―48― 頂上

「ここにオロバスがいるんだよな」

「うん、そのはずなの!」


 数時間の飛行のあと頂上付近に着いた。

 頂上には大きな火口があり、この火口の中に火口岩龍デルクレータードラゴンがいるのだろう。

 頂上から見る限りは火口岩龍デルクレータードラゴンの姿は見えないが、今はそれよりオロバスを見つけることのほうが先決だ。


「ねぇ、クローセルちゃん。お願いがあるの」

「ん? なんですか?」


 ヴァラクがクローセルに話しかけていた。


「帰り道のためにクローセルちゃんには他に人がいないか、空飛んで確認してきてほしいの。ヴァラクちゃんたちはこの後オロバスさんを迎えにいくから、その間にね」

「えー、わたしもノーマン様と一緒にいたいです」

「クローセルちゃん、お願い。ノーマン様もその方がいいでしょ」

「まぁ、確かにそうかも」


 オロバスを見つけている間に、クローセルに人がいないか確認してもらったほうが効率がいいいのは確かだった。


「ノーマン様がそう言うなら、そうしてきます」


 渋々ではあったが、了承したクローセルは空を飛んで偵察をしにいった。


「ふぅ、やっと二人きりになれた」


 ぼそり、とヴァラクが呟く。

 ん? なんか雰囲気が変わったような。


「それで、オロバスはどこにいるんだ?」


 見渡す限り、オロバスの姿は見当たらない。

 けど、ヴァラクにはオロバスの位置がわかっているんだろう。


「オロバスはここにいないよ」

「は?」

「だってここに来たのは、君をこうするためなんだから」


 とん、と手で押された。


 僕は後ろによろけ、足を滑らせる。


 あっ、と思ったときにはすでに僕は火口へと落ちていった。

 そう、火口の先には火口岩龍デルクレータードラゴンがいる。


「ヴァラクちゃんのために、ノーマン様には死んでもらうの」


 ヴァラクは笑顔で僕のことを見下ろしていた。

 その笑顔は、口角をつりあげてた、まさに悪魔らしい笑顔だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る