第20話 祭りと動き出す時代
アリスの超越化後のとんでもないステイタスを見て、何かを諦めたアルベルトは、アリスとともにアルカを誘い祭りに出かけた。
しかし、『天人』か。やはりアリスは真の天使だったか・・・・・。
「でも、みんな無事でよかったね」
アルカが三人の無事を祝った。
「だな」
アルベルトは、八柱とか呼ばれる悪魔のところに飛ばされたり、混沌の大地とかに行ったり、散々な1日だったが、なんとか生きて帰ってきた。
「うん、無事でよかった」
この中では、一番被害にあったアリスは事情を知らないアルカを前に無事を祝うことだけした。
「よしっ、今日はとことん楽しむぞ、みんな!」
アルベルトは、働きすぎたため、遊べるとあってはしゃいでいた。
「うん!」
アリスも満面の笑みで答えた。
「で、でも・・・・お金は?」
アルカが窺うように聞いてきた。
「ふっ、心配するな。何もしなくてもお金は入り続けてるからな」
商会がなくなっては稼ぎどころがなるため商会周辺に空間断絶を設置し、悪意ある物を全て弾くようにしていた。
そのため、商会は避難所となり、そのおかげで取引先が増え、魔石の販売先も増えた。
よって、アルベルトの不労所得も大幅に増えていた。
不労のために、なんでもする超越者がここにはいた。
「そ、そう。なら遠慮なく楽しもうかな」
ね、アリスちゃんっ。と二人は先を急いだ。
二人の後ろ姿を見てアルベルトは、
「ああ、これだ」と思った。
「ねぇねぇ、これ食べたい!」
アリスは見たことのない食べ物を片っ端から食べていた。
確かに村にはなかったが、前世で何回も見たため驚きはあまりなかった。
「ねぇ、おじさん」
前世でいう”鳥くし”を売っている屋台の店主に尋ねた。
「なんだ、坊主?」
「これってたれとかないの?」
この世界で売られている串焼きは塩味だけだった。
「たれ?」
「うん、ソースみたいな」
「ああ、あるぞ?」
店主は、奥から少量のソースを持ってきた。
「アル君これをどうするの?」
隣で、串焼きに夢中になっていたが食べ終わったのか会話に入ってきた。
ちなみにアルカは、射的などのゲームに夢中になっている。
「これは、お肉につけて食べるんだよ」
「これにつけるの?」
アリスは、串焼きを買いソースをつけて食べた。
「・・・・・・!!!」
アリスは一瞬で顔が緩んだ。
「お、美味しい!」
「だろ?」
そうだろ、これがソースの力だよアリス。
だがこの世界の屋台はソースの使い方が勿体無い。
「ねぇ、おじさん」
「ん?」
「これさ、焼く前の肉につけて焼いてみて」
「なんでだ?」
おいおい、ほんとうに知らないのかよ。
「いいから。今まで以上に美味しくなるから」
「本当かよ?」
子供の言うことだからか信じていなかったが、何度も説得してやっとのことで実践してくれた。
店主が疑いながら焼き始め、しばらくするとソースが程よく焦げ、香りが広がった。
「ああ、いい匂いだ・・・・!」
これだよ、これ。こう言うのが好きなんだ!
アリスを見ると、同じように顔を緩めていた。
「おいおい、これはなんだ・・・・!!」
店主も焼きながら、匂いにやられたのだろう。
ゴクッと、喉が鳴っていた。
そしてついに、
「焼けたぞ、坊主」
店主は、アルベルトとアリス、そして自分の分を焼き同時に頬張った。
「「「う、うめぇ(うまい)!!」」」
三人一緒に感想を叫んだ。
「なんだこれ!すげぇうめぇぞ、坊主!」
「でしょ?だから言ったんですよ!」
「ねぇ、おじさんもっと、もっと焼いて!!」
アリスの言葉を聞き、店主は残っている串肉全てにソースを付け焼き始めた。
すると、この屋台から祭りの会場全てに香ばしい香りが広がり、瞬く間に人が押し寄せた。
「おい、坊主」
「何?おじさん」
彼は、黙って手を差し出した。
アルベルトも無言で応じ、二人は握手を交わした。
その後、この焼き方は世界中に広がり『アル焼き』という恥ずかしい名前で広まることになる。
この時の店主は、創始者として串焼き会の先駆者として名を轟かせることになる。
おじさんと感動的な握手を交わした後、アルカと合流した時、アルベルトは驚愕した。
「お、おいアルカ。それどうした?」
アルカの両手には大量の景品が載っていた。
「え、全部とったんだよ」
なんとアルカには屋台荒らしの才能が・・・・・。
その才能に戦慄したアルベルトは、アイテムボックスを作ってあげた。
手が空いたアルカは、また戦場へと駆け出した。
これから犠牲になる屋台に両手を合わせたアルベルトは串焼きを頬張っているアリスを誘い、あの泉へ来ていた。
「綺麗だね〜」
アリスは、初めてみた時のアルベルトのように感動していた。
「アリス、これを」
アルベルトは、目の前で新たに
「え、これって」
「まぁ、その、これから世界中を旅するから早めにその・・・・・」
この世界は、十五歳で成人なため、貴族とかは早めに決める。
「その・・・・これからもよろしくアリス」
「うん!こちらこそ!」
二人を祝福するように月明かりが泉を照らしていた。
そんな二人を木の影から見ているものがいた。
「ふふ、あの時みたいだね〜」
「そうだね〜」
その存在は、二人を祝福するように木々を揺らした。
◆◆
「ふふふ、全く使えない人間でしたな」
「まぁそういうな。四騎士の一人が倒されたとはいえ、まだ駒は残っている」
二人は、王都を見下ろしながら話していた。
「だが、彼が次に行くとしたらエルフの森。あそこには・・・・」
「ああ、精霊卿がある」
泉で向かい合う二人を見てそう言った。
「時代が動きますな」
「だな。300年前から止まっていた歴史が、時代が動く」
そろそろ我々も動くかと言って飛んでいった。
そんな二人を見ているものがいた。
「はぁ、動き出したか・・・・・」
めんどくせぇことになりやがった。
彼は、後ろに控えていたフードを被った者に言伝を託し
「待ってろよ。クソ野郎ども」
と天を見上げそう言った。
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