まりするそうだ。

こういうところが、前世にいた国と違ってなんか良い。


翌日


アルベルトはエルギス家へと向かっていた。

アリスは、早速エリスと模擬戦をすると言って王城に向かった。

やはり、戦闘卿なのか・・・・・。


「ここか。でかいな・・・・」

屋敷を一眼見て感想を言ったが

「・・・・・エロガキ」

ん?

声のした方を見ると敷地内にいた女騎士が胸を押さえながら冷めた目を向けていた。

「え、いやいやいや、そんなんじゃっ・・・・・」

慌てて手を振って誤解を解こうとした。

いや、確かにでかいけども!

まだ、冷めた目で見てくる女騎士に事情を説明した。


「なるほど。それで・・・・・」

納得はしてくれたが、まだあの目を向けていた。

「そ、そうです。だから・・・・」

「わかった。案内しよう」

女騎士は剣を携えてアルベルトを案内した。

主人に剣を向けようとすれば即斬れるようにらしい。

アルベルトには、勝てはしないがそんなことを知らない女騎士は常に警戒をしながら案内をしてくれた。


「ここだ」

女騎士は扉の前に立ち

「ハント様、アルベルト殿を案内して参りました」

「入れ」

中から威厳のある声が聞こえてきた。

女騎士が扉を開け中に入れてくれた。

「セナか。ご苦労」

女騎士ことセナは一礼してその場を後にした。


「よくきてくれた、アルベルト君」

ハントは、アルベルトに孫を見るような笑顔を向けた。

「いえ、何もすることがなかったので」

「そうか」

「それで、今日はどのような・・・・」

「これを君に渡そうと思ってな」

そう言って、ハントは一つの包みを持ってきた。


「これは?」

「魔石だ」

魔石?全く魔素を感じないが・・・・・

「魔素を感じないか?」

考えていることがバレたのかそんなことを聞いてきた。

「はい。これは一体・・・・」

魔石はそれだけ小さな物でも魔素は感じる。だがこれは・・・・

「それはな、ある太古の魔物の魔石だ。魔素を感じないのはその包みが封印してあるからだ」

「太古の!?」

それはすごい!良い素材に・・・・・


「これをくれるのですか?」

「ああ、持っていても何もできないからな」

そういうことなら遠慮なくもらっておこう。太古の魔物はまだ倒せそうにないからな・・・・・

あれは、恐ろしかった。

魔石をアイテムボックスに入れてハントに顔を向けた。

「これだけじゃないでしょう?」

「・・・・そうだ」

やっぱり、これだけならわざわざ呼び出さなくてもいい。


「実はな・・・・・」

ハントは、今日の本題を話し始めた。

「なるほど、それは本人には?」

「まだ伝えておらん」

「そうですか。まぁ私は良いですけど・・・・・」

「そうか。そう言ってもらえるとありがたい」

簡単に言うとセナの仇である八柱の一人を倒して欲しいそうだ。

それもセナとともに。

つまり、旅に同行させてくれとのことだ。


しばらくするとセナが部屋に入ってきた。

「お呼びですか、ハント様」

「ああ、見つけたぞセナ」

「?」

いきなりそんなこと言ってもわからないだろ・・・・・


「何をですか?」

「お前の仇を討てるやつを」

セナは、その言葉を聞き体をピクつかせた。

「・・・・・・誰ですか?」

「此奴だ」

そう言ってハントはアルベルトを見た。

「この子供が?」

冗談はよせとでも言っているかのような顔をしてアルベルトを見る。

「お手伝いしますよ。セナさん」

「安心しろ。此奴はすでに八柱を単独で倒しておる」

「!?」

ふふふ、驚いたか。エロガキは強いんだぞ?


「信じられません・・・・」

「大丈夫だ、陛下も認めておる」

「陛下が?」

セナはいまだに疑いの目を向けてくるが、陛下の名前を聞き少しは信じてくれた。

「それでだ、セナよ」

「はい」

「此奴についていかんか?」

「はい?」

そりゃそうなるだろうな。


「いや何、此奴ともう一人の娘がな旅に出るらしいからそれについていかんかと」

「私に出て行けと?」

セナさんが泣きそうな顔になっている。

「そうではない。あくまで仇を討つまでじゃ」

そのあとは、戻ってくるもよし、好きにして構わん。

そう伝えると、納得したのか

「わかりました。そう言うことであれば」

とついていくことに了承した。


しかし、準備をするため部屋を出ていく際に

「これは、私の敵討のため、ハント様の助言に従ったまで、お前との関係はそれまでだ」

と言い去っていった。


「すまんな」

ハントは申し訳なさそうに頭を下げた。

「いえ、彼女に何があったのですか?」

「詳しいことは聞いておらんが、幼い頃に目の前で両親や幼馴染を殺されたらしくての」

「よく助かりましたね」

「ああ、たまたま近くに滞在していたエルギス家の騎士が間に合っての、なんとかあの子だけは助かったのだ」

「なるほど」

それで、エルギス家に仕えているのか。


その後、あとはよろしく頼むと丸投げされ屋敷の外で待っているとセナが出てきた。

「待たせてすまんな」

騎士の鎧は置いて軽装にしたのか、普通に美人だ。

それに・・・・・

「エルフだったんですね」

エリスと同じく耳が長かった。

「そうだ。それで、これからどこにいくんだ?」

えらく淡白だな。そんなに信用されてないのか?

