―40― 学校
「今日は土系統の魔術に関する講義を行う」
壇上にルドン先生が立って講義を始めていた。
ルドン先生はいつも通り、今日も不機嫌そうだ。
「土は他の3つの系統に比べ、複雑で扱いが難しい」
それから生徒たちはそれぞれ魔道書を見ながら、土の魔術を練習を始めていった。
「ノーマン調子はどうだ?」
ふと、ルドン先生が話しかけてくる。
「まだ、土の魔術はできそうにないです」
「そうか」
「けど、風の魔術なら覚えました」
この前、風の魔術ができなかったことを思い出し、そんなことを言ってみる。
「ほう」
ルドン先生はうなずき、
「見せてみろ」
と言った。
僕はうなずくと、左手を出し詠唱をした。
「
途端、宙に魔法陣が現れ風が巻き起こる。
「ほう、宙に魔法陣を描くことを覚えたか。まだ教えてなかったはずだがな」
「独学で覚えました」
無闇に魔術を見せることで悪魔召喚のことまで見抜かれるんじゃないかと、少しだけドギマギする。
「ふむ、この調子なら学院にはなんとか入学できそうだな」
「うーん、入学できればいいんですけどね……」
「なにか、他に問題でもあるのか?」
「いえ、こっちの問題ですので」
僕は実家を追い出されてしまったから、学院に通うのは難しいかもしれない。
一応、最低限の魔術は覚えてたとはいえ、火と水、風の魔術が使えるだけではとても優秀な魔術師とはいえない。
最低限、固有魔術の一つでも覚えることができたら、胸を張れるんだろうけど。
恐らく、今の僕を見ても、父さんの考えが変わるとは思えない。
もっと精進しないとな。
◆
その日、ある話が学院中で話題になった。
どうやら転校生がこの学校にやってきたらしい。
しかも、元平民で最近、貴族の養子になったという変わった経歴の持ち主なんだとか。
そこまで聞いて、転校生の正体がディミトだってことはピンときた。
ディミトは優秀ということで、最初から一番上の発展コースのクラスへと編入ということになったらしい。
さらに深く話を聞くと、元平民ということである生徒に喧嘩をふっかけられたらしく、ディミトも売られた喧嘩は買うタイプなので、そのまま決闘へと発展したらしい。
ちなみに、その対戦相手というのが、以前僕と戦ったリーガルとのことだった。
以前、僕に負けたのが尾を引いていたらしく本人はここずっとイライラしていたんだとか。それで、ディミトに喧嘩を売ったらしい。
そんな具合で、ディミトとリーガルは決闘をすることになったというわけだ。
リーガルはこの学校において一位二位を争う優秀な生徒だ。以前、僕がリーガルに勝てたのはクローセルが介入したおかげなだけで、僕なんかよりもずっと強い。
なので、僕はリーガルが勝つだろうと予想した。
結果はディミトの圧勝だったらしい。
僕はその決闘を直接この目で見ていないので、どのような戦いを二人がしたのかはわからない。
だが、ディミトが勝ったため、彼はますます調子に乗っているらしい。
一方、負けたリーガルの株は急落とのことだ。
二回も連続で負けたら、評価が落ちるのは仕方がないことだった。
まぁ、学校内での勢力が大きく変わったと誰かが口にしていたが、一番下の基礎コースで落ちぶれている僕にとってはあまり関係ない話だろう。
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