―14― 水の魔術
「それじゃあ、今日は水の魔術の勉強を行う」
今日も今日とてルドン先生の講義が始まった。
「水の魔術を覚えれば、魔術の幅が一気に広がる。ゆえに、皆、心して取り掛かるように」
「せんせーい、どんな魔術も覚えてない人には関係ないんじゃないですかー」
また僕より年下の生徒が囃し立てる。
すると、教室中ドッと笑いが起きた。
僕を笑いものにしているのは明らか。
まぁいい、決闘の日にあっと驚かしてやるんだから今は我慢だ。
とはいえ、水の魔術か。
僕が覚えているのは、発火魔術を始めとした火の魔術のみである。
左手にはアイムのシジルが刻まれている。
もう1体悪魔を召喚して、右手にもシジルを刻むのも悪くないかもしれないな。
となれば水を使える悪魔を召喚する必要があるか。
◆
「お久しぶりです、フルカスさん」
僕は帰宅して早速、序列第50位フルカスさんを召喚することにした。
フルカスさんを召喚したのは水の魔術を覚えるのにどの悪魔が適切かを聞きたいがため。
一応オロバスにも同じ質問をしてみたが、オロバスはあまり他の悪魔に詳しくないらしく、「力になれなくて申し訳ございません!!」とオロバスは泣いて謝っていた。
そんなわけでフルカスさんを召喚することにした。
やはりアドバイスをもらうならフルカスさんが最適だ。
「お、お主は、ノーマン……すぴー」
召喚されたフルカスさんは寝息を立てていた。
今の時刻は夜の7時。
フルカスさんが眠る夜8時にはまだなっていないのだが、もうすでに眠たいらしい。
フルカスさんにも悪いし、退去させてあげるべきかな。
「あの、フルカスさんに水の魔術を覚えるのに、最適な悪魔を紹介してほしかったんですけど」
「そういうことなら、く、クローセル……すぴー」
一応、朧気だが意識はあるようでなんとか答えてくれた。
クローセルっていう悪魔か。
よし、早くフルカスさんを退去させてあげなきゃ。
というわけで退去の呪文を唱える。
次からはもっと早い時間に召喚するよう心がけよう。
「それじぁ、クローセルを召喚しよう」
魔導書は序列順に並んでいるがクローセルの序列まで教えてくれなかったので、1ページごとにめくって調べる必要があった。
「あった。序列第49位クローセルか」
フルカスさんが第50位なので、その1つ上だ。
「それじゃあオロバス。また、アイムのときみたいに暴走したら止めてね」
「了解であります、わたくしマスターを命をかけてお守りいたします!」
そもそも拘束の呪文を時間をかけずに唱えられたら、オロバスに頼る必要はないんだが。
短い詠唱でもできるように練習しなくちゃな。
よし、試しに召喚の呪文をほんの少し省略しても大丈夫か試してみよう。
「――我は汝をノーマンの名において厳重に命ずる。汝は疾風の如く現れ、魔法陣の中に姿を見せよ。世界のいずこからでもここに来て、我が尋ねる事全てに理性的な答えで返せ。そして平和的に見える姿で遅れることなく現れ、我が願いを現実のものとせよ。来たれ――第49位、クローセル!」
魔法陣が光だす。
よかった。通常通り成功したみたいだぞ。
「汝、隣人を愛しなさい。そして、主を崇めるのです」
そう口にしながら、一人の悪魔が姿を現した。
「えっ?」
驚愕する。
もしかしたら今まで召喚してきた悪魔の中で一番、その姿を見て驚いたかもしれない。
なぜなら、目の前にいたのは、どこからどう見ても『天使』の姿をしていたからだ。
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