少女の正体(4)
ハルキは病室兼自室に戻り、ベッドに横になっている。
勝手な思い込みではあった。世界を革新するような発明をする人物は、歳の行ったおっさんかおばさんであろう、という。
リゼをはじめて見たとき、その鮮やかな銀髪に目を奪われた。
美しいブルーの瞳は深く鮮やかで、一瞬の視線の交錯であってもその輝きが記憶に焼き付いている。きっと、ご両親が容姿にこだわって遺伝子を改変したんだろう。そう思っていた。
リゼが十六歳だと聞いたとき、たしかに違和感はあった。
あったが、自然発生する天才児だって当然存在するし、その方がまだしも身近だ。だから、きっと『ただの天才児』なのだろうと思っていた。医師免許を持つにしては若すぎる気はしていたものの、だ。
通称『
ゆえに、初対面の相手を
(……さすがに少し驚きはしたな)
リゼの「人間じゃない」という言葉を思い出して、複雑な気分になる。
泣き出しそうで、でも涙を流すことはなかったリゼ。ハルキは、ただ「そうだったのか」と戸惑いながら返答するのが精一杯だった。
たしかに、その人間離れした特質から、
そして最たる蔑称が———
(リゼが宇宙人だって? そんなことあるもんか)
目の前にいるリゼを宇宙人だなんて感じたりはしなかった。少し変わってはいても、ごく普通の女の子に見えたから。
あまりにも多くのことを知った。
ミサキの力は、
それらは、これまでの人生観を揺るがすには十分すぎる事実として胸の内に刻まれた。
もう、誓約書に署名することに躊躇いはなくなっていた。
「はい、署名ありがとー。腕時計型の
もちろん、誓約書の内容は……守ってねー?」
ホノカから渡された腕時計型
そして、アーニャからはいつもの笑顔で『お願い』をされた。
「試験機を投与したことは、このラボ内であってもご内密にお願いいたします。発覚すれば、ハルキさんにとっても望ましくない展開になるでしょう。
それから、最後にマスターがお話ししたことも……内緒ですよ?」
グリーフ・ブレイカーは沈黙を保っている。
今でも
それ以外にも、生活面でいくつかの変化があった。
病棟ではなく、ラボ側の共用部を
「ハルキ、しばらく、外出禁止。ずっと病棟、しんどい、かも。ゲストパス、発行する。約束守ってくれるなら、大丈夫」
これまで過ごしていたのは、狭い病棟エリアのさらにその一部のみで、研究所の敷地は数倍の面積があることが判明した。郊外の大学キャンパスくらいの広さがある。しっかりしたレストランやバーもあるし、アミューズメントエリアもあった。大きなグラウンドもある。
研究員が病棟側の施設を誰も使わないのは、その必要がないからだ。あれは、あくまで入院患者———もしくは被検体専用のものなのだろう。
とにかく、どっと疲れた。
ふいに、リゼの泣き出しそうな表情がよみがえる。
『リゼ、人間じゃない』
眠ろう。
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