第16話 王都動乱①
王都で戦いが始まった時、アルベルトとアイナは広大な荒野に立っていた。
「えーっと、まじでどこ?」
「ここって・・・・・」
「え、アイナ様知ってるんですか?」
何か考え込むようなアイナ様は何か思い当たる縁があるようだ。
「うん、確か『混沌の大地』って呼ばれてるところで・・・・」
「なんですか、その物騒な名前」
混沌ってなんだよ。物騒にも程がある。
「うん。ここは、混沌の時代に英雄たちが最初に集まったところで、同時に『英雄物語』最後の舞台なの」
「・・・・・ってことは」
「うん。ここにいる魔物は太古の魔物ばかり。つまり混沌の時代を生き延びた魔物が・・・・」
「じゃ、じゃあ、今こっちに向かってきてる大軍は?」
アルベルトの視線の先には、土煙を上げながら大量の魔物が向かってきていた。
「・・・・・・そういうこと」
「・・・・・はぁ」
やばいやばいやばい。アルベルトはアイナ様を抱え全力で走った。
なんだあいつら、炎竜やサタナキアなんて相手にならないような化け物ばかりじゃねぇか!!
アルベルトは初めて、魔物から全力で逃げた。
◆◆
エリスは、マモンと激戦を繰り返していた。
「はぁはぁ、くそっ・・・・」
「おや〜どうしました?」
エリスは、全力で斬りかかっていたが、マモンは普通についてきた。
「貴様・・・・あの時より・・・」
「ええ、そうですよ〜。私も超越化を果たし『大罪能力』をあの方から頂きましてね」
「大罪能力・・・・?」
確か、アルベルトも大罪を持ってたな。
「ええ、時間をあげますから、私を視てみては?」
「・・・・・・・・」
エリスは、マモンを言われるがままに視た。
なんだこれは・・・・・
『名前』 マモン
『種族』悪魔 『性別』女 『年齢』ー
『レベル』ー
『能力』S
『称号』 八柱 超越者 大罪保有者
『ユニークスキル』
天軍召喚 強欲 全属性魔法
『原初』
黄金讃歌
『加護』
・・・・の加護
『強欲』 大罪能力の一つ。戦う相手の力を少しずつ奪う。
『黄金讃歌』 物質を黄金に変え、あらゆる物質の上位にする。
「なんだこれは・・・・・」
能力はもちろんやばいが、一番気になったのは、
「お前、女だったのか・・・・・」
エイルはずっと男だと思っていたがまさか女だったとは。
「そうですよ〜。みなさん間違えるんですよね〜」
ケラケラと笑うマモンを前にエリスは一番厄介な能力を見て、顔を顰めていた。
「強欲か・・・・・なるほどな」
いつも以上に戦いづらく、あの時以上に強く感じるのは、強欲のせいか。
だが、大罪能力者は、他の能力者を見つけやすくなるんだったな、ならアルベルト・・・・・
いや、あいつに頼ってはだめだ!ここで、負けたらこの国は・・・・
「もういいですか〜?」
「・・・・はは、来いよ。
その言葉に、マモンは青筋を浮かべ
「その威勢が続くと良いな、クソガキ」
再び戦いが始まった。
◆◆
「ったく、こんなもんか」
「・・・・・・・」
アリスは、ベリアルを前に手も足も出ず満身創痍だった。
「ふむ、それか、ずっと俺に魔弾を当ててくるのは」
ベリアルは、アリスが首からかけているペンダントを引きちぎり砕いた。
「・・・・・・!!」
アリスは、アルベルトからもらったペンダントが目の前で破壊され目を見開いた。
「お、そんなに大事なものだったのか?」
ベリアルは、ペンダントの破片を放り投げながら言った。
その時・・・・・
ベリアルの額に一筋の水が垂れてきた。
「ん?」
これは、汗か?
なんで汗なん・・・・・か・・・・。
アリスを見て、生まれて初めて恐怖というものを覚えた。
「なんだ、その姿は・・・・!!」
アリスの赤い髪は白く染まり、赤い目も白に、そして何より魔力の質が変わっていた。
「お前、その姿はあの女の・・・・!!」
ベリアルは、その姿に見覚えがあった。
300年前、あのマルスと
歴史の影に葬られた、語られることのなかった英雄『イリア』の姿そのものだった。
「お前、一体・・・・・っ!!」
その瞬間ベリアルの右腕がなくなっていた。
「・・・・くそっ」
反撃しようと、アリスに視線を向けるが、姿はなく首筋に冷たいものを感じた。
「なんなんだ一体、何が起こってやがる・・・・!!」
ベリアルは、首を落とされ核だけになった。
アリスは、そのままアルベルトにもらったアイテムボックスに入れ
「あとは、頼んだわよ」
と言って、その場に倒れた。
◆◆
王城内では。
「おいっ、国民の避難は完了したか!?」
「はっ、確認できている限り、ほぼ完了しました!」
騎士やメイドたちが王城にある避難所に避難してきた国民を支援していた。
その中で一人、静かに王のいる間に向かっているものがいた。
「誰だ・・・・?」
王が尋ねる。
「ガルムと申します。アルベルトに頼まれていたものをお届けに参りました」
「アルベルトに?」
ガルムは、そのまま王に近づき一枚の書簡を渡した。
王は、それを受け取り中身を見た。
「なっ、これは・・・・!」
王は中身を見て、手を振るわせた。
「こんなことが・・・・・!!」
「どうやってこれを?」
しばらくして落ち着いた王はガルムに聞いた。
「私は、以前”死神”という通り名の暗殺者をしてまして・・・・」
「死神!?どうして、アルベルトに」
「彼に手も足も出ず負けまして・・・・」
それを聞き王は、手を額にあてため息をついた。
「では、これは事実なのだな?」
「はい。全て事実です」
そうか。そう言って王は、紙に何かを書き騎士を一人呼び出した。
「これをブライトリヒ家へ」
「はっ!」
騎士は敬礼し、すぐに向かった。
「では、私も・・・・・!!」
「どうした?」
言葉を詰まらせたガルムに尋ねた。
「すみません。すぐに向かわなくてはならないところができたのでこれで」
「ああ、助かった。アルベルトによろしくな」
ガルムは返事をすることなく、その場から姿を消した。
「間に合うか・・・!」
ガルムは、アルベルトが渡したアリスのペンダントの反応が消えたのを感じ、何かあったのだとアリスのいる場所に向かった。
◆◆
私は、ユリス・ロンド。勇者候補に選ばれた、普通の女の子です。
今、私の目の前には、魔物と魔族がたくさんいます。
勇者候補ですが、私は、戦闘が得意ではありません。
「勇者様!」
「勇者様万歳!」
しかし、私の後ろでは、貴族やその護衛が私を鼓舞するような声をあげています。
(はぁ、なんでこんなことに・・・・・)
今代の勇者候補の一人は、とても臆病な普通の女の子だった。
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