第24話 最高にいかレた解決方法
「出て来たで三人とも!」
急に空が見え、さくらの声が耳に届いた事で紅葉の力で家から放り出されたのを理解し、爺さんと婆さんも俺と一緒に外に出てきているのを確認する。
「のこー! 今だいけぇえええ!」
「おー! おりゃー!!」
待ちかねたとばかりに、のこは巨大な鉄剣を天高く放り投げる。そして自らもジャンプすると、まるで蹴り飛ばすように剣を地面へと叩きつけた。巨大な鉄剣が地面にぶっ刺さると、ドン、と大きな音を立てて一瞬地面が傾いたかと思うほどに揺れる。すると家の屋根瓦がバラバラと落ち外壁に穴が開き腐った板が割れガラスというガラスが全部砕けていく。
そして……。
「ふえ……?」
骨組みと基礎以外が粗方崩れた中、そこだけ綺麗に瓦礫を避けるように残った仏間があった。埃一つすらかかっていないようなその部屋で、紅葉があっけに取られている。
突入時にガラスで切った所が今更ながらに痛み出し、顔をしかめる中、のこがやってきて俺の体を軽々と抱きおこした。
[/image]
「のこ、お疲れ。注文以上だ! グッジョブ!」
「ふふん、紅葉のこともちゃんとまもっておいたぞ!」
パンと、のことハイタッチをした直後、さくらが駆け寄ってくる。
「あんたほんま救い難い阿呆や、見守っとるうちらの方がはらはらしたわ。全く、うちに心配ばっかかけよってからに!」
ポコポコと俺の頭が叩かれたが、力は殆ど入ってない。多分照れ隠しだろう。指摘したら絶対に本気で殴られるから言わないけど。
少し遅れてつばきも、表情を変えず澄まし顔で歩いてくる。
「ああ、つばきもお疲れ様」
「仮に失敗したら墓前に花でも添えてあげようと思っていたのに、残念だわ」
プイッと顔を背けるつばき。
そしてボロボロの紅葉が呆然とした足取りで、ゆっくり俺の方へ歩いてくる。
「これ、一体どういう」
流石に紅葉には説明が必要だろう。
「俺達なりにちゃんと考えてたんだぜ? まずは家財の退避。これは簡単だよな。家壊して家財も全部なくなりましたじゃ生活に困るからな。ただ、さくらの能力を使うには住人が家にいないといけなかった。なんせ人を貧乏にするわけだからな。そして次に家財の退避後に二人を家から追い出す。それをつばきにやってもらったんだ。失敗したけど」
ほっといて、とつばきがむくれる。
「そして最後にのこの力で家を壊したんだが、これが難しくてな。のこの力で都合よく仏間だけ残して壊すには住人が中にいちゃいけないらしい。だから紅葉の力で守れたとしても、家から引き離す必要があったんだ」
のこの力は大きすぎるためコントロールが難しいらしい。
「なんで。仏間を残す必要、が?」
「そうしないとお前この家で座敷わらし続けられないだろ?」
俺のその言葉に紅葉が息を呑む。
「そんな理由!?」
「そんなじゃないさ、俺が目指したのはお前ら三人が一緒にいられることだったからな」
「でも! 仏間一つ残ったくらいで座敷わらしを続けられるわけ!」
そういう紅葉に俺は指をピッと立て答える。
「座敷わらしの制限には、一つ例外があるだろ。かなめさんが金閣のわらしって聞いてから変だとは思っていたんだ。金閣は一度焼失してる。なのにかなめさんがわらしを続けていられる理由がある。わらしは家がなくなれば家から離れなければならないが【天災や人災の場合はその限りではない】だろ?」
住人が自分の意志で壊してなければ、わらしは家を去らなくてもいいわけだ。
「まあ普通は天災なんて狙って引き起こせないし、俺が放火魔になるのも論外だ。だけどな、うちには破壊神様がいる。大地震すら引き起こせるのこの力なら条件を満たせると思ったんだよ」
むん、とポーズを取るのこと俺を見ながら、紅葉は口をあけ唖然としていた。
「ばかじゃないのあんたら! それなら何で事前にあたしに話し通さないのよ!!」
「何言うてるん? うちらが説明したって、こんなふざけた案あんたが賛成なんかする訳ないやん。きっと話すら最後まで聞かんで放り投げたやろ」
さくらの突っこみに紅葉が言葉に詰まる。
協力して貰えるなら、当然説明したけどな。一番大事にしていた仏間こそ守れても、爺さん婆さんの家自体への思い入れに関しては守りきれないし二人に迷惑はかける。
紅葉の賛同が得られないどころか、警戒されて作戦が台無しになる可能性の方が遥かに高かった。
「まあこっから先の後始末は、紅葉の方で何とかしてくれ。「この家の座敷わらし」ならなんとかできるだろ?」
「ふ、ふえ、ふええ、ふえええぇん……しんじらんないわよ、このばかぁ……」
紅葉の泣き声が冬空に響き渡る。
はー全部終わった。と、安心した途端いきなり目の前が暗くなって、鈍い音が耳に届く。あれ? 俺、倒れた?
「ちょぉ!? なんでいきなり倒れるんよ!?」
「……あ。茂と節子にお別れ言うのに、こいつの体を媒介にしたから。多分そのせいかも……」
「ド阿呆! そんな事したら負担かかって当然や! なんちゅう無茶な事してくれとるん!?」
「あんたらに無茶とか言われたくないわよ!」
「おー。きずはあさいぞ、しっかりしろー」
エナジードリンクがぶ飲みした後の徹夜明けみたいに、どんどん瞼が重くなっていく。
さくら達にした約束を守るのが、まさかこんなにしんどいとは思わなかった。ああ、そういえばこれって一応、給料払われる仕事なんだっけ……。
「仕事って。楽じゃねえなぁ」
誰に言うでもなく呟いた直後、俺の意識は綺麗に飛んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます