第12話 合同演習
ガルムを一人目の協力者にし、ある依頼をした後、気を少し教えてもらった。
簡単にいうと、魔素は人がどれだけ動こうが、大気中に漂っているだけで、魔素自体に直接は干渉できない。魔素を魔力に変えて、MPを消費し魔法を発動する。
しかし、”気”は、人の動き、意思で形を変え直接干渉することができる。
例えば、魔法が通じないものに対して”気”を直接打ち込むことでダメージを与えることができたりする。
”気”は初めて感じるときは難しいが、一度感じることができれば、あとは自分の意思でどうとでもなる。
ガルムに手伝ってもらい、”気”を感じてからは早かった。
”気”を纏い、拳を突き出せば直接当たらなくても木が抉れたりした。
「これはすごいな」
普通にすごい。こんなものもう少し早く知りたかった。
「だろ?」
“気”はすごいんだ、とガルムは嬉しそうに言った。
「お前は誰から学んだんだ?」
「え、独学だけど?」
なんでだろうか、超越者になってもこんな天才には敵わない感。
「・・・・・・そうか」
◆◆
暗殺者が襲ってはきたが、学校生活は平穏なものだった。
この国の歴史や、基本的な計算練習、それから戦争戦略の授業に模擬戦を繰り返していた。
そんなある日、編入したアイナ様がいる三年次のSクラスと合同の演習が行われることになった。
「よろしくね、アル」
「よろしくお願いします」
「アイナ様、この人は?」
アイナ様のクラスメイトが聞いてきた。
「私は、アルベルトです。アイナ様の友人です」
「ご友人、本当ですか?」
今まで学校に来ていなかったアイナ様に友人がいるのが不思議なのだろう。
「ええ、そうよ。今はね」
アイナは含めた言い方をした。
「そうですか」
クラスメイトはそういうと他のクラスメイトの方へと歩いて行った。
「そういえばアイナ様、お聞きしたいことがあるのですが」
「何?」
「アイナ様が悪魔に取り憑かれた日の前の日でパーティか何かありませんでしたか?」
「あったわよ?」
あったのか。これで、あの可能性が濃くなってきた。
「そのパーティに参加した貴族の名簿とかありますか?」
「何を調べるの?」
まだ言わないほうがいいかな。
「少し気になることがあって」
しかし、これではもう言っているようなものだ。
「それは私のため?」
「ええ、そうですよ」
それだけは間違いじゃないが、ガルムを雇った貴族と今回の件がつながっていれば自分の平穏のためにも排除するべきだ。
王国にきて、物騒な思考が身についた気がする。
「わかったわ。用意しとく」
「ありがとうございます」
これで、進めることができる。
「でも今は、合同演習頑張りましょ」
「ですね」
「では、三年次Sクラスと一年次Cクラスで三人ずつの六人チームを作ってください」
アルベルトのチームは、いつものメンツに、先程話しかけてきたアイナ様のクラスメイトとその幼馴染という人が来た。
アイナ様とこの二人は、幼い頃から知っている中らしい。
「改めまして、私はマイナ・エルギスと申します」
「俺は、ダイス・ロンドという」
ロンド・・・・どこかで聞いたような。
「ダイスは、勇者候補のユリス・ロンドのお兄さんよ」
あっ、なるほど。どこかで聞いたなと思えば国王たちが話してたな。
「勇者候補?」
今までアルカと話していたアリスが勇者という単語に反応した。
「そうさ、ユリスは光栄なことに今代の勇者に選ばれた。君たちは、あの子を支えるためだけに人生を捧げろ」
ん?
なんか、こいつもやばい人なのか?
それともただの・・・・・
「ん、がんばる」
アリスは、アルベルトとの約束を守り、下手に返さなかった。
全員の自己紹介が終わったところで、演習の内容が発表された。
内容は、シンプルなもので、森の中にランダムに二人ずつ転移させられ、全員がここに戻って来たら合格というものだった。
「なんかざっくりしすぎだな」
「だね」
アリスとそんな感想を言い合っていると、早速転移したチームが出てきた。
もうそろそろだな。
「頑張るぞ、アリス」
「うん、がんばる」
意気込んだところでアルベルトたちは、転移した。
◆◆
「細工はしたか?」
「はい。アルベルトという少年とアイナ王女をあの方のところに」
「そうか。目障りな奴は、一緒に始末するべきだ」
「しかし、いまだに”死神”とは連絡が取れません」
「それが1番の予想外だったが、奴はもともと気まぐれなやつだ」
”死神”ガルムがすでにアルベルトの手に落ちていることを知らない彼らは、安心していた。
彼らは知らない、自らが剣を抜けば相手もまた剣を抜くことを。
◆◆
「あれ、ここどこだ?」
「ん?」
アルベルトとアイナは洞窟の中にいた。
森とは、かけ離れた洞窟の中に・・・・・・
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