第11話 一人目
学校初日が終わり、アルベルトは森に来ていた。
アリスは、約束通りアルカと遊びに行き、編入することになったアイナも二人について行った。
森に入りしばらく歩くと泉を発見した。
泉には、日が差し込み、水が光を反射してキラキラしていた。
「なんだここ・・・・・すげぇ」
初めてみる神秘的な光景に感動していた。
スキルを使わず、魔素だけで自分の周りの世界を視ることができるようにすること。
まずはそれからだ。
「ここは、最適だな」
こんなに澄み切った魔素は感じたことがない。
適当なところにあぐらをかき、目を閉じて感覚を研ぎ澄ました。
これはすごいな。
木々のざわめき、落ち葉の動き、水の波紋、風の動き、それらが少しずつ明瞭になっていく。
もう一段階研ぎ澄まそうとした時、二つの生命体が
思わず目を開けると、そこには小さく発光する妖精のような存在がいた。
「こ、こんにちわ」
「「久しぶり〜!」」
「え、久しぶり?」
どこかであったかな?
はじめましてな気がするけど。それに妖精なんか見たら忘れるはずがない。
「またここにきたんだ」
「でも、前とは違って世界に馴染めてないね〜」
二人は、代わる代わるに言う。
「また、ってどういうこと?」
ここにきたのは初めてだけど。
「え〜、何度も来てたじゃん」
「そうだよ〜」
全くもってわからない。
「まっいいか。でもでも・・・・・」
「世界に馴染みたいなら〜」
「「”気”も使わないと」」
じゃあね〜、と飛んでいった。
「え、え〜。なんだったんだいったい・・・・・」
でもなぜかヒントをもらった。
「世界に馴染む。それに”気”か〜」
”気”はいまだにわからない。仙術で、感じようとしたがうまくできなかった。
仙人とかいないのかな〜。
その時さっきを感じた。
「誰だ!」
「ハッハー!俺に気がつくとはとんでもねぇガキだぜ」
「・・・・・・誰だ」
もう一度聞いた。
「俺は、お前さんを殺すように言われた暗殺者ってわけだよ〜」
「なるほど」
まぁ、このくらいの相手ならすぐ終わる。
「おらっ!」
暗殺者がナイフを投げてきた。
「!?」
なんだ今のは!?
全く魔素を感じなかった。
ペンダントも魔素に反応して効果が発揮されるようになっている。
「なぜだ・・・・お前」
なぜ魔素がない・・・・・
「気になるかぁ〜?」
ナイフを回しながら答える。
魔素が感じられないのに確かにそこに存在する・・・・・。
これは、”気”か?
こんな都合のいいこと起こっていいのか?
”気”を感じようとしていたところに”気”を使う暗殺者。
偶然か?
「”気”だな」
「おっ、知ってんのか」
暗殺者は考え込むように首を捻った。
「おい、小僧。教えて欲しいか?」
「なんで?」
「”気”を知ってる奴なんざ、そうそういねぇからよ」
「俺を殺しにきたんだろ?」
「まぁな。だが気が変わった。ここでお前に負けたら暗殺者としての俺は終わり。お前に”気”を教えて死ぬさ」
「だったらかかってこいよ。さっさと勝って、”気”を教えてもらう」
そう言った瞬間二人は掻き消え、衝撃波が起こった。
何度か衝撃波が起きたところで勝負はついた。
「・・・・ったく。強すぎだろ小僧」
「当たり前だ。生物として格が一つ違う」
「あん、超越者か?」
・・・・・・・・。
「はっ、そういうことか。貴族様もこんなやつの暗殺を頼んでくるとは、運がないぜ全く」
貴族?
なんで貴族が俺を?
「どこの誰だ?依頼主は」
「本当は内緒なんだが、ここまでされたら言うしかないな。ブライトリヒ家だよ」
「ブライトリヒ家?」
確か、あのうるさい貴族がそんな名前だったような。
え、ってことはあれだけのことでこんな暗殺者を?
しかし、村から出て初めて人間相手に焦ったな。
「なぁ、あんた。名前は?」
「ガルムだ」
「そうか」
もし顔が世間に割れていないようなら不労を目指す上で大事な戦力となりうる。
「なぁ、ガルムは世間に顔割れてるか?」
「いや、これでも死神と言われてるぐらいだ。顔が割れるとかそんなヘマはしない」
これはいい。受けてくれるといいが。
「俺の元で働かないか?」
「あ?・・・・お前いくつだよ」
「10歳だけど」
「まだガキじゃねぇか。まぁ見た目からしてそうだけど」
呆れたような口調で言われた。
ガキは関係ないだろ?
「で、どうだ?受け入れてくれるか」
「俺は高くつくぞ?」
「金なら心配ない。勝手に増えていく」
不労の力でな。
ああ、いい響きっ。勝手に増えていくか・・・・・
「おい、何悦に浸ってんだ?」
おっといかんいかん。別世界に行くところだった。
「で、どうなんだ?」
「わかったよ。お前に雇われてやる」
よっしゃ、一人目ゲットだ。
「とりあえずこれをつけといて」
新たに作った腕輪型の自動経験値と空間断絶が入った。
あ、そういえばこいつ魔素が・・・・・
「なぁ、お前って魔力あんの?」
「あるにはあるが、戦闘には使えん」
それなら大丈夫だ。少しでも魔力があるなら魔道具は使える。
「それに魔力を少しでもいいから流してくれ」
そうして流すと、ガルムも勝手にレベルが上がっていく。
「おい、なんか勝手にレベルが上がったんだが」
そういえばこいつのステイタス見てなかった。
今は戦闘中じゃないしいいか。
『名前』 ガルム
『種族』人間族 『性別』男 『年齢』三十三歳
『レベル』68
『HP』 4300/4300
『MP』100/100
『能力』 A
『称号』 死神
『スキル』
暗殺術Lv10 縮地Lv8
『ユニークスキル』
仙術
『加護』
死神の加護
これはなんともはや、暗殺者になるべくして育ったようなステイタスだな。
スキルは少ないが、それを補うだけの技術がある。
「頼んだぞ。お前に頼むのは・・・・・・・」
「ああ、承った。この命お前のために使ってやる」
「あ、その前に”気”教えてくんない?」
「そういえばそんなこと言ってたな」
なんとも締まらない雰囲気がその場には流れた。
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