―63― 占星術
「それで、早速ですけど、僕に占星術を教えて欲しいのですが」
「ええ、ノーマン殿には私の叡智をすべて差し上げたいと存じます」
いろんなことがあった翌日。
気を取り直して、本来の目的だった占星術の指南をオリアクスにお願いしていた。
オリアクスは当然とばかりに頷いてくれる。
「では、まず占星術というのはですね――」
「あ、すみません。その前に1つやりたいことがあるんですが」
オリアクスの言葉をわざわざ遮る。
解説を聞く前に、一度をオリアクスの霊の一部を自身に降霊されることで感覚を身に着けたほうが、効率的だと思ったのだ。
そんなわけでオリアクスの霊を降霊させる。
「ほう、降霊術ですか。そんなやり方もあるのですな」
と、オリアクスは感心するように頷く。
そんなわけで、降霊術の呪文を唱える。
「――我は汝をノーマンの名のもとに厳重に命ずる。汝は速やかに、我の肉体に宿れ。汝の知識と力で我を満たせ。汝は己が権能の範囲内で誠実に、全ての我が願いを叶えよ。来たれ――序列59位、オリアクス!」
そう言うと、体中にオリアクスの魔力が駆け回る。
「成功したかな?」
言いながら、僕は目はぱちくりと閉じたり開いたりする。
「ご主人様、恐らく大丈夫かと」
と、僕の目を見たフォカロルがそう口にした。
どうやら、僕の右目にオリアクスのシジルが刻まれているらしい。
そして、オリアクスの占星術に関する情報が頭の中を駆け巡っていく。
あとは、これらをうまく解きほぐせば自分の力にできそうだ。
「それでは、まず占星術がなんたるかというのを教えましょう」
さて、降霊術も無事済んだことだし、オリアクスにより講義が始まった。
占星術とは。
その言葉通り、星を見て未来を占おうとした行いから生まれた。
けれど、星の力がより理解された今では、その意味合いが大きく変わっていった。
現在、占星術は大きくわけて3つに分類させる。
まず、大気に微細に存在するエーテルを振動させることにより光を操ること。
エーテルとは星によりもたらされたものとされ、そのエーテルをより理解することで光を自在に操ることができる。
よく光を操り、空中に魔法陣を描くことがあるが、これはそういった原理によりもたらされている。
僕も一度、フォカロルたちと荷台の護衛をしたときに、これを使って魔法陣を空中に描いたことがある。
その上で、ブエルという悪魔を召喚したはずだ。
次に、占星術の分野とされているが、引力と斥力の操作である。
星というのは、遠くにありながらも地球上に影響を与えることができる。
その力を遠隔作用と呼ぶこともある。
代表的な現象といえば、潮の満ち引きだろうか。
これら遠隔作用はエーテルが媒介となって伝えている。
逆にいえば、エーテルを操作することで、遠くのものを引き寄せたり引き離したりができるというわけだ。
そして最後は、黄道12宮の力である。
太陽の通り道にある12の星座はそれぞれが人体に影響を与える。
それは時に病となって人を苦しめることもある。
しかし、逆に力を利用することで人体を治癒することに利用できる。
と、オリアクスの説明を要約するとこんな感じである。
「まず、光の操作だな」
早速実践してみる。
光の操作は簡単にできた。
まぁ、一度やったことがあるからね。
これは、そう難しいことではない。
それから引力と斥力の操作。
これもオリアクスに教わることで、無事成功を収めることができた。
だが、黄道12宮の力に関してはうまくいかなかった。
どうやらオリアクスが言うには、僕の体質の問題らしい。
僕の体質は悪魔には好かれるが、それ以外には嫌われる。
そのため黄道12宮の力を借りるのは難しいだろう、とのことだった。
まぁ、黄道12宮の力を借りても治癒にしか役立たないから問題ないだろう。
もし、治癒が必要なら序列10位のブエルを召喚すればいいからね。
その後、オリアクスの降霊を解除させた上でも占星術の特訓をする。
最初こそぎこちなかったが、特訓を続けることで占星術を十二分に扱えるようになった。
そうやって、僕は一日で占星術のほとんどを極めることができた。
「ふむ、ノーマン殿は魔術の才に溢れているようであるなぁ」
「そうですかね……?」
「一日でこれだけのことを身につけることができるのはそうとしか思えません」
「それはオリアクスさんの教えがうまいからではありませんか?」
「確かに、私は占星術に関しては誰よりも詳しいと自負しています。しかし、それだけです。人になにかを教えるのに長けているわけではありません。それでも、占星術を理解できるのはノーマン殿が優れているからでありましょう」
「ありがとうございます」
一応、褒められたんだし、ここは素直に受け取っておこう。
「そうだ、占星術にてノーマン殿の未来を占ってもよろしいでしょうか?」
「ええ、こちらこそお願いします」
すると、オリアクスは魔法陣を使って、なにかしらの作業を始める。
そして、結果がでたのかオリアクスは頷いた。
「ふむ、近々、ノーマン殿には試練がおとずれるようです」
「試練ですか?」
「はい、どうやらノーマン殿の命を狙う
そう言われて、僕は喉がごくりと鳴る。
一体、どんな敵が現れるというのだろうか。
「すみません、占星術ではこれ以上、詳しいことはわかりませぬ」
「いえ、それでも十分ですよ。なにかがあるとわかれば、それまでに準備をすればいいだけですから」
「ははっ、どうやら心配する必要はないようですね。あなたなら今よりも、さらに強くなることができるでしょう」
そう言葉を残して、オリアクスは魔界へと退去していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます