第17話 王都動乱②

ガルムは、アリスの元に向かって全力疾走していた。

「間に合ってくれ・・・!」

新たな主人の最初で最後の、お願いではなく


”いいか、ガルム。アリスを守れ。絶対感づかれるなよ、あのペンダントには、破壊されると俺のペンダントと、お前に渡した腕輪に繋いでいる魔力のリンクが切れるようになってる”

”それが切れたら、やばいってことか?”

”ああ、あれは、よほどのことがない限り破壊されない”

”そうか。俺の全霊をかけてアリス嬢を守ろう”


森の中を駆け抜けリンクが切れた反応を示した近くまでやってきた。

「見つけたっ・・・・・!」

ガルムは、アリスの姿を見た瞬間全身の毛穴から汗が噴き出る感覚がした。

なんだ、あれは・・・!!

白髪に白い眼、アリスと戦っているやつも大概だが、それ以上に一人の少女が放つ殺気が半端ではなかった。


「おいおい、守る必要あんのかよ・・・・」

どう見ても守る必要はなさそうだが・・・・・。

彼女は、倒したやつから出てきた核をどこかにしまうと

「あとは頼んだわよ」

と言って、倒れた。


「バレてたのかよ・・・・自信無くすぜ、全く」

それにしても核が出てきたってことは、悪魔か・・・・

あの貴族はとんでもない奴らと手を組んだもんだな。


ガルムはアリスを回収したあと王城へ戻り、アリスを預けどこかに消えていった。




◆◆



騎士団は悪魔が召喚した天使の軍団と戦っていた。

「いいかお前ら!」

一人の騎士が声をあげた。

「俺たちは最強の騎士団だ!!」

「「おおー!!!」」

「あの少年によって上がったレベルと団長の扱きによって鍛えられた技がある!!」

「「おおー!!!」」

「天使などという羽虫どもからこの国を守れー!!」

「「おおー!!!!!」」


天使は予想を遥かに超える人間の強さに手も足も出ず次々と姿を消していった。

騎士団の圧倒的な戦いを見ていた国民は勝ちを確信していた。

しかし、その時、空から目を開けていられないほどの光が放たれた。


光が収まり、目を開けるとそこには・・・・・

騎士団が倒れ込み、立っているのは六枚の翼を持った天使だけだった。


「人間如きが、調子に乗りすぎだ。マモン様の命令を遂行する」



◆◆



「がっ!!」

エリスは、マモンに蹴り飛ばされ地面を転がった。

なんとか剣を立て、踏みとどまったが立つ気力は残っていなかった。

「なぜだ・・・・・なぜまたお前は・・・・・・」

エリスは、攻めてきた理由を尋ねた。


「おや、まだわからないのですか?」

マモンは、笑いながら続けた。

「あなたがアインツベルンだからですよ」

さも当然のようにそう答えた。


「・・・・・・な・・・に?」

”アインツベルンだから”だと?

