―20― 降霊術
「降霊術なんて私もそう得意じゃないんだけど……」
そう言って、妹のネネは一本の剣を持ってきた。
両手剣のロングソード。
ずっしりと重たいことが見ただけでわかる。
ネネが家に戻ったのはこの剣を持ってくるためらしい。
「この剣はうちの先祖が使っていたものよ」
「こんなのがうちにあったんだ」
確かによく見ると使い古されているのがわかる。
とはいえ手入れはちゃんとされているようで刃の切れ味は鋭いままだ。
「降霊術は霊を呼び出す魔術。けど、特定の霊を呼び出すには遺物があったほうが効果的なの」
「そうなんだ」
「今回の場合はこの両手剣が遺物ね」
悪魔を降霊させる場合なら、どんな遺物が必要なんだろう?
ちなみに、クローセルとオロバスも近くでネネの話を聞いている。
2人ともうんうん、と頷いているが、ホントに話をわかっているのだろうか。
もちろん二人とも霊の状態なため、ネネには見えていない。
「この剣は私達の先祖、ダルガンナ・エスランドという人が所有していたものよ。この剣を使って戦場で武勲をあげたらしいわ」
僕らの先祖にそんな人がいたのか。
エスランド家は歴史が古いと父さんが前言っていたのをふと思い出す。
「今回、降ろすのはこのダルガンナ・エスランドの霊よ。降霊術って、術者と霊体の相性とかも大事なんだけど、血が繋がっているしその辺は心配ないと思うわ」
言いながら、ネネは魔導書のページをパラパラとめくる。
降霊術に関した魔導書なのだろう。
「降霊術は加減が難しいのよね。霊のすべてを取り込むと肉体を乗っ取られる可能性がでてくるし、かといって少しだけ取り込んでも効果は薄いし」
言いながら、ネネは魔導書を頼りに紙に魔法陣を書いていく。
慣れているのか、非常に手際がいい。
それからネネは両手剣を魔法陣の上に乗せ、目を閉じた。
「――我は汝をネネの名のもとに厳重に命ずる。汝は速やかに、我の肉体に宿れ。汝の知識と力で我を満たせ。汝は己が権能の範囲内で誠実に、全ての我が願いを叶えよ。来たれ――ダルガンナ・エスランド」
詠唱を終えるとネネは目を開き、
「成功したわ」
と言った。
一見、なにがどう成功したのかわからない。
だが、ネネの瞳に闘志のようなものが宿ったような気はする。
「なにが変わったんだ?」
「そうね、力が湧いてくるのと、習ってもいない剣術が頭の中に叩き込まれているわ」
ネネはそう言うと、両手でさえ持つのが厳しい剣を片手で軽々しく持ち上げる。
さらには剣を振るう。
それもただ振るうのではなく、剣術における型を意識して振るっているのだろう。
足の動き、視線の移動からして一流の剣術使いのそれであることが、素人目にもわかった。
「まっ、こんな感じよ」
「おおーっ」
思わず拍手を送ってしまう。
横ではクローセルとオロバスも拍手をしていた。
「どう、お兄ちゃん。できそうかしら?」
「ひとまず、がんばってみるよ」
僕はそう答えた。
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