―08― 学校生活
「おい、ノーマンのやつ。まだ懲りずに学校に来ているよ」
「知っているか? あいつルドン先生に退学勧告だされたらしいぜ」
「へぇ、まじかよ。なのにまだ学校に来ているのか」
僕が通るたびにすれ違った生徒たちが噂を始める。
以前なら、そのたびに僕は気が沈む思いをしたが、今は平気だ。
僕には悪魔という味方がついている。
まぁ、悪魔召喚は禁術ゆえに人に言うわけにはいかないが。
「よう、ノーマン。お前、未だに基礎的な魔術も使えないんだってな」
「リーガル」
ふと見ると、リーガルがあざ笑いながら話しかけきた。
リーガル。
僕の古くからの知り合いだ。
昔からいじめっ子の気質があり、魔術が使えない僕のことをよく馬鹿にしてきた。
ちなみにリーガルは僕と同い年だが優秀で、すでに実践コースに在籍しているのはもちろん、この学校でもトップクラスに優れているらしい。
「まぁね」
僕は聞き流すような感じで返事をする。
「なんだその生意気な態度は」
だが、俺のとった態度が気に入らなかったのか、僕の襟首を掴んでは引き寄せる。
「別に、そんなつもりはなかったけど……」
事を荒立てたくないので、そう言って穏便に済まそうとする。すると、リーガルは「まぁ、いい」と言って手を僕から離した。
「あぁ、そうだ。俺、この調子だと、プラム魔術学院に合格できそうなんだよ」
プラム魔術学院。国内でもトップクラスの学院。
もし合格できたら、すごい自慢になる。
「それはすごいね」
「お前はこのまま魔術が使えないと貴族でなくなるものな」
この国では貴族とは魔術が使える者のことだ。
もし、このまま魔術を使えないままでいたら僕は平民に格下げとなる。
それに僕には男の兄弟はいない。
ゆえに、僕が平民になる、それはつまりエスランド家が途絶えると同義だ。
だから、父親は養子をとることでエスランド家が存続することを選んだ。
「けど、その問題もあと少しで解決できそうなんだ」
「はぁ? 解決するって、魔術が使えるようになるってことか?」
「うん、僕が魔術を使えない原因が最近やっとわかってね」
「おいおい、なんだそりゃ? ぜひ、その原因とやらをお聞かせ願いたいねぇ」
あ、やばい。
つい調子に乗って喋りすぎてしまった。
悪魔召喚のことを話すわけにはいかないしな。
「えっと、それはどうしても言えないんだ」
「はっはっはっ、デマカセを言うにも程があるだろ」
リーガルはよほど面白かったのか、腹を抱えて笑い出す。
「別にデマカセってわけじゃないんだけど……」
まぁ、無理に信じてもらう必要もないし、このままでいいか。
「それで、いつ魔術が使えるようになるんだよ?」
「おそらく一週間後とかかな」
一週間後に使えるようになる根拠はないけど、そう言ってみる。
第23位アイムの力を借りられるようになったら見せられるようになるのは間違いないだろうし、恐らく大丈夫だとは思うけど。
「言ったな」
リーガルはニヤリと笑った。
「じゃあ、一週間後にこの俺と決闘をしろ。もちろん魔術を使ってな」
この学校では、よく生徒同士で魔術を用いた決闘が行われているのはもちろん知っている。
当然、魔術が使えない僕は参加したことがない。
流石に急に決闘をするのはなぁ。
「おい、みんなよく聞け! このノーマンはどうやら一週間後に突然魔術を使えるようになるらしいぞ!」
不意にリーガルは他の生徒たちに聞こえるように大声を出した。
「だから一週間後に、本当に魔術が使えるようになったのか、この俺が決闘で確かめてやることにした!」
そうリガールはいうと、周りにいた生徒たちはざわざわし始める。
「おいおい、基礎魔術も使えないノーマンが一週間後に使えるようになるだって?」
「そんな馬鹿げた話があるか」
「リーガルにボコられて終わりだろうな」
「これじゃあ賭けも成立しねぇ」
「リーガルの虐殺ショーが見れるのか。おもしろそーじゃん」
「おいおい、どうせノーマンは逃げ出すに決まってらぁ」
生徒たちの会話はこんな感じだ。
誰も、僕が魔術を使えるようになると信じている者はない。
まぁ、当然の反応だよな。
「当日楽しみに待っているぜぇ」
ギロリとした目つきでリーガルは睨みつけてくる。
僕は一言も決闘に参加するとは言っていないのに。
「わかったよ……」
もう断れる雰囲気じゃなくなってしまった。
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