まぁ、第一印象がエロガキだもんな〜。


「では、もう一人紹介したい人がいるので王城に行きましょう」

行き先を伝え二人は無言のまま王城に向かった。




王城に着くと、アリスが気づいたのか迎えてくれた。

「おい、こんな簡単に入って良いのか?」

アルベルトは、顔パスで王城に入っていた。

「まぁ、いろいろありまして・・・・・」

「ねぇ、アル君。この人誰?」

アリスは、初めて見るセナさんを見て聞いてきた。

「ああ、この人は・・・・・」

「ん、セナじゃないか?」

説明する前にエリスが反応した。

知り合いか?


「え、エリス様!お久しぶりです!」

セナはものすごい勢いで膝をつき、エリスに敬意を示した。

「え、師匠の知り合い?」

「ああ、同胞なのでな。昔から知っている」

「そうだったんだ」

セナは、アリスの師匠発言から始まり、アルベルトの軽い感じの会話を見て、怪訝な顔をしていた。


「あの、エリス様。この二人とはどういう・・・・・」

「ああ、アリスは私の弟子で、アルベルトは後輩で恩人だ」

後輩はわかるが恩人というのはよくわからない。

「あのエリス、恩人って何?」

「マモンとは因縁があってな、それを断ち切ってくれた恩人だ」

そういうこと。

まぁ、あれは大罪能力欲しさにやっただけだし、恩を感じられるほどでもなかった。


「はぁ、そうですか・・・・・」

セナは盛りだくさんの情報について行けてない感じだった。

「まぁ、とりあえず紹介が終わったから・・・・・」

アルベルトは、アリスにセナが敵討のため途中ついてくることを話すと普通に了承してくれた。

師匠の知り合いだからという理由で。

「よろしく頼む」

「うん。よろしく!」

よかった。なんとかやって行けそうだ。


「ねぇ、アル君。模擬戦しない?」

「お、いいね」

ちょうどよかった、セナさんに安心してもらうにはそれが一番だ。

「アリス、私も参加するぞ」

エリスが入ってきた。

「師匠もアル君と模擬戦するの?」

「間違いではないが・・・・お前と共にアルベルトと戦う」

「え、なんで?」

急な2対1宣言。

「おそらく、アルベルトは超越化したアリスや私と戦っても簡単に勝てる」

そんなことは・・・・・・ないかも?

「いいな?アルベルト」

「まぁ、良いですけど」

アリスを見ると少し不満そうだが今回だけだと許してくれた。



◆セナ視点◆



いつものように屋敷の見回りをしていると、門の前に立っていた少年が

「でかいな」と少し上を見ながら言っていた。

目線的に私の胸の位置を見ているかのように見えたので、胸を庇いながら

「エロガキ」

と言った。


しかし、その少年は屋敷を見て言ったと誤解を解いてきた。

そして、この屋敷に来た理由も伝えてきた。

どうやらハント様に来るように言われてきたようだ。

屋敷の人間に確認を取りに行かせ、嘘ではなかったため剣を持ち案内をした。


部屋に入るとハント様は孫のマイナ様に向けるような顔をこの少年に向けていた。

そして、部屋を後にし、しばらくしているとまた部屋に呼ばれた。

部屋には、ハント様とあの少年がいた。

少年はアルベルトというらしい。


要件を伺うとこの少年についていかんかとハント様に言われた。

なんのことだろうか。街の案内だろうか。

詳しいことを伺うと、敵討ちができる人を見つけたと、そしてそれがこの少年だということだ。

馬鹿を言うな、と口から出そうになった。

奴はこんな少年に倒せるようなやつではない。

それが可能ならあの時・・・・・


しかし、この少年は奴と同じ八柱を一人で倒しているらしい。

信じられなかった。

だが、陛下も認めていると言われたのでは、信じるしかない。

この国とエルフの国は300年前から固く結びついている。

嘘はつけない。


仇が見つかった時に共に戦うぐらいだろうと思っていたが、どうやら旅について行けとのことらしい。

恩人であるハント様からそう言われ、泣きそうになった。

まさか、そのまま捨てられ・・・・・


そんな心配する必要はなく敵討した後は戻ってきても良いらしい。

ならよかった。

ということで私はこの少年についていくことにした。

あくまでもハント様の助言に従ってと言って。


準備を終え屋敷を出るとアルベルトは待っていた。

アルベルトは、私の耳を見てエルフだったのかと言ってきた。

私は淡白に答えこの後の予定を聞いた。


アルベルトとともに王城に着くと衛兵を素通りしそのまま中に入った。

え、そんな簡単に?

この子は一体・・・・・


しばらく歩くと少女がこちらに走ってきた。

アリスというらしい。

私を紹介しようとしていると、奥からあのエリス様が歩いてきた。

アインツベルンはエルフにとって最上の尊い名前であるためその場に膝をついた。


緊張していると、この二人はエリス様と砕けた口調で話していた。

あまりのことに戸惑っているとエリス様は、関係性を教えてくださった。

話について行けない状態でいると、三人は模擬戦をすると話しており、さらにアルベルト一人にエリス様とアリスという二人で戦うらしい。

それに超越者という言葉が聞こえてきたが、気にしないことにした。


そして、この後とんでもないものを目にすることになった。


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