第6話 ドラゴンゾンビ

ワシは株式会社ドラゴン営業部のドラゴンゾンビだ。


ワシたち営業部はドラゴンの活躍する場を求めてあちこち飛び回っている。

この会社の仕事はドラゴンの出演作品を取り付ける事。

そのために営業部では様々な提案を取引先にし契約を取っていく。


そうここは、

ドラゴンの、ドラゴンによる、ドラゴンのための会社だ。



しかし、ワシは営業部に属してはいるが、コピーやシュレッダーばかり。


客先への訪問なんて今は昔。


女子社員からは体臭がキツイと言われているのも知っとる。

しかもだ、ゴミを出しに行ったときに間違われて業者に持っていかれそうになったことも数知れず。



老害扱いされているのかな?



ま、それでも首を切らずにこんな老いぼれを置いてくれてるだけましかの。


窓際族は窓際族らしくせっせと働くとしよう。




「ゾンビさん、この資料のコピー20部お願いします!」


「ゾンビさん、これシュレッダーかけといてください!」


「はいよー。任せとけい」



ワシが裏方をやるから若い者たちは外回りに行ける。

縁の下の力持ちってとこじゃな。




トイレに立った時給湯室の会話が聞こえてしまった。

「ゾンビさん、今日もシュレッダーばかりよ…」

「ねー、腐ってもドラゴンなのによくできるよねー」

「ゾンビさんは本当に腐ってるわよ」

「あははは!」

「声が大きいわよ、聞こえたらどうするのよ!」



ワシ腐ってるのか。まあゾンビだもんな。ふぅ。






ワシは与えられた仕事を黙々とこなす。

そんな毎日だったが、



「社長を出せ!」


クレーマーかの?


「騒ぐな!とっとと社長を連れてこいっ!」


ただのクレーマーとは違うみたいだ。

しっかりと武装してるし。


この時間は若い衆は外回りに出ている。


会社に残っているのは非戦闘種族のドラゴンばかり…。

ま、この時間を狙ってきたんだろう。みみっちい奴らじゃ。


ドラゴンを使ったのに、成果が上げられなく結果会社が傾いた連中ってところかの。



「早くしろ!!」


武装集団は威嚇射撃を行っている。


他のドラゴンたちは委縮してしまっている。


しょうがない。



「要件はなんだい?」

ワシが出るしかなかろう。こんな輩のために社長を呼ぶまでもない。



「いいから社長を連れてこい!」



話の通じない連中だ…。


「要件もわからないのに連れてこれるわけ…うぐ…」


ワシは撃たれた。いわゆる蜂の巣だ。



「こんな風に死にたくなければとっとと連れてこいっ」



あほか。

「ワシは既に死んでいる身。そんなので倒せると思った…うぐぅ…」


また蜂の巣にされた。


しかし、何度でも蘇る。

こやつらにとってみれば一種のホラーだろう。




「ひぃぃぃ、近寄るな、撃つぞ、撃つぞぉ」



何度も撃ってるじゃないか…。


何を言ってるんだ?



そんな矛盾だらけだから作品が売れなかったんだろう。

ま、勝手な妄想だけれど。



そんなことを繰り返していると警察がやってきた。


あっけなくお縄だ。




それから社内での評価が変わった。


「ゾンビさんっていつも黙々と仕事こなしていて渋いわよねぇ」


「そうそう、しかもいざっていう時はすごく頼りになるし」


「伊達に死んでまでドラゴンやってないって感じで素敵」


「あとは、においさえどうにかなればねぇ…」


やっている仕事はもろ窓際族だけれども。

何も変わっていないが相手からの印象っていうのはこうも簡単に変わってしまう。




さ、今日は香水でも買って帰ろう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

株式会社ドラゴン営業部 〜ドラゴンの、ドラゴンによる、ドラゴンのための会社〜 柊れい @hiiragi_rei7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