第2話 試練の相手

「ドラゴン」。前世の世界では、空想上の生物だが、たびたび最強生物として扱われる。




数年前、アルベルトが幼い頃。前世の記憶があることから、たびたび家を抜け出しては、エミリアに捕まっていた。


ある時、エミリアを完全に欺き、森に入ったことがある。中身は、大人だが、周りからはただの小さい子供だ。


エミリアは、アルベルトがいないことに気づき、村を探し回った。しかし、一向に見つからず焦っている時、森の方からアルベルトが歩いて帰ってきた。それをみたエミリアは、アルベルトに詰めより、いかに危険かをわからせるためこんな話をした。




「いい、アルベルト?森の中にはね、無害な動物もいるけど、とっても怖い魔物がいるの。ものすごく大きな羽を生やしたドラゴンが」




「どらごん?」




その存在は、空想上の生物だと思っていたので、その名前を聞いた時は期待した。




「そう、ドラゴン。弱いドラゴンもいるけど、中には今の私やザックでも勝てないような奴もいる。だから・・・」




見つけたら逃げなさい。見つかる前に。










そして現在。




「あ〜、これはやばいな」




「うん。やばい」




どうやらアリスも視たらしい。目の前のドラゴンの「ステイタス」を。





『名前』 イグニート

『種族』 炎竜  『性別』 男  『年齢』 八百九歳

『レベル』 ー

『能力』 A-

『称号』 超越者 大罪保有者 乗り越えた者


『ユニークスキル』

竜の覇気 炎神 再生 憤怒 


『原初』

炎化 


『加護』

竜神の加護 






あ〜、嫌なもん見ちゃった。




『大罪保有者』




これは、副次効果で他の大罪保有者を見つけやすくなり、保有者を殺すとその能力が手に入る。


つまり・・・・




「アリス。おそらくもう気づかれてる」




「え、なんで?」




「あいつ『大罪保有者』だろ?」




「うん。みたいだね」




そこで『大罪保有者』の効果を教えた。




「つまり?」




「ここで殺さないと、おれが死ぬ」




「じゃあ、倒さないとね」




アリスは、笑顔で言ってきた。


この状況で、その笑顔には呆気に取られたが、覚悟を決めた。




「そうだな。二人でやるぞ」




「うん」




それにしても『レベル』の表記はないし、『能力』の表示方法も少し違う。


やばそうなのは、『超越者』という言葉に、初めてみる『原初』。これが一番やばそうだ。


魔眼で効果が見れないのがやばい証拠だ。




とりあえず、準備をするか。










その日、ある一頭のドラゴンは、いつものように眠りについていた。


しかし、時間が経つにつれ、ここ最近感じることのなかった、高揚感が己を襲った。


自信が持つ、大罪スキルが何かに反応しているのだ。




彼は、ゆっくりと目を覚まし、おもむろに”それ”を視た。


”それ”は、人の形をしているが、魂がふたつ存在した。面白い、久しぶりに感じた感情だった。




しかし、”それ”はこちらに気づいていなかった。彼は、歓迎するように、雄叫びを上げた。










ドラゴンこと、イグニートは襲ってくることはなく、待っているようだった。


そのため、アルベルトは、今できる最大の準備を行なった。


まずは、武器だ。今までの木剣じゃ無理だ。ただでさえ、剣ということで『居合剣術』を最大限に活かし切れていない。




だから、二人分の武器を作ることにした。


アリスには、剣を。自分には、刀を。


ありったけの魔石と二人のMP、それから木剣を素材に使い、今できる最高のものを作った。


そして、出来上がったのは・・・・・




『魔力剣』と『魔刀』のふたつだ。




素材が魔石のため、銘などはないが、木剣よりはマシになった。




それと自分用に鞘を作った。これも魔石を使っているため、魔力伝導率はいい。




今二人が持つ武器は、先ほど作った武器と不可視の魔弾を設置したペンダントだけ。


防具は、魔纏と聖装頼りだ。




「準備はいいか、アリス?」




「いいよ。いつでもいける」




これまで、こんなにもアリスが大きく見えたことはなかった。


今までは、たとえ勇者でも守るべき存在だと思っていた。


だが今は・・・・・




「よし、いくぞ!」




こんなにも命を預けられる存在はいない。








戦いに身を投じる、決意をした時、アルベルトの頭にある声が聞こえた。




「試練を開始します。ご武運を」




命をかけた、戦いが始まる。


















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