最悪な形で勇者パーティ"追放"された俺だが【可愛い魔王】に拾われました。

第4話 クソ勇者は、牢獄へ！

『パレオ視点』

ㅤダンジョンでアディスを捨てた後。

ㅤ俺様が勇者として頻繁に活動しているウォルトンという国の王に、アディスが事故で魔物に殺されたと偽りの報告をした。

「何、そんなことが！！」

「我々の命に変えても、守りに抜こうとしたのですが……。」

「……なんということだ……」

「王よ、アディスの意思を受け継ぎ、なんとしてでもこの国を脅かす魔王を倒してみせます」

「よく言った、それでこそ勇者だ！！」

ㅤ王は玉座から立ち上がった。

ㅤ俺の演技に騙され、感情移入をしているようだ。

「そなたには、金貨500枚をやろう。これで武器を好きなだけ帰るだろう」

「はい！ㅤ大切に使わせていただきます」

ㅤ如何わしい店で使うとしよう。

「そしてバルコニーから民へ、今回起こったことと、そなたの意思を伝えるのだ」

「了解致しました」

ㅤ俺は数十分後。

ㅤ城のバルコニーからウォルトン王国の民に宣言をした。

ㅤ絶対に魔王を倒す……と。

ㅤそしてアディスが安らかに眠れるように、という名目でアディスの家も焼き払わせた。

ㅤハハ、ちょっれぇぇ！

ㅤ俺様の思うがままだ。

ㅤ魔王？

ㅤ笑わせんな、俺様にかかれば楽勝だ。

ㅤ俺様ほど優れた生物はこの世には存在しない！！

ㅤそう思っていた。

ㅤだが、今回だけは俺様の思い通りにはならなかった。

ㅤ問題が起きたのは次の日の朝だ。

ㅤ早朝、玉座の間に呼ばれた。

ㅤ王の前には見知らぬ人が立っている。旅人だろうか。

ㅤ容姿はフードで全く見えない。

ㅤ突然周りの兵士が俺様を取り囲んだ。

「おい、なんの真似だ！」

ㅤ勇者である俺様になんて無礼な……。

ㅤ王はかつてないほど機嫌が悪そうな声でこう言った。

「旅の者よ。勇者パレオにそなたがワシに話したことをもう一度話すのだ」

「はい」

ㅤ旅人は後ろにいる俺様の方向を向いて、何歩か近づいてきた。

ㅤフードの中から、赤と青の美しい瞳が見える。

ㅤ顔全体は、フードの影で見えない。

「初めまして、勇者様」

「勇者と話す時ぐらいフードをとったらどうだ？」

ㅤ女よりの中性の声の旅人は、俺様を無視して話を続ける。

「僕は昨日、ダンジョンで勇者様がパーティの仲間を追放したのを見ました」

ㅤや、やば！

ㅤ見られてたのか？！

ㅤ俺の心臓の鼓動は早くなっていく。

「ダンジョン内でパーティ追放することによって、仲間を魔物に殺させた……違いますか？」

ㅤ旅人は言葉のトーンを変えずに話した。

ㅤやばい、このままだと王からの信頼が落ちてしまう……。

ㅤ落ち着くんだ俺様。

ㅤそもそも俺様がやったと言う証拠が無いじゃないか。

「その証拠は……？」

「勇者様の今の動揺っぷりが証拠になるかと」

ㅤま、まずい！！

「残念だが、これは黒だな」

ㅤ王がそう言うと、出口へとゆっくり歩きながら喋る。

「僕はこれを伝えたかっただけだから、これで失礼させてもらいます」

「おい、待つんだ旅のものよ。報酬を――」

「そんなものはいりません」

ㅤ一切振り返らず、玉座の間を出ていってしまった。

「お、王よ。さっきの旅人の話、まさか信じていないですよね？」

ㅤ王は玉座を立ち上がり俺に指をさしながら叫んだ。

「こやつを牢屋にぶち込め！！」

「「「「はっ」」」」

「く、くそ。離しやがれ！」

ㅤ周りの兵士が特別に用意された部隊だったのか、全く抵抗が出来なかった。

ㅤまさか勇者である俺様が牢屋にぶち込まれるとは思っていなかった……。

『アディス視点』

「う、うわぁ……でっけぇ」

ㅤ庭から見る魔王城は、想像の何倍もでかくてカッコよかった。

ㅤもちろんこの庭も広いし美しい。

「アディス様、いっぱい遊びましょう！」

ㅤ両手をバンザイしながらミアは言った。

「といっても、何をするんだ？」

「追いかけっことかですかね？」

ㅤ子供がする遊びじゃねぇか！

ㅤとは思ったものの、ここ数年はそういった遊びをしてこなかった。

ㅤ魔物との地獄の追いかけっこは日常茶飯事だったがな……。

ㅤもちろん俺が追いかけられる側だ。

「いいぞ、俺がミアちゅわんを捕まえちゃうぞぉぉ！！」

「きゃっ、変態さんです！」

ㅤそう言われてゲームがスタートした。

ㅤいいな、追いかけっこじゃなくて『変態から逃げろ』に改名しないか？

ㅤ……いやそしたらミアが追いかける側をできないか。

ㅤよし、変態になってもらおう――

「まちやがれぇぇぇぇ！！！」

「わー！」

ㅤそれから夕方まで水の掛け合いなど、様々な遊びをした。

ㅤすると偉そうな服装をしている、メイドがこちらにやってきた。

「ミア様、アディス様、そろそろお風呂に浸かってきてはいかがでしょうか？」

ㅤ強制では無いようで、あくまでこちらには拒否権があるようだ。

「ミア、一緒に入らないか？」

「ふぇっ！？ㅤさ、さすがに恥ずかしいです」

ㅤ顔を赤らめるな！

ㅤネタで言ったつもりだったんだが？？

「いや、嘘だよ」

「あわわわ！ㅤすいません……そういう事でしたか」

ㅤどうやらミアはこう見えて結構真面目ちゃんらしい。

ㅤ――数十分間風呂に入ってきた。

ㅤ自然をモチーフにした最高の風呂だった。

ㅤ体の大きいオークが百体入っても余裕があるぐらいだった。

「これから毎日あの風呂入れるのかぁ」

ㅤミアには、一生ここで暮らしてもいいと言われている。

ㅤ帰る家も無いことだし、しばらくはお言葉に甘えるとしよう。

ㅤ今はこの城の散策をしている。

ㅤ片っ端から見つけた扉を開けた。

「お、こ……ここは……ぐへへ」

ㅤ扉の横の金色の板に『メイド長シノン様』と書かれている。

ㅤうっほー、メイドの部屋だと？！

「今ならパンツを盗める！！」

ㅤ俺はゆっくりと扉を開ける。

ㅤ中には誰もいないようだ。

「よっしゃラッキー！」

ㅤタンスを片っ端から開けて、俺はお目当てのものを見つけた。

「ぐへへ……ぐへへへへへへ」

ㅤうお、流石メイド長というだけあって可愛いパンツ履いてるんだなぁ。

「……何してるの？」

ㅤ背後から、声が聞こえた。

ㅤや、やばい……。