塞翁が馬

病院には毎回付き添っていた。俺は彼女と病院に行き子供の様子を見る、そんな日常が当たり前であると勝手に勘違いしてしまっていたのだ。子供を授かってから6ヶ月後毎回欠かさず行っていた定期検診に行くことが出来なかった。理由は部活の大会があったからだ。俺の顧問する女子バレー部は自分がこの高校に来てどんどん強くなっていた。正直俺が強くしたよ言っても過言じゃない。その晴れ舞台である大会の準決勝だった。相手は地域でも有名な強豪校の私立。対して俺は弱小校の公立だった。しかし、見事勝つことが出来た。この喜びを今すぐに伝えたくて仕方がなかった。車を走らせ彼女の居る病院に向かった。行く途中に大きな事故があったらしい。たくさんの人だかりと警察で交差点が埋まっていた。

彼女のいる病院の駐車場に車を停めた。先程送ったLINEにも既読すらついていなかった。病院内で電話をするのは良くないと思い直接受付に向かった。だが、聞いた所もう帰ったとの事だ。なので電話をかけてみることにした。2コール程なって聞き慣れない男の声が聞こえた。「もしもし旦那様でしょうか」

後ろから聞こえるサイレン音。すごい嫌な予感がした。

「今事故がありまして、奥様とお腹の赤ちゃんが大変危険な状態です。」言葉を返すことができなかった。「○○病院に救急搬送しますので来て頂けませんあか?」ちょうど俺の痛病院だった。「わかりました」焦りと動揺が悲しみを打ち消していた。そして、病院に着いた頃には2人とももう動くことはなかった。

そこから不運は重なった。大会は負けた。仕事も手につかなくなり辞めた。事件についての話を明日するらしい。なにかしてないとずっとその事が、頭をぐちゃぐちゃにして壊していた。もう寝ようと思い寝た。夢の中で彼女が出てきた。制服姿の彼女だ。昔出会った時のまんま。「生きて」ただその3文字だけ言っていた。その3文字は重くて痛くて苦しいものだった。

事件の説明の為に警察庁に呼ばれた。内容を聞いて俺は怒りを隠すことは出来なかった。

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