何を言って・・・・・

「おや、知らないのですか?」


「ああ、そういえばあなたはあの日、間に合いませんでしたもんね〜」

「くっ・・・・・・・」

エリスは、昔のことを思い出し苦虫を噛み締めた。


「教えてあげましょうか。あなた方アインツベルンの血筋、つまりエルフの王族の血はあの方を封印するために使われているのですよ」

「封印・・・・?」

「ええ、我々が仕えるお方は全盛期の力を取り戻してはいません。あの忌々しいマルスに力を奪われたのですよ」

「では、私たちの血を使えば封印が解けると?」

「いえ、そうではありません。エルフの王族にだけ”始まりの地”の場所が伝わっているのです」

「始まりの地?」

そんなものは聞いたことがない。

そこに一体何があるのだろうか。

聞く前にマモンが答えた。


「”始まりの地”には、あの方の力を封じたマルスの墓があり、奴が使っていた遺物の場所が残されているのですよ」

マルスの墓は、王城の奥に作られたと聞いている。

エリスは何度も言ったが、そこに遺体はなく、ただの墓しかなかった。

遺体のそばには、魔素が漂うがそこにはなかった。


「墓だと・・・・?」

「ええ、奴の遺体を見つけ出し彼の方に捧げる。それがあの方が復活するためには必要なのですよ」

マルスの遺体は、混沌の時代が終わってからというもの世界中で探し回ったが痕跡すら残ってなかった。

だがこいつらは、手がかりを知っているのだろうか。

そんなことはどうでもいい・・・・・


「お前らにあいつを好き勝手にはさせん・・・・・」

あいつは、何もかも背負って死んでいった、これ以上は・・・・

「ふふ、止められると良いですね」

満身創痍のエリスは、全快したように立ち上がった。


「・・・・・何?」

マモンは、目を細めた。

エルスの腕には、アクセサリーが光っていた。


「いくぞ、第二ラウンドだ!」

エリスは、『精霊化』を使い、マモンに斬りかかった。


「ふっ」

エリスは、精霊剣を横なぎにするが、マモンは足で地面を盛り上がらせ、『黄金讃歌』で地面を黄金に変え防いだ。

”原初には原初”それが超越者同士の鉄則だ。


エリスは、黄金に当たった瞬間、精霊剣を消し手だけをマモンの前に持ってきた。

マモンと手の間にある魔素を掌握し、精霊剣を空中に生み出してそれを飛ばした。

「ぐふっ!」

マモンはこの戦いで初めて血を出した。


エリスは、追撃をしようと迫ったがマモンが大きく後ろに下がったため叶わなかった。

「痛いですねぇ〜全く」

マモンは瓦礫を手元に寄せ黄金に変化させ、剣を作り出した。

「行きますよ」

ドンッと地面を抉らせながら両者は距離を詰め、目で追えない速さの剣戟を繰り出し、両者の周りには火花と光の残滓だけが残っていた。



◆◆



「ねぇ、アル」

「はい、なんですか?」

アルベルトとアイナは荒野を彷徨っていた。


「いつになったらここから帰れると思う?」

「・・・・・・・・・」

アルベルトは応えることができなかった。

なにせ、気を抜いた瞬間殺されるほどの強さを持った魔物が跋扈し、方角もわからないのだ。

その時・・・・・・

「!!」

「どうしたの?」

これは、まさか・・・・・・。

アリスのペンダントが・・・!!


しかし、それが不幸中の幸いにもアルベルトたちに王都への道標を示した。

「アイナ様、王都の方角が分かりました。しかし・・・・・」

「しかし?」

アリスのペンダントが破壊されたということは・・・・・

「王都が何者かに襲われています」

「え!?」

動揺するアイナの手を取ったアルベルトは

「行きますよ」

「え?」

アリスのペンダントが破壊された場所を視て座標転移をした。


シュンッ、アルベルトとアイナは混沌の大地を抜け出し王都近くの森へ戻ってきた。

「お、アルベルトの旦那」

ん?

「ガルムか」

ガルムがここにいるということは

「アリスは無事か」

「ああ、悪魔を一体倒していたぞ」

悪魔を?

「核をどこかに収納していたからな」

アイテムボックスか・・・・

中を見ると、以前自分が倒したサタナキア以外のものがあった。


=ベリアルの核=

八柱の四騎士の一人。加工には莫大な魔力が必要になる


うへぇ、アリス、もしかして、とうとう超越化を・・・・・

だがそれは後でいい、今は

「それで、これはどういう状況だ」

「悪魔が攻めてきた。あいつらと手を組んでいた奴らだ」

そうか、実行したのか。そこであることに気がついた。

ん?

これは、大罪能力か?


「ガルム、アイナ様を王城へ頼む」

「ああ」

「アイナ様、彼は私の協力者です。私は悪魔を片付けてきます」

「気をつけて」

「はい」

アルベルトは、王都の宿につけていた魔道具を頼りに座標転移し戦場に到着した。


うっし、やるか。





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