第8話 褒美
翌日、アルベルトとアリスは王城に向かっていた。
「アリス、王城に行った後何する?」
「わたしは、師匠と訓練する」
あっ、そうなんだ。
それじゃあ何しようかな〜。
「アル君は?」
「今のところ予定はないかな」
本当に何をしようか。
アイナ様に顔を見せて、お礼をもらって・・・・・
ん?
「アイナ様?」
「アル君?」
何かどす黒い感情をアリスから感じるが気にせずに答えた。
「回復魔法を教えてもらって、魔道具を新しく作ろうかな」
ペンダント以外にも何か作りたいし、と言うとアリスは納得した表情になった。
なんにしようか、う〜ん、指輪か腕輪?
アリスに聞いてみようか。
「なぁ、アリス。指輪か腕輪どっちがいい?」
「え!?」
え、え、なに、え?と焦っている。
どうした急に。指輪か腕輪どっちがいいか・・・・・
・・・・・指輪?
「あ、いや、そういう意味じゃなくて魔道具としてどっちがいいかなと」
「あ、あ〜、そういうことね。なら腕輪かな〜」
指輪は、別の形で・・・・・
最後の方はよく聞こえなかったが腕輪がいいのか、なら大きさも調整できるようにしたほうがいいかな・・・・・。そんなことを話しているうちに王城についた。
門番は、騎士団の者がやっているのだろうか、顔パスで入れた。こんなんでいいのか?騎士団。
しばらく歩くとエリスとばったり会い、アリスはそのままエリスについていった。
最近アリスが、取られそうな気がしてならない。
国王の執務室の場所は覚えていたので、迷うことなく辿り着いた。
コンコンコンっ
「だれだ?」
「アルベルトです」
「お〜、入ってくれ!」
「失礼します」
中に入ると国王と王妃、アイナ様がいた。
アイナ様は昨日とは違って目に生気があった。元気になったようでよかった。
「元気になられたようで」
「ええ、あなたのおかげでね。ありがとう」
「早速だが褒美としてこれを渡しときたい」
そう言ってバッチを渡してきた。二本の剣が斜めに交わっている。
「これは?」
「それは、王家が後ろ盾にいるということの証明だ」
「いいのですか?私に」
まだ、学校にも入学していない子供に渡すようなものではないだろうに。
「娘の恩人に渡さなければ誰に渡せるのだ・・・・・」
なんか呆れたような口調で言われた。王妃やアイナ様も少し呆れていた。
なんかすみません・・・・・。
「他に何か欲しいものはできたか?」
「ものではないですが、アイナ様・・・・・」
アイナ様に目を向けると体をびくつかせソワソワし始めた。
なんだ?なんか変なことしたか?
「な、何?」
「私に回復魔法を教えていただけませんか?」
「はぁ・・・・・そうよね。そんなことだろうと思った」
ため息!?やはりそう簡単に教えられないのだろうか。
「あの、ダメでしょうか」
「いえ、いいわ。教えてあげる」
もう一度ため息をつくアイナ様を見て王妃はニヤニヤしている。
アイナ様が元気になったのだ、嬉しいよな。
「それともう一つ最後になりますが・・・・」
「なんだ、なんでも言ってくれ」
「私とアリスは自由を求めます。なので超越者だろうと勇者だろうとどこかに所属はしません。それだけは回避したい」
「いいだろう。王家として恩人たちの情報は守ろう」
「ありがとうございます」
これで褒美の話は終わりだ。
確認しておくべきことに移ろう。
「確認したいことがあるのですが・・・」
「確認したいこと?」
「はい、これのことです」
そう言って、アイテムボックスから昨日の黒い魔石を取り出した。
魔石を見た国王は、アイナ様を見て
「アイナはどうしたい?」
「・・・・・アルはそれをどうするつもりだったの?」
アル?
