―13― 特訓

 それから一日中、発火魔術の練習をしていた。

 火のコントロールは想像以上に難しく、中々思うようにいかない。


 けど、楽しい。

 みんなこうやって魔術の勉強をしていたんだ。

 今までわからなかったことがわかって本当に楽しかった。


 ただ、アイムに教わりながら、発火魔術を行使していたがいくつか課題が残った。

 それは左手を起点にしか発火が行えないということだった。

 アイムが言うには、左手にシジルがあるせいだ、とのこと。

 普通、一般的な魔術師なら体のどこを起点にしても魔術を行える。けれど、僕の場合、左手にシジルがあるせいで、その影響を強く受けてしまい、左手からしか発火魔術ができないらしい。

 ただし、訓練次第で克服できるだろう、とも言っていた。


 魔術が使えなかった頃と違い、自分なりに対策や問題点を見つけられる。できるようになれば、こんなにも魔術の勉強は楽しいんだな。


「それじぁ、人間。お別れだな」


 夜。アイムはお別れの挨拶をした。

 オロバスのように退去を嫌がる可能性を考慮したが、アイムが曰く、退去を嫌がる悪魔はオロバスぐらいだとか。


「アイムが退去してもシジルは消えないよね」

「ああ、問題なく使える。ただ、今後のためにも降霊術は覚えたほうがいいだろうな」

「そっか、アイム本当にありがとう」


 僕は深くお礼する。

 今日は僕の今までの人生がやっと報われた、そんな日だ。

 だから心から感謝した。

 それから僕は退去の呪文を唱えた。


「次召喚するときは燃やしがいのある建物を用意するんだな」

「ぜ、善処するよ……」


 去りぎわの言葉に僕はそう返事をした。


「そうだ、オロバスにもちゃんとお礼を言わないとな」


 オロバスはアイムが暴走しようとしたとき、身をていして止めてくれたのだ。

 まだ、お礼を言っていなかったのを思い出す。


「オロバス、本当にありがとう」

「ま、マスターがわたくしにお礼ですと!! な、なんたる身に余る光栄。わたくし、マスターがマスターで本当によかったです!」

「あはは……」


 いつもの調子のオロバスに僕は思わず苦笑いをした。


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