―28― 決戦前
「ねぇ、今日ホントに学校行くの?」
朝、最近優しくなった妹がわざわざ僕の家に訪ねてはそう聞いてきた。
「うん、行くよ」
「私、お兄ちゃんが無理に決闘する必要ないと思うわ。その彼女さんだって、心配するよ」
だからクローセルは彼女ではないんだが……。
「ネネ、ここだけの話、僕魔術使えるようになったんだ」
内緒話のようにコソッと僕はネネにそう言った。
「う、そ……」
ネネは驚いた様子で僕を見た。
「まぁ、だからお前が不安に思うようなことはないからな」
妹を不安にさせたら兄失格だからな。
だから、あらかじめ妹には伝えておくことにした。
◆
「これから学校に行くわけだか、その前に2人に伝えておくことがある」
オロバスとクローセルを前にして俺は喋っていた。
「伝えておきたいことですか?」
「わたくしマスターの言葉でしたら、どのような言葉でもしかと受け止めます」
二人とも各々の反応を示す。
「それじゃあはっきり言うけど、僕は学校であまり評判が良くないんだ。というのも魔術が使えなかったから。だから僕は今日、色んな生徒にからかわれると思うけど、二人とも大人しくしていてね」
要するに、生徒たちに手を出すなってことを言いたい。
「マスター、お言葉ですが、わたしくマスターを馬鹿にするやからがいたら、許せなくて殺すと思います!」
「うん、だから、そういうことをするなよってことだからね。あと、これは命令だから」
「ははっー、わたくしマスターのご命令とあらば、命をかけて実行する所存でございます」
オロバスはそう言ってひざまずく。
この調子なら、事前に言っとおいてよかったのかも。
あらかじめ伝えておけば。オロバスはちゃんと守ってくれるだろう。
「わ、わたしもがんばります!」
まぁ、クローセルは大丈夫だと思うので心配する必要はないか。
◆
「おい、ノーマンのやつ学校に来ているぜ」
「俺、てっきりあいつ今日、学校来ないと思ってたよ」
「昨日学校サボってたしな。てっきり今日もサボりかと」
「わざわざ学校に来てどうするつもりかねー」
「リーガルにボコられにきたんじゃね」
僕が歩くたびに、生徒たちが噂話を始める。
オロバスはそれが気に入らないようで、僕の噂話をする生徒皆に拳を震わせながらガンを飛ばしていた。
まぁ、オロバスのことは生徒たちからは見えないので、あまり意味のないのない行為だが、言いつけはちゃんと守るつもりらしい。
「なんだか、皆さんノーマン様のお話していますね」
「まぁね」
クローセルの会話に短く返事する。
あまり堂々とクローセルと会話をすると、一人でブツブツ喋る変人になってしまうからだ。
「逃げずに来たみたいだな」
ふと、見ると目の前にリーガルがいた。
「うん、来たよ」
「今なら、謝れば許してやるけどよぉ。ホントは魔術が使えません、ごめなさいってな」
リーガルは笑いながらそう言う。
「なんなのですか、この人。感じ悪いですね!」
クローセルは怒った調子でそう言う。
オロバスはなにも言わずリーガルをじっと見ていた。多分、本人は睨んでいるつもりなんだろう。見ていて笑いそうになるので、できればやめてほしい。
「言っただろ。この一週間で魔術が使えるようになるって。そんなに疑うなら、今ここで見せようか?」
「はっ、おもしれぇ。楽しみは決闘のときまでとっといてやるよ」
「それじゃあ、また放課後な」とリーガルは言って去っていった。
「ノーマン様! あんなやつ、コテンパンしてやっちゃいましょう!」
クローセルはそう言うが、実際リーガルに勝つのは難しいだろう。
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