アルって俺のことだよな。いつの間にそんな呼び方に・・・・
まぁ、いいか。
「魔道具の素材にしようかと」
「魔道具も作れるのか?」
国王が聞いてきた。
「ええ、このペンダントも私が作りました」
「どんな効果が?」
一通り効果を説明すると、国王から家族に同じようなものを作ってくれと依頼された。
「まぁ、いいですけど・・・・」
「本当か!?」
「はい。ですが素材はどうしますか?」
「それはこちらで用意をするから問題ない」
用意したら連絡するからその時に作って欲しい、そう言われた。
そこでアイナ様がいい案を思い出したと言わんばかりの勢いで
「その魔石を使って作ってくれない?」
「いいのですか?」
長年苦しめてきた原因を害はもうないとはいえ、身に付けて大丈夫なのだろうか。
「いいのよ。確かに苦しめられてきたけど、そのおかげであなたに会えたんだし」
顔を赤らめながらそんなことを言った。
「わかりました。では、早速作りますね」
結構照れることを言われたが、なんとか反応せずに切り抜けた。
アイナ様には、ジト目を向けられたが・・・・・
よしっ、素材に魔力を通し魔道具に変えていく
「アイナ様、お手をよろしいですか?」
「え?」
「アイナ様が身につけたいアクセサリーに作り替えますのでイメージをしながら魔力を通していただけますか?」
「え、ええ」
アイナ様のお手を取り二人の魔力を通していく、神速の魔弾と空間断絶を設置する。
これで、超越者でない限り、彼女に傷をつけられるものはいなくなった。
あとは、回復魔法を設置でもすれば完璧だ。
しばらくすると、魔石はイヤリングの形に変わった。
「イヤリングですか・・・・・」
「ええ、それが欲しかったの」
真っ直ぐな目を向け言ってきた。
国王と王妃は、微笑ましい目を向けてきたがよくわからん。
何か意味があるのだろうか。
「これを身につけている間は、何があろうと守ってくれますので」
「寝ている時でも?」
「ええ、特に魔力を流すこともしなくて大丈夫です」
「そうなの?」
「はい。私のユニークスキルで魔法を設置してますので」
「「魔法の設置!?」」
国王と王妃は同時に驚いた。
昨日のアイナ様の原因を伝えた時よりも驚いてないか?
「はい。MPを消費するのは設置する時だけで、あとは魔素さえあれば魔法が発動しますので」
「・・・・それでそのイヤリングにはなんの魔法を?」
「神速の魔弾と空間断絶です」
・・・・・・・・・。
沈黙が流れた。
「あの〜・・・・・」
「はぁ、もう驚いても無駄なようだな」
「そうね」
二人してため息をつかれた。
そんな二人を無視してアイナ様が聞いてきた。
「どんな効果なの?」
「神速の魔弾は、目に見えない速さで打ち出す魔力弾です。空間断絶は、アイナ様とアイナ様を害そうとするものの間の空間を断絶して、近づけないようにするものです」
「ふふっ、すごいわね」
ますます欲しくなっちゃいそう。
効果の説明を聞いて、国王たちは、唖然とすると共に同じものを要求してきた。
◆◆
「準備は整ったか?」
男は、目の前にいる執事風の男に確認していた。
「ええ、あとは彼女に
「そうか。あと少しでこの国は私の・・・・」
その時、部屋にあわてた様子の男が入ってきた。
「旦那様!大変です!」
「どうした、そんなに慌てて。侵入者か?」
「いえ、その・・・・」
歯切れの悪い部下に急かすように言った
「どうしたのだいったい」
「はい。それが王女に取り憑いているはずの悪魔の反応が消えました!」
「・・・・・は!?」
男は、予想以上のことに珍しく狼狽した
「なぜだ!?あれは、聖女でもなければ取り除けないはず・・・・。まさか聖女が!?」
いや、聖女の動きは把握している。ならいったい・・・・・
「他に情報は!」
「は、はい。情報には、昨日から連日、王城に出入りする子供がいたとのこと・・・・・」
「子供?学生か・・・・。だが王女は学校に行ってないはず。友人ではないな・・・・・」
「はい。おそらく」
男はしばらく考える素振りをし
「その子供を監視しろ。もし何かあれば早急に始末しろ。障害は少しも残してはならん」
「了解!」
指示を受けた部下は慌てて部屋から出て行った。
「くそっ!これで内部からの破壊は難しくなったな・・・・・」
「では、外から直接崩しますか?」
執事風の男が提案する。
「そうだな。あの方に取り次いでくれ」
「了解しました」
「ここにきてこんなことになるとは・・・・・」
男は立ち上がり、王城を睨みつけた。
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