―18― 特訓の前に

 そんなこんなで水の魔術を教えてもらうべく、クローセルとオロバスの三人で近くにある原っぱに来ていた。

 今後も魔術を覚えるときは決まってこの原っぱでやることになりそうだ。


「それじゃあ早速ですが、水の魔術を見せます」


 そうクローセルが言うと、両手十本の指先から水をドバドバと出し続け、その水は宙を舞い、そして頭上に巨大な水の塊となった。


「おおっー」


 思わず歓声をあげる。

 無詠唱なうえ、魔法陣なしでこれだけの水を操れるのか。


「わたしは水の女神を食らったおかげで水の女神と同じ能力を手に入れることができました」


 水の女神を食べた、とさっきも聞いたがそれって口からむしゃむしゃと食べたのだろうか。

 そんな絵面を想像して、少し笑っちゃいそうになる。


「ノーマン様は自然魔術が体質的に無理なんですよね。どうやって教えたらいいのでしょう?」


 さっき道中でクローセルには僕が体質的に一般的な方法で自然魔術を扱えないと説明を済ませていた。

 自然魔術というのは大気に無数にいる微細の精霊を操って発動させる魔術のことだ。

 火、風、水、土が4大精霊と呼ばれよく知られている。


「それなら……」


 僕は左手のシジルをクローセルに見せた。

 そして降霊術を用いて火の魔術を覚えることができたと説明した。


「そんな方法があるんですね」


 クローセルは関心したように手を合わせる。


「でも、どうしましょう……。わたし、アイムさんみたいにそんな器用な真似できる気がしません」


 むむむ……、これはもしかしたら僕が降霊術を覚えるところから始める必要がありそうだ。


 しかし、僕は授業で降霊術を習ったことがなかった。

 基礎コースでは取り扱わない範囲だからだ。

 一応、たくさんの魔導書を読んできたので知識としては知っているけど……だからといって、できるとは思えない。

 魔導書『ゲーティア』にも降霊術の方法までは書かれていなかったし。

 となれば、どうしようか……。


 一旦、保留にしようってことで、僕ら三人は家に戻ることにした。


「お兄ちゃん、やっと帰ってきた!!」


 なぜか屋敷に住んでいるはずの妹が家の前にいた。

 なぜ、僕の家に妹がやってきたんだろう?

 と、疑問に思いつつ、あることを思いつく。

 妹から降霊術を学ぶのもいいかもしれない。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る