―57― 占星術

「錬金術の次は占星術だな」


 以前、ルドン先生は錬金術をまず覚え、その次に余裕があれば占星術を覚えろと口にしていた。

 錬金術を覚えた翌日、そのことを頭に思い浮かべながら、僕はそう口にしていた。


「それでフォカロルに占星術が得意な悪魔を聞こうと思って召喚したんだけど」


 ちなみにさきほど、オロバスに同じことを聞いたが「申し訳ございません!!! わたくしにはわからないです!!!」といって土下座をされた。

 まぁ、オロバスはこういったことに関しては役立たないのはわかっていたので、別にいいんだけど。

 それで、フォカロルは前回召喚してはすぐに退去してもらったから、そのお詫びを込めて今回召喚したわけだが……。


「その、フォカロル……これはどういう状況なんだ?」

「ご主人様を膝の上に乗せているだけですが?」

「いや、だけですって……」


 フォカロルの淡々した主張に僕はなんて言い返せばいいのかわからず困ってしまう。

 この姿勢、背中にフォカロルの胸が当たるから、ひたすら恥ずかしいのだけど。

 うーん、最近クローセルに対抗してかフォカロルのスキンシップが激しくなっているような。


「オロバスも見ているから、流石に離れてほしいというか」


 オロバスもさっきから僕のことをただ黙って見守っている。


「あんな馬畜生のこと気にする必要ありません」


 馬畜生って随分とひどい言い草だな。

 オロバスはというと、暴言を言われたことに興味がないのか、特に反応は示さない。

 本人が気にしていないなら、僕から特に言うことはないのだけど。


「それで、フォカロル。占星術に詳しい悪魔がなにかわかる?」

「それでしたら序列第59位のオリアクスが最適でしょう」


 オリアクスか。

 早速、紹介されたことだし召喚してみよう。


「――我は汝をノーマンの名において厳重に命ずる。汝は疾風の如く現れ、魔法陣の中に姿を見せよ。世界のいずこからでもここに来て、我が尋ねる事全てに理性的な答えで返せ。そして我が願いを現実のものとせよ。来たれ――序列59オリアクス!」


 魔法陣が光る。

 もう何度も見てきた光景だ。

 そして悪魔が現れた。


 それは異形の姿をしていた。

 頭は獅子、胴体から下は蛇の姿をしていた。


「ふむ、どうやら召喚されたようだな」


 オリアクスはそう呟く。


「あの、オリアクスさん。一つ頼みがあるんですか……」

「もしかして、あなたが現『ゲーティア』の所有者、ノーマン殿であるか?」

「ええ、そうですけど」


 ふと、オリアクスさんが尋ねてきたので正直に肯定する。

 以前召喚したベリトも僕のことを知っていたようだし、僕の存在は魔界にいる悪魔たちにすっかり知れ渡っているようだ。


「そうか。であれば、吾輩の願いを一つ叶えていただけないだろうか」


 そう言って、オリアクスは僕の前で片膝を地面へくっつける膝立ちを行なった。


「願いですか……?」

「はい、どうしてもこの現世にて叶えたい願いがあるのです」


 オリアクスはうやうやしい態度でそう口にする。


「その願いを叶えるのに協力するのは構いません。だだし、その願いが無事成就されたあかつきには、僕に占星術を教えてくれるならという条件付きではありますけど」

「願いが叶うというならば、吾輩の占星術に関するという知識をノーマン殿に惜しみなく伝授しましょう」


 と、オリアクスは約束をしてくれた。

 占星術を教えてもらえるなら、願いを叶えるぐらいなんら苦ではない。


「わかりました。それで、願いというのはなんですか?」

「はい、どうしても殺してほしい人間がいるのです」

「……は?」


 この悪魔、今なんて言った?


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