第3章 王都動乱
第1話 身分証と経済基盤
「「うわぁぁ」」
二人は、目の前に広がる見たこともない巨大な建造物を見て感嘆した。
そんな二人に、周りの人たちは微笑ましい顔を向けていた。
「「・・・・・・・・・」」
その視線に気づいた二人は、恥かしくなったのかその場から離れた。
「と、とりあえず行くか」
「う、うん」
二人は歩き出した。
「・・・・・どこに?」
・・・・・・・・。
とりあえず、身分証なるものを作るために冒険者ギルドに行くことにした。
その道中、人だかりを見つけ近づいてみた。
そこでは、女が物語を歌っていた。
「・・・・・・男は仲間たちを置いて、たった一人で最後の戦いに挑んだ。彼は、わかっていた。今の自分達では勝てないことを、ならば自分が死んでも、一時的でも奴を止めて見せると。彼は、満身創痍になりながら見事奴を封印した。しかし代償は大きかった。男は、力のほとんどを失い残ったのは、僅かな魔力と一振りの刀、彼は誰にも見つからない場所に封印し、いつか自分の後継者が現れたとき全てを託すため、友人に守りを任せ命を落とした。彼の亡骸は、最後に帰れなかった家の庭に埋められ墓が建てられた。彼の名前は、マルス。かの戦神の名を冠した英雄・・・・・・」
すごい。聞けたのは、最後の方だけだったがそれでも面白かった。
「行こうか」
「そうだね」
どうやらアリスも同じ感想を抱いたようだ、顔を綻ばせていた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ」
「二人の登録をお願いします」
「申し訳ございません登録の前に年齢の確認をよろしいですか?」
年齢制限があるのか。受付嬢は、水晶を取り出し、手をかざすよう促した。
「9歳ですね。来年から学生ということでしょうか」
「はい、そうです」
やはり入学前に登録をしていく人が多いのか。
「ではこちらに血を一滴、それから魔力を流し込んでください」
言われた通りにすると一枚のカードが発行された。
「こちらが冒険者カードとなります。身分証としても使えるので無くさないように気をつけてください」
魔力を流すことで、情報を開示するようだ。魔力の質は人それぞれなので、なりすましはできないとのこと。
「あの、魔石を買い取ることはできますか?」
「買取でしたら、商業ギルドに登録すれば可能ですよ」
登録しますか?と尋ねてきたので、もちろんすると答えた。
「はい。登録完了です」
登録は冒険者ギルドでも可能だが、素材や魔石の売買は専用の施設があるらしい。
「ありがとうございました」
二人は、魔石を売るために商業ギルドに向かった。
「いらっしゃい」
「魔石を売りたいんですけど・・・・」
ギルド員は、子供が小遣い稼ぎにもきたのかと思い、めんどくさそうな顔をした。
「はぁ、こちらにどうぞ」
その態度にイラッときたアルベルトは、アイテムボックスに入っている炎竜を含めた高位の魔石を除き全てを机の上に出した。
ジャラジャラジャラ・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・は?」
ギルド員は、口を開けフリーズしていた。
ふっ、やってやったぜ。
「し、失礼しました。査定に時間をいただきますので・・・・」
そういうと応援を呼び、彼らの驚く顔を見て満足したアルベルトは査定が終わるまでギルド内の商品を見て回るとこにした。
「アリス、なんかあれば教えてくれ」
「うん」
何かめぼしいものがないかと二人で手分けして探し始めた。
なかなかいいものが見つからなかったので諦めかけたとき、古びた本を見つけた。
『英雄の真実』 著:シルビア・アインツベルン
「これは・・・・・」
先程の物語を聞いたせいか、目が離せない。
「アルくん、なんか見つかった?」
「まあ、気になるものなんだけど・・・・」
アルベルトはその本を手に取りアリスに見せた。
「『英雄物語』?」
「え・・・・」
『英雄の真実』じゃないのか?
だが、アルベルトの目には。『英雄の真実』と確かに書いてある。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
とりあえず買っとくか。
「アリスはなんか見つけた?」
「んー、特になかったかなぁ」
「そうか」
ちょうど査定が終わったのか、ギルド員に呼ばれた。
「金貨十枚と銀貨九八枚になります」
金貨一枚で十万円、銀貨一枚で一万円ほどだ。
つまり、1,980,000円も稼いだのか。
さすが、不労の力。久しぶりに実感したよ。
アルベルトが唯一敵わない相手はおそらく「不労」だ。
「ふふっ、ふふふふふ・・・・・・・」
そんなアルベルトをアリスは心配そうな目で見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます