第10話 入学

本物の最強に出会い目的を見つけたアルベルトはその日から戦闘でユニークスキルを全て使わないことにした。


そしてしばらくアルベルトたちは王城に呼び出され、アイナ様と話したり、回復魔法を教えてもらい、イヤリングに組み込み、国王と王妃は、トレントの素材で指輪を作ってくれと言われたので、イヤリングと同じ効果のものを設置し、渡した。


アリスは、相変わらずじっとしとくなら、戦いたい精神でエリスと模擬戦を続けていた。

合格発表前日には、エリスが負けることも何度かあった。


そして、発表日の朝。

「アリスいくよ〜」


「は〜い」


二人は、宿を出て、学校へ向かった。

学校には、すでに多くの受験生がおり、喜んでいるもの、また涙ぐんでいるものそれぞれいた。

二人は、主席ではないが無難な順位で合格し、ひとまずの平穏は約束されたと思う。

合格者が集まる部屋に行こうとしていると


「おいっ、貴様!」

なんか聞いたことある声だな〜


「聞いているのか!」

あ〜めんどくさい。


「おいっ」


「はいはい、なんですか?」

俺は学んだ。こういうバカは何度でもやってくると。


「なぜここにいる!?」


「え、なぜって、合格したからですが・・・」

何を聞いているのだろうかこいつは。


「ならばちょうどいい、私は侯爵家ブライトリヒ家のフライだ!」

なんで、結構かっこいい家名なのか・・・・・。


「はぁ、そうですか。俺は、アルベルトです。こっちが・・・・」

「アリス」


「そうか、アリスというのか。私のものに・・・・・・カヒュッ」


学ばんのかこいつは。侯爵だかなんだか知らないが、アリスに手を出そうとすれば容赦無く断罪する。


「行こうか、アリス」

「うん」


アルベルトたちは、バカを放って会場に向かった。


◆◆


「はっ!」


フライは目が覚め周りを見ると発表会場だった。

誰からも起こしてもらえず、無視され続けたのだ。


「あいつ、一度ならず二度までも・・・・・」


フライは今まで侯爵という爵位を盾に好き放題にやってきた。

欲しいものは力づくでも手にいれ、女も誘拐してでもものにしてきた。

自分の好きにできず、あまつさえ反撃されたのは初めての経験だった。


「覚えてろよ。アルベルト・・・・」

怒りが沸々と湧き上がってくる。


「侯爵家を敵に回したことを後悔させてやる」


アルベルトは敵に回したつもりはないのだが、頭がお花畑のまま成長してきたフライはそう解釈した。

この判断が、自分たちの運命を決めるとも知らずに・・・・・



◆◆



「新入生の皆さん入学おめでとう。・・・・・・・・・・・・以上で終わります」


長い。学校長の言葉は長かった。これは異世界も共通なのか。

アリスなんて退屈で寝ているではないか。かわいいな・・・・・・。


「では、クラスの発表がありますので、もう一度外の会場に集まってください」


クラスか、アリスと同じならどこでもいいや。


アリスを起こし、自分たちのクラスを確認しに行った。

幸運なことにアリスやアルカと同じCクラスだった。

クラスはD〜Sまであり、Sが一番優秀な生徒が集まるそうだ。


二人は、筆記はともかく実技は全力で手を抜いたため、無難なCクラスに収まった。


アルカとも合流し、三人で話していると後ろから声をかけられた。

「アル!アリス!」


声のする方に振り向くとそこには

「アイナ様!?」

これまで学校に来ていなかったアイナ様がいた。


周りがざわめく中、アイナはアルベルトたちに近づいてきた。

「え、え、アリスたちって王女様と知り合いなの!?」

アルカが近づいてくるアイナに狼狽えながら聞いてくる。


「うん。試験のあとちょっとね」

アリスが、答える。


「あら、あなたは?」

アイナは、ワナワナしているアルカに声を掛ける。


「わ、私はアルカで、ですっ」

緊張して噛みまくっていた。


「そう、アルたちの友達?」


「は、はい!」


「そう。私はアイナ。よろしくね」

アイナは微笑みかけた。


アルカはますます緊張した感じになり首を盾に振ることしかできなくなっていた。


◆◆


そんな三人の様子をフライは、憎らしい表情で見ていた。

「王女までも・・・・・・・」


そして、別のところでは

「ほう、王女とあそこまで・・・・・あの少年やはり何か・・・・・」

男は、主人に報告をしようとして目を離した時、三人を見るフライが目に入った。


「これはこれは。面白くなってきましたねぇ」

主人に報告せねば。そう呟くと男は、その場から立ち去った。


◆◆


「キーラ、生徒会長としていい人材は見つけたか?」

学校長は、入学式を終え学園長室に生徒会役員を呼び出していた。


「はい、ジーナ様。やはり勇者候補である『ユリス・ロンド』がめぼしいかと・・・・」


「ふむ。ダイル君は、副会長としてどうかね」


「はい。やはり私もユリスかと」


「そうか。カイル君は?」


「私は、アリスという少女でしょうか」


「ほう、それはなぜだ?」

今までの二人とは違う回答に興味を示したのか、理由を尋ねた。

他の二人も、興味があるようで耳を傾けている。


「はい。私の個人的な意見ですが、エリス様と似通ったところがあるように思えます」


「あの、脳筋とか・・・・・」


ジーナは、最強の魔法士と呼ばれ平民でありながら今の地位を築いている。

そのため、王国最強の騎士と呼ばれているエリスとは犬猿の中なのだ。


「脳筋かどうかはさておき、私が以前一度だけお会いすることができたエリス様にどことなく似ておりました」


「そうか。ありがとう」


ジーナは三人を下がらせ、先ほど出てきたアリスについて考えていた。


「エリスに似ているか・・・・」

まさか弟子を取ったのか?

いや、それはありえない。あいつはそんなことをする女ではない。


「カイルの勘違いか?」

・・・・・・まぁいい。とりあえず一度視てみるか。


◆◆


その頃、

「ねぇ、アルたちはどこに住んでるの?」


「宿ですよ。お金には困ってませんから」


「ふ〜ん」

何か考え込むアイナをよそに、アリスとアルカは何か約束をし別れていた。


「何話してたんだ?」


「ん?」


「アルカと」


「あー、明日学校早く終わるだろうから、また遊びに行こうって約束したの」


「そういうことか」


「アル君はどうするの?」


「明日は、森で修行でもしてくるよ」

早く、あの領域に行ってみたいからね。


「最近頑張ってるね」


「ああ、目標ができたんだ」

そのために今はひたすら・・・・・・


「よくわからないけど頑張ってね」


「おう」


アリスやアイナ様、アルカを守るためにもやるしかない。